第4章 37話 エゾモモンガ

 わたし、なにやっているんだろ……。


 図書館でぼんやり本を眺めながら、風花は鬱々としていた。


 見ているのは、エゾモモンガの写真集だ。大きな黒目のモモンガが、木の実を食べている。越冬前で丸々と太っていた。


 いつもなら、きゅんきゅんなれる写真だ。 だが、今日は違った。


  結局、飛雨に置いていかれて、心がどんより重い。


 追いつけるわけなんか、ないよね。

 ため息が出る。


 私なんか、なにもできないただの人間だ。飛雨くん、風みたいに速いし。


  住宅街を走っているときはまだよかった。 飛雨は、人間並みの速度で走っていた。


 だが、人気のない農地に差しかかったところで、脱兎の如く走り去ってしまった。


 今日、三度目の置いてけぼりだ。


 夏澄たちと、自分の違いを思い知らされた。


 心底、脱力してしばらく立ちつくした。


  家に帰える気にもなれず、近くの図書館で無意味に時間を過ごしていた。

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