第5章 28話 優月が霊泉に来た理由

 優月の心に、蘇芳色の不安がよぎった。


 今日の春ヶ原はどうだろう。


 植物たちは、あの現象に傷つけられはしないだろうか。


 立貴の霊力で治せるとは思うが、やはり不安だ。

 いつまでも、彼の力で納められるとは限らない。


 優月は、霊泉に視線を移した。


 この霊泉は、精霊が宿っているわけではないのに、意志を持って、夏澄たちを護っている。


 どうしたら、そんなことが起こるのだろう。


 優月がここに来たのは、春ヶ原を護る霊力を、増やす方法を探すためだ。


 春ヶ原の霊泉も意志を持てば、春ヶ原を護るのに協力してくれるかもしれない。


 理由が分からないまま、荒れる春ヶ原。


 今はまだ修復できるが、これから先も護れるとは限らない。 立貴に頼りっぱなしでなく、自分の力でも護りたい。


 そう思って、優月はここに来た。


 霊泉の件は無理でも、見聞が広い水の精霊を頼れば、知恵を借りられるかもしれない。


 優月は、なにか答えが出るまで、帰らないくらいのつもりでいた。

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