第290話 1年次夏期集中訓練 4日目(11)
私が美智子さんを見つめると、慌てた様子で
「当然、身体強化は使ってだよ。
素で持つのは無理だからね」
と補足する。
今の私だと上手く鑑定出来ないが、身体強化の
「じゃあ、次は私ね」
と郁代さんが言った。
郁代さんを見ると
「私の第1適正が槍で、第2適正が斧でした。
そして推奨された武器は、
それで選んだのは、
と楽しそうに言った。
「扱いの難しい武器だけど、大丈夫?」
と聞くが
「やっぱり、巨大武器は
と返された。
自分の世界に浸っているな。
なんとなく、大丈夫な気がしてきた。
「次は私ね。
私は、第1適正が剣で、第2適正が盾でした。
推奨された武器は、バスタードソードとヒーター・シールドかツヴァイヘンダーと言う幅広の波打った刀身の巨大な両手剣を推奨された」
と都さんが言うと
「どっちの装備もめっちゃカッコイイ良くて、まだ決めきれていないんよね」
と千明さんが言う。
「カッコイイから決めれない訳じゃ無いよ。
どちらの武器もシックリしすぎて、決められないんだもん。
むしろ、あっさりと決められた3人の方がおかしくない?」
と都さんが言うと
「選択肢がなかった」
「カッコイイから」
「選択の余地がなかった」
と3人は返す。
「取り敢えず、都さんはまだ武器を決めていないと」
と言うと
「うん。
今は両方の武器の使い方を習って、相性が良い方を探っている」
と答えた。
「じゃあ、最後は私だね」
と千明さんが声を上げたので、千明さんを見る。
「私は、杖と鈍器だった。
で、武器が金属製の六角棍かトゲトゲしたバットみたいな鈍器の2種類で、六角棍にしたよ」
と言った。
「トゲトゲした鈍器?」
「
お
と郁代さんが説明されて理解できた。
「あれは無い。
都みたいにカッコイイ武器が良かった」
と落胆した様子で言った。
「しかも、3回も計測をやり直してだもんね」
と郁代さんが言うと、千明さんは
「最初の2回は、もっと酷かった」
と落ち込み気味に言った。
「確か1回目が、鞭と鎖鎌。
2回目が、刃の厚さが物凄く薄くてフニャフニャした剣と盾に棒が着いた盾だった」
と都さんと言うと、続けて
「剣がウルミで、盾がデュエリング・シールド」
と郁代さんが言った。
微苦笑を浮かべながら
「随分と変な武器が推奨されましたね」
と言うと、千明さんは
「ほんと、なんで私だけ変な武器ばかり出てくるのよ」
とご立腹のご様子。
「そう言えば、6種以外は出てこないはずだったのでは?」
「うん。
設定で選択されない様になっていみたいだよ。
研究者の人達も
『設定がOFFなのに何で表示されるんだ?
事前検証では、一般的な武器を推奨していたのに』
と言って頭を抱えていたよ」
と美智子さんが教えてくれた。
これは後で三上さんに怒られる案件かな?
「それで、千明さんの武器の具合はどうですか?」
と聞くと
「私の身長より長いけど、問題なく振り回せるよ。
使い勝手が良いかは、まだ分からない」
と返された。
「まあ、合わないと思ったら、試用期間が終わったら変えたら良いですよ」
「うん。そうする」
「明日から本格的に教わるから、ちょっと楽しみ」
と郁代さんが言う。
「けがをしないように気をつけてくださいね」
と言うと
「もちろん」
と元気な返事が返ってきた。
あとは他愛ない会話をしながら食事を進めた。
食事を終え、椅子から立ち上がると真っ黒な場所に立っていた。
真っ暗なのに見渡せるという不思議空間だ。
足元は、硬く平らな床の様だ。
自分の手もよく見える。
周りを見渡しても、誰もいない。
ただ、駄々広い空間があるだけだ。
上を見ると、かすかに天井みたいな物が見える。
耳を澄ましても、何の音も聞こえない。
何故この様な状況になったか不明だが、何らかの方法で隔離され、
ならばやることは1つ。
その場で目を瞑り、自分自身を感じる事に集中する。
しばらく集中する事で自身の魔力を感知する事が出来た。
使用可能な魔力量は、総量の1/10位か。
魔力回復の
魔力が検知出来たので、広域探知の
探知可能範囲内には何もなかった。
精度を落として範囲を広げても同じだ。
更に精度を落として範囲を広げると、自分自身の魔力と接触した。
この空間は、歪曲されていると考えられる。
何らかの結界の中という事か。
まずは、空間を丹念に検知する。
十分な時間を掛けて探知した結果、僅かな綻びを発見した。
恐らく、この綻びが結界の起点であり終点なんだろう。
その綻びは、空間内を移動している。
見失わない様に注意深く探知しながら綻びの元に急いで移動する。
綻びに近づくと、綻びが逃げる様に高速移動を開始した。
逃げる綻びを見失わない様に、探知を強化しながら追いかける。
しかし、綻びの移動速度が速く、直ぐに引き離された。
十分に距離が開くと、綻びの移動速度も低速に戻った。
何度も接近を試みたが、徒労に終わる。
しかし、綻びが検知する距離を把握出来たので、検知外ギリギリから遠距離攻撃を試みたが、魔力を高めると直ぐに逃げだした。
綻びの探知範囲は、魔力量で変わる様だ。
何度も接近を試みながら、魔力量と検知距離を把握する。
次の動作に必要な最低限の魔力量を貯めた状態で、検知距離ギリギリまで接近する。
綻びの動きを予測しながら、綻びのある空間自体に魔力・物理結界を張る。
綻びは、結界に干渉して破壊しようとしている。
だが、2秒もあれば十分接近できる。
手の届く範囲にまで近づいた時点で、私の張った結界は綻び、いつ決壊してもおかしくない状況になっている。
右の拳に十分な魔力を乗せて、結界ごと綻びを撃ち抜く。
綻びの中に右手が入り込んだ状態で動きを止めた。
私の目からは、右手首から先が消えた様に見える。
私の手首辺りの空間から放射状に亀裂が走る。
亀裂は更に広がり、粉々に砕けながら宙を舞い、輝きながら消えていく。
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