第29話 一家団欒
自室で、試験範囲を復習をしていると、玄関扉を弄る音が聞こえた。
勉強を中断して、自室の扉を開けて玄関の方を見ると、丁度扉を開けて入ってくる父さんが見えた。
「おかえりなさい。」
「ただいま」そう言って、荷物を持って玄関に入ってきた。
続いて入ってきた舞は、「やったー。 お姉ちゃんのままだー」
そう言うと、靴を脱いでいる父さんを追い越して抱きついてきた。
「ちょ、やめ、やめ、舞、やめて、痛い。」
今の私と舞では、舞の方が頭一つ分高い。
それに舞は学校では陸上部に所属しているスポーツ少女なのだ。
だた、本人の能力が「身体強化:脚・持久」のため一般の大会には参加出来ない。それでも走るが好きだから所属しているそうだ。
そんな妹の(筋肉質な)胸に頭を力いっぱい抱き込まれた。
舞「えへへ、かわいい。かわいい。」
なんか一人で悦に入っている。
頼むから、その状態で体を左右に揺さぶらないで。
母「舞、その辺にしない。優ちゃんが痛がっているわよ。」
母さんが、玄関扉を閉めながら、舞を諌めた。
舞「はーい。」そう言って開放した。
私を開放した舞は、改めて私の事を頭から爪先まで見てくる。
舞「やっぱり、かわいい~。お姉ちゃんというより、妹!?」
ちょっとうっとりと感じで、顔を緩めてそんな事を言ってくる。
父「優、少しは休めたか?」
「うん、休めたよ。今は試験勉強している。」
父「そうか、舞にはまだ説明していない。夕食後に説明するからな。」
舞「なに、なにかあるの?」
父「落ち着いてからだな。」
母「これから、ご飯の準備するわね。舞ちゃん、お風呂の準備して」
そう言って、キッチンに母さんが向かった。
舞「はーい。」そう言って、舞は勉強道具を持って、自室に向かっていった。
私も部屋に戻って机に向かった。
実践系の能力に目覚めた奴の中には、将来、機動戦略隊に入るから勉強なんて要らないとか言っている馬鹿(クラスにも1名)もいるが、能力検査の休憩中に太和さんに聞いたら、そういう人間は機動戦略隊に入隊は出来ないと明言された。
機動戦略隊は、対魔庁の実働部隊の精鋭部隊。
状況に応じて、指揮官として現場を指揮しなければならない時もあるため、戦闘能力以外にも、人柄・状況判断力・戦略・決断力が求められるという。なので、士官学校では、思想的に問題が有るとして入学すら出来ないそうだ。
そういう人間は、下部組織の地域防衛隊や自衛隊との共同部隊「対魔物戦術隊」の一般兵として配属され、出世も太和さんが知る限り小隊長までだったと言っていた。
要は、自分の将来を考えるとしっかり勉強をした方が良いということ。
私の将来はどうなるのかは、全く分からない。
男の頃は、ゲームとか好きだったから、ケームクリエイターとかシステムエンジニアとかプログラマーとかに憧れれいたけど、今は何も考えられない。
私自身が大きく変わってしまった。将来の夢も変わるのだろうか?
そんな事を考えている内に、夕食に呼ばれたので食卓に着いた。
家族揃って夕食を食べるが、男の時と同じ量が出てきたので、半分位しか食べられなかった。残した分は、舞がぺろっと食べてしまった。
食後、私と父さんが舞に事情を説明した。
あまり良く理解出来てない様子だが、引越にならなくて良かったと言っていた。
ちなみに私のランクの事は、教えていない。
舞は、割りと口が軽い為、父さんと相談して、話さない様に決めた。
教えろと文句言っていたが、私が中学校を卒業するまで秘密だと言い含めた。
その後、母さんから明日ショッピングモールに私の衣服を買いに行く事を告げられると、舞も付いてくる事になった。
この買物については、私が一般保護の書類に署名している時に、母さんが課長さんと氷室さんに許可を貰っていた。
実際、私の着ていた服は、母さんからの借り物だし、下着も取り敢えずコンビニで揃えた必要最小限しかない。
「適当に母さんが買ってくる物でも問題ない」と、許可を取った時に言うと母さんと氷室さんの二人揃って、下着はきちんと身にあったものを選ばないと反論されてしまった。しかも、二人して私にどんな服や下着が似合うとか話し始めたかと思うと、私の服選びに参戦することが決定したのだった。
それって、女性物の洋服・下着売り場に行くってことでしょう。
しかも、着せ替え人形決定ですよね。
私にはハードルが高すぎるよ。
そうしている内に、お風呂が沸いた。
洗い物をしている母さんから、先にお風呂に入るように言われた。
一旦部屋に戻り、入院時に使わなかった女性物の下着と男物の寝巻きと若桜さんから貰った、お風呂道具を持って脱衣所に向かった。
なぜ。男物の寝巻きかと言うと、病院では室内着を借りていたから寝巻きとか室内着とか気にしていなかった。
いざ、お風呂に入ろうと思った時、替えの服が無い事に気づいた。流石に、下着姿でと言うのは気が引けるので、ダボダボだけど男物を着る事にした。舞の寝巻きを着るという選択肢も有るが、なんとなく抵抗がある。
入浴準備をしたら、さっと服を脱いで浴室に入り、かけ湯をしてから体を洗っていたら、舞が乱入してきた。
舞「おねーちゃん、一緒にお風呂入ろー。」
「な、な、な」
振り返ったら、妹の裸を真正面から見てしまって、赤面して前を向いた。
舞「お姉ちゃん、真っ赤になっちゃってかわいい。」
「な、何をしにきたの。」
舞「お姉ちゃん、女の子になりたてだから、色々教えてあげようかなと。」
「教えるって、何を」
舞「体や髪の洗い方とか。男の人と違って、女性の体ってデリケートだからね。
正しい洗い方しないと、お肌はすぐボロボロになるし、髪もボサボサになっちゃうからね。」
「体の手入れ方法なら、病院で教えてもらったよ。」
舞「ほう、それでは見せてもらいましょうか。」
ニヤリと笑いながら言ってきた。
こういう状態の舞は、何を言っても聞かない。
ため息をついて、舞が居ないものして、再び体を洗い出した。
髪を手漉きで洗うまでしから、舞と洗い場を交代する。
「私の髪は長いから、洗うのに時間が掛かる。だから、後ろで洗っているから、先に体を洗って。」
舞の後ろで、髪を洗っていると、舞は手早く体を洗い髪を洗っている。
髪を洗い終わった所で、一旦シャワーを借りて髪を洗い流す。
その間にトリートメントを終わらせた舞と入れ替わり、トリートメントをする。
ショートヘアの舞と異なり、長髪の私は時間がかかる。
トリートメントを流し終わった舞が先に浴槽に身を沈める。
舞「お姉ちゃん、ずるい。」
「ん?何言っているの?」
舞「なんで、そんなに完璧に
「短時間だったけど、みっちり仕込まれたから。」
お風呂場で、お姉さん達に囲まれて徹底した指導を思い出して、遠い目をした。
舞「あーあ、私が色々教えたかったのに。」
そんな事を言っている舞を横目で見ながら、髪を
舞「はあ~。行動が完全に女の子なんですけど。」
「ほっとけ」
舞「なんで、私に背中見せてるの?」
そう言いながら、後ろから抱え込まれた。
「対面で、入ったら色々見えちゃうでしょう。」
舞「私は、気にしないよ」
「私が気にするの」
私が、そっぽ向いているといきなり胸を揉まれた。
「ちょ、何してるの」
私は慌てて、舞の手を押さえた。
舞「ぐへへ、良いではないか。良いではないか」
私の背中側に体を密着させて、更に激しく揉んでくる。
「いやー、やめて、やめて、あーーー」
嫌がて、身を丸め
舞は、両手で口元を押さえている。
舞「いったーいな~。何をするのよ。」
「それは、こっちのセリフ。何のつもりよ。」
私は、怒りを表して舞を睨む。
舞「女の子同士のスキンシップよ。でも、頭突きしてくることないでしょう。」
「むしろ、私に何をしたの?
いきなり頭が真っ白になったと思ったら体が跳ねたよ。」
涙目になりながら、舞を睨む。
舞「え、何か分からないの?」
「わからないよ」
舞「自分で、胸とか揉んだりしたことない?」
「無いよ。」
舞「漫画とかラノベとかだと、性転換直後にやっているから、てっきり経験済みかと思ったけど、お兄ちゃんってかなり奥手?それとも嘘言ってる?嘘言っているように見えないしな。・・・・」
舞が、なにやら小声でブツブツ言っている。
舞「ごめんなさい。
こういうスキンシップまだ馴れていなかったみたいね。
仲が良い女の子同士だと、たまにやるんだよ~。
許して♡」
そう言って、舞は笑ってごまかした。
「分かった、許すよ。」脱力して答えた。
舞が何かを誤魔化した事は分かっているが、追求する気も無かったので許すことにした。
舞「お姉ちゃん、大好き」
舞が飛びついて来たので、両手で前に突き出して抱きつきを防いだ。
舞「お姉ちゃんのいけず。じゃあ、先に上がるね。」
そう言って、浴室を出ていった。
ようやく落ち着いた。
舞の悪ふざけで頭に巻いたタオルは落ちて、長い髪が浴槽に広がっていた。
タオルと髪を水気を切ってから頭に巻き直して、浴槽にゆっくり浸かり直す。
「舞は、私が自分の胸を自分で揉んだことが無いと言ったら驚いていたけど、自分で揉むのは普通の事なのかな?」
自分の胸に右手を当ててみたが、このまま揉んだら何かに負ける様な気がするので、揉むのを辞めた。
「私は、一体、何と戦っている?」
我が事ながら、意味不明。
体が十分温まってから、お風呂場を出た。
脱衣所に戻り体を拭きタオルを体に巻いて、髪を乾かして下着を着けようとして気づいた。私の寝巻きが舞の寝巻きに代わっていた。
色々と悩んだが、下着姿で家族の前に出る勇気はなかった。
着替えた後、リビングに戻ると舞が、私の寝巻きを着ていた。
「舞、どうして寝巻きを取り替えたの?」
舞「お兄ちゃんの寝巻きは、お姉ちゃんには大きすぎるよ。
私でもダボダボだもの。お姉ちゃんが着たら、簡単にズリ落ちちゃうよ。私の寝巻きでもブカブカだものね。」
何も言い返せなかった。舞の寝巻きでもブカブカで、袖口・裾口を折って手足を出している。幸い、手で押さえなくても寝巻きのズボンが落ちる事はなかった。
舞「言ってくれれば、私の寝巻きを貸したのに。お兄ちゃんの寝巻き持ってきたんだもの。お父さんの目のやり場に困る格好には出来ないでしょう。」
何も言えず
「うん、そうだね。舞、ありがとう。」力なく答えた。
自室に戻ろうとすると、
母「もう、寝るの?」
「もう少し、勉強してからかな?」
母「あまり無理をしたらダメよ。」
父「そうだぞ、今日は色々な事が合ったから、自分で気付いていないだけで相当疲れているはずだ。無理せず休みなさい。」
「うん、無理しない範囲で、キリがいい所で辞めるよ。」
私は、寝る準備をしてから自室に戻った。
キリが良いところまで、勉強をしていたら22時を少し回っていたので、そのまま電気を消して横になった。
父さんの言葉通り、疲れていたみたいで直ぐに眠りに落ちた。
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