第28話 帰宅
氷室さんに、自宅のマンション前まで車で送ってもらった。
両親と共に自宅へ入る。
入院中の汚れ物を洗濯かごに入れてると、父さんと母さんが玄関に向かっていた。
「優ちゃん 買い物に行ってくるね。何か食べたい物ある?」
と母さんが聞く。
「今は、何も思いつかない」
と答えた。
「そう。適当に考えるしか無いわね。」
そう言って考え始める母さん。
「優、ここ数日色々あって疲れているだろうから、休んでなさい。
舞が帰ってきたら、休めるものも休めなくなるぞ」
確かに、父さんの言う通り、舞が帰ってきたら騒々しくなるな。
「分かった。部屋で休んでるよ」
と答えると、両親は外出して行った。
キッチンに行き、コップ一杯の水を飲んだ後、自室に向かう。
自室の扉の前で
「たった3日家を留守にしただけのはずなのに、何ヶ月も居なかった気がするな」
と思いながら扉を開けた。
部屋から臭ってきた臭いに思いっきり
一頻り
取り敢えず、臭いを我慢して部屋に入り窓を開ける。
自室は、玄関の隣に有る、部屋の窓は通路側に面しているのでにレースのカーテンは締めた。
臭いは、他人の家や部屋に入った時に感じる臭いを強くしたように感じた。
しばらくしてから、自分の男性臭で有ることに思い至った。
かつての自分の臭い(男性臭)に強い拒絶反応を私の体が示したんだ。
男に戻ろうとした時の拒絶反応様な激しさはなかったけど、同じ反応に思えた。
換気している間は、リビングに行き時間を潰してから自室に戻った。
換気前に比べると大分ましになった。
窓を閉め、エアコンを入れベットに横になる。
母さんが、シーツと枕カバーを交換してくれた様だが、男性臭を感じる。
ベットが広い、そして、自分の男性臭を異臭と感じる事で、自分が変わってしまった事を強く実感する。
天井を見ながら
「取り敢えず、学校が受け入れてくれてよかった」
と呟いた。
学校に報告に行った時、内心は非常に怯えていたのだ。
なぜかと言うと、対魔庁で、ライセンス証を受け取る時に今後の話が有ったのだ。
対魔庁でライセンス証を受け取る時、対魔庁の職員と私達家族との間で話し合いが行われた。
「人材育成課課長の山崎です。
神城 優さんの今後について、お話があります。
神城 優さんは、『特殊能力者保護令』、通称『特令』の保護対象に指定されました。
特殊能力者保護令とは、希少な能力や特殊な能力を持つ者、社会的影響力が大きい能力を持つ者を、管理・保護するための強制執行の法律です。
神城 優さんの世界で8例目かつ国内初事例の性転換者という稀有な事例及び世界初の発露直後にSランク判定は、社会的影響が非常に大きいと判断されました。
そのため、貴方は、保護レベル3に認定されました。
これは、即時、隔離保護が必要と判断されるレベルです」
特殊能力者保護令?
私が保護対象?
隔離保護?
よく分からない事が、一斉に並べられて困惑している。
両親も同じ様だ。
「そう言われても、どういう状況か理解出来ないと思います。
この資料で特殊能力者保護令について、神城 優さんに関する部分だけ簡単に説明します」
と課長さんが言うと、氷室さんが私達に資料を渡してくれた。
「特殊能力者保護令、特令は、先程申したように特殊・希少・社会的影響を考慮して、国が保護するべき対象を一方的に選定し、保護を強制的に行う法律です。
保護対象に拒否権はありません。
保護には、三段階の状況レベルが設定してあります。
保護レベル1は、保護観察
定期的に対魔庁の保護官が巡回訪問を行います。
巡回期間は、要保護者の状況により変わりますが、1/
保護レベル2は、一般保護
常時又は10分以内に駆けつけられる範囲内で、保護官が付き添います。
常時監視対象になりますが、現状の生活圏での生活は出来ます。
保護レベル3は、隔離保護
対魔庁の管理する地域への強制移住になります。
正し、これには幾つかの強度というレベルが存在します
強度1:個人又は家族全員で移住
強度2:家族全員で移住、全員の旧戸籍・経歴を抹消の上、新戸籍に変更
強度3:対象者のみ移住、本人の旧戸籍・経歴を抹消の上、新戸籍に変更
強度4:対象者のみ移住、本人の旧戸籍・経歴を抹消の上、新戸籍に変更
残りの家族全員移住、全員の旧戸籍・経歴を抹消の上、新戸籍に変更
強度1の場合、移住前の交友関係者との接触・連絡は不可になります。
強度2以降は、旧戸籍に関係する全ての人・場所への接触・連絡は不可になります。
強度3以降は、家族とも接触・連絡が不可になります。
神城さんの保護レベルは3なので、我々は、強度1か強度2の移住を推奨します。
仕事の継続が難しい場合は、我々の方で斡旋します」
と説明された。
「そんな・・・」
私は落ち込み呟いた。
両親も暗い顔をして、お互いの顔を見ていた。
「他の選択肢は、無いのでしょうか?」
父さんが尋ねる。
課長さんは
「ありますが、あまり進められませんよ。
条件付きで、一般保護にする方法もありますが、神城 優さんを好奇の目に晒す結果になりますが、聞きますか?」
と言う。
「お願いします」
と父さんが答えた。
「神城 優さんには、
1.護衛官による保護。
2.発信機の常時携帯。
3.行動範囲の限定。
4.指定範囲を超えて行動する場合は、事前連絡を行い許可を貰うこと。
5.中学校在学中は、無能力者として行動してもらう。
登校する中学校には、限定的に情報を公開し協力依頼を行います。
1.女生徒として登校
2.発信機の常時携帯の許可
3.対魔庁のサポート要員の受け入れ
4.校外への情報の非公開
5.学校生活のサポート
登校目的は、あくまでも「社会復帰の一環としての社会実験」として行います。
そのため、受け入れ側である中学校の協力が必要不可欠です。
中学校が協力要請を受入たうえ、十分な安全の確保が必要です。
十分な安全が確保出来ないと対魔庁の職員又は学校長が判断した場合、即隔離保護・強度2以降に移行します。当然、行動条件を守れない場合も隔離対象になります。
現状では保護対象期間は、養成校卒業までの予定です。
この施策を行った場合、最低10年は保護対象に指定されます。
今なら、神城 優さんの情報は完全に秘匿されています。
ご家族一緒に新天地で、心機一転新しい生活をした方が、様々なリスクを回避出来ます。ご家族で、ご検討ください」
課長さんの説明が終わった。
しばしの沈黙の降りた。
「私は、最後の一般保護がいい。
頭では、課長さんが言った事が正しいって事は分かってる。
でも、
父さん。母さん。 ダメかな?」
私は、絞り出す様に両親に尋ねた。
「後悔はしないか?」
と父さんが聞く。
「それは、分からない。
後悔するかもしれない。
それでも、何もせずに別れたくない」
父さんの問いに、自分の気持を正直に答えた。
「優がそれを選択するなら、応援しよう」
父さんは、優しく言ってくれた。
母さんも
「優ちゃん、応援するわよ。
それに、いきなり居なくなったら、章君と零士君の心にも傷が残るわね。
舞ちゃんも仲良しの友達とも別れないといけなくなるわね」
と言ってくれた。
「本当にその選択でよろしいですか?」
課長さんが確認を取る。
「はい。この選択でお願いします」
と答える。
課長さんは
「分かりました。
神城 優さんの意思を尊重します。
氷室くん、書類を出してくれ」
と理解してくれた。
書類を確認して、私と父さんが書類に署名・捺印を行った。
そうして、学校は協力要請を受け入れてくれた。
次は、私が頑張る番だ。
学校に行って、章と零士に、クラスメイトに、受入れて貰うようにがんばろう。
でも、
今の私に出来ることは
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
月曜から中間考査だ、勉強しないとかなりまずいぞ。
今週、全然勉強していない。
私は、ベットから起き上がると、机に向かう。
机と椅子が高い・・・
椅子の調整に手間を食ってしまった。
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