第149話 宿泊棟の大掃除(7)
宿泊棟の清掃と平田さんの部屋が完成したので本日の作業は終了となり、伊坂さん、山本さん、久喜さん一家は、ダブルキャブトラックに乗って帰って行った。
まあ、帰るまでに一悶着あった。
まず、山本さんがここに住み込むと言い始めた。
正直、平田さん一人で
しかも、今の平田さんはランクFまで能力が落ちている。
そこに、同居希望者が平田さんに猛アタック中の
不祥事が起こる未来しか見えない。
100歩譲って、恋人もしくは同棲しているなら許可出来たかも知れないが、平田さんの認識では同僚以上恋人未満という認識でしか無い。
なので、不許可。
結局、駄々をこねる山本さんを伊坂さんが締め落として、ダブルキャブトラックに放り込んだ。
次に恵ちゃんが帰りたがらなかった。
余程、土田さんと鳥栖さんの事が気に入った様だ。
こちらは、オヤツの時に残ったドーナツを3個程包んで渡し、土田さんと鳥栖さんが「また一緒に遊ぼう」と約束した事で帰ってくれた。
で、残った高月さんは今晩ここに泊まっていくそうだ。
なんでも
「以前のここは、雰囲気が出ていて色々と出そうじゃあない。
ある程度な慣れるまで、女性隊員交代で泊まり込もうって話になったの。
それで、明日非番の私がトップバッターね。
大隊長の許可も取ってあるから問題ないわよ」
「その情報、もっと早く欲しかった」
と言うと
「副隊長に知られると厄介事になるから、ギリギリまで秘密にしていた」
と返答が返ってきた。
それを聞いて、皆揃って納得していたが、平田さんだけが今ひとつ理解できていなかった。
丁度夕食時なので
「このまま食堂で夕食を取って解散しよう」
と告げると
「体が埃っぽいから、皆で先にお風呂に入ってからご飯と食べない?」
と高月さんから提案があり、皆賛成した。
私は辞退すると声を上げる前に高月さんが耳元で
「これは神城さんの為でもあるのだから、強制参加ね」
逃げる前に回り込まれた。
共同浴場に一緒に行く事が、私のためになるのはとはどういう事だろう?
疑問に思いながらも皆と一旦寮に戻り、入浴の準備をしてから皆と一緒に厚生棟に向かう。
厚生棟の共同浴場の前で、高月さんと平田さんと合流してから脱衣場に入る。
私達の組み合わせは、非常に目立つ。
脱衣場に居る他の訓練生が、それとなく注目しているのも気づいているが、気付いていないふりをして服を脱ぐ。
周りから「うっ」「チッ」「ほぇー」「きれー」とか色々な小声が聞こえるが気にしない。
タオルで前を隠しながらお風呂用具を手に取ると
私をボーと見ていた鳥栖さんが
「あれ、神城さん。チョーカーと腕輪外さないの?」
「ああ、これはおしゃれでつけている訳で無いの。
これはバイタルメーターで、生体情報と魔力情報を常時取得する装置なんだ。
取り付け外しには専用の器具が必要で自分で取り外し出来ないの。
だから、周りの目があるから普段
訓練校側にも、了承済みだから問題無いよ。
平田さんが着けている物も私と同じ物だから、自由に取り外し出来ないよ」
「なんでそんな物着けているの?」
「なんでって、私の存在が特殊だからだよ」
「特殊?」
「私、
通常なら、紫外線に弱いし弱視か盲目のはずなんだ。
私の目、虹彩の色が赤いのは色素を有していないと思われるほど薄いから、普通は青色や灰色なのに、私は血液の色が浮き出て赤色に見えているらしい。
盲目でもおかしくないのに、
もし、私のこの状態を解析出来たら、同じ病気の人の対処方法や補助道具が開発されるかも知れない。
だから、データの取得に協力しているだけだよ」
実際の理由は、これ以外にも
「じゃあ、平田さんは?」
「平田さんは、
「そうなんだ」
高月さんが私の後ろから
「さあ、難しい話はお終いにして、浴室にいきましょう」
振り向くと、タオルで前を隠している高月さんと平田さんが居た。
二人共、背もそこそこ高く出る所も出て、引っ込む所もしっかり引っ込んでいる。
抜群のスタイルに、周囲からため息が漏れ出ている。
二人が浴室に向かうのに合わせて、私も移動する。
他の4人は、まだ脱ぎかけだったので慌てて服を脱ぎ捨てて追いかけてくる。
浴室、その後の食堂でも私達の周囲は、遠巻きに見ているだけで近づいてくる者は誰一人居なかった。
厚生棟の前で、高月さんと平田さんと別れて寮に戻る。
当然、寮に戻る前に平田さんに魔力を使わない様に念押しをしてからだ。
寮の玄関で皆と別れて部屋に戻り、普段通り勉強した後、以前買ったプラモデルの組立を行う。
初めてのプラモデルなので、何度も説明書を読み返しながら少しずつ作っている。
勉強終了から就寝時間のスキマ時間に、説明書の1~5項目位のスローペースで作成し続けている。
忙しかったり用事があったりすると作業しないから、それなりの時間がかかっているが、
しかし、就寝時間が迫ってきていたので、キリが良い所で終了して片付けた。
完成は、後日に持ち越し。
この後は、普段通り夜のローテンションを熟して寝るのだった。
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