第192話 テスト前の出来事(2)

 彼女達を部屋に上げた。

 取り敢えず、今の彼女達の状況を聞いた。


 彼女達は、私と別れた後、お風呂に入ってから寮に戻って来たそうだ。

 一旦自室に戻ってから、一緒に試験勉強をする為に学習室と談話室を覗いたが、満室で使える場所が無かったそうだ。

 そして各自の部屋は、普段部屋に居着かない同居人が、同居人の友人を連れて部屋を占拠していたそうだ。


 あと、クラスメイトの小鳥遊たかなしさんから

「貴方達を目障りに思っている人達が、寮全体を巻き込んで嫌がらせを仕組んだ」

 と情報を貰ったそうだ。

 彼女も参加する様に、上級生同伴で同居者に圧力を掛けられたらしいが断ったそうだ。


 ちなみに、小鳥遊たかなしさんは、クラスのギャルっぽい女性グループの一人だ。

 彼女達は、強くなる事よりもオシャレや流行に興味がある人達の集まりで、クラスの中でも中立の立場になっている。

 その為、自称意識高い系の人達とはあまり話が合わないた事も多々ある様だった。

 私達とは、普通に話をする。


 ちなみに、自称意識高い系の人達は、私達に話しかけてくる事は無い。

 それに恐らく、今回の件も自称意識高い系の上級生が取りまとめている可能性が高いと分かった。


 取り敢えず田中さん達には、ダイニングテーブルで勉強を行って貰う。

 その間に、寮監と今回の得た情報を共有する為に寮監室に向かう。


 寮監室の前少し待つと矢野さんが戻って来たので、寮監室で田中さん達から聞いた情報を話した。

 矢野さんからは、その情報は概ね正しく、やはり3年生主導で行われていた様だ。

 また、今回の件で主導的な寮生と協力的な寮生についての情報も取得済みで、強制的に参加させられた寮生と、参加しなかった寮生も把握済みだという。


 首謀者の処置をどうするかと尋ねられたが、正直、私が全面に出て処理する内容でも無いので

「おまかせします」

 と丸投げする事にした。


 すると、矢野さんは目を細め、凄みのある笑みを浮かべて

「その方がええ。あとはまかせんしゃい」

 と言った後

「部屋を占拠しておる馬鹿共は、21時には解散させるから心配せんで勉強に専念したらええ」

 と言った後、軽快に笑っていた。


 私は

「分かりました。後をよろしくお願いいたします」

 とお願いして寮監室を退室した。


 自室に戻ると、田中さん達は大人しく勉強をしていた。

 少し悪い気もしたが一旦中断して貰って、占拠された部屋も21時には開放される事を伝える。

 それを聞いて、田中さん達も安心した様だ。


 矢野さんからの情報では、今回の騒動の中心人物は自己本位で、プライドがかなり高く、カリスマ性もそれなりにある人物らしい。

 以前、田中さん達にちょっかいを掛けて解散させられた派閥のリーダーでもあった。

 今回の件は、報復の一環だろう。

 放っておけば、更に図に乗って、より過激に仕掛けて来る事が容易に想像できる。


 なので対処は寮監に一任したが、このまま引き下がるつもりは無い。

 私なりの報復を行うつもりだ。

 方法は、田中さん達の能力を大幅に引き上げ、実力差を見せつける事にする。


 幸い、彼女達もやる気になっている様なので、訓練の強度を更に上げても問題はないので、これから記憶力の能力アビリティ訓練を行う事にする。

 本来は、4人が自力で魔力調律状態に成れる様になった後に行う予定の追加訓練だったが前倒しするつもりだ。


 だが、それを行う前に確認する必要がある。

「ところで、今回の騒動。

 以前、貴方達にちょっかいを掛けて解散させられたグループが主犯なんですが、どうしますか?」

 と問いかける。

 4人は、驚いた様子でお互いの顔を見合わせている。


 田中さんが代表して

「どうするって、直接被害を受けていないから、何も出来ないのでは?」

 と戸惑っているようだ。


「そうですか?

 私としては、このまま引き下がるつもりは有りませんよ」

 と言うと、4人は驚いた顔をした。


「直接手を出すつもりは有りませんが、陰湿なイジメを計画・実行する様な人物を野放しにするつもりは有りません。


 対処は寮監に任せましたが、このまま舐められたままなのもしゃくさわります。

 なので、その無駄に肥大化した自尊心を徹底的に折ってやろうと思います」


 都竹さんが、恐る恐ると言った感じで

「それって、神城さんが直接手を出すの?」

 と質問してきた。


「先程も言った通り、直接手を出しませんよ」

 と答えると、かなり困惑気味に

「じゃあ、どうするの?」

 と聞くので

「私の代わりに、貴方達に頑張ってもらおうと思ってます」

 と、満面の笑みで答えると、4人共絶句している。


 更に続けて

「別に実力行使を行えって、言っている訳では有りません」

 と言うと、あからさまにホッとした様子になった。


「まず、貴方達の実力を大幅に引き上げて、彼女達の自尊心を折りましょう。

 戦術課の隊員が認めた才能を、見せつけてあげるだけです」

 と言うと、4人共なんとも言えない情けない表情をした。


 都竹さんは

「流石にそれは無理なんじゃないかな。

 私に、そんな才能があるとは思えないのだけど」

 と言葉尻を弱々しく零した。

 他の3人も同調する様に落ち込んでいる。


「貴方達は、馬鹿にされ、虚仮こけにされて、悔しく無いのですか?

 それとも、私の言葉が信用できませんか?」

 と問うと、はっとした様に顔を上げた。

「私は、可能だと判断したから提案しているのです。

 貴方達を虚仮にした上級生を見返したくありませんか?」

 と優しく問た。

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