第68話 能力習得実験(2)

 3階の食堂でお昼を食べた後、一旦部屋に戻り帰り支度を終わらせて荷物をロビーに集合した。

 荷物は、移動用のバスに載せた。

 三上さんを先頭に若桜さん、私が研修棟3階の小ホールに入る。

 部屋には、10名の隊員が待機していた。


 三上さんは隊員達の前に立つと

「忙しい中、集まってくれて感謝する。

 私は、思金おもいかね静岡支局の三上だ。


 今回の招集については説明を行う。

 今回の招集目的は、彼女の特殊能力の検証のためだ。

 彼女の特殊能力は、他人の能力アビリティを習得できる能力だ。

 ただし、この能力には時間制限が存在していて、あと1週間程度で使用不能になると予測されている。

 そこで急で申し訳ないと思ったが、守護者の公開演習に合わせて諸君達を招集した次第だ。

 彼女には、基本的な身体強化系、放出系、具現化系の能力アビリティの習得実験は終了している。

 君達の持つ特殊系の能力アビリティの習得実験を行うのが今回の目的だ。

 なにか質問は有るかね」


 一人の男性隊員が手を上げた。

「今回の目的は検証だけなのですか?

 また、習得した能力アビリティは、コピー元と同じランクになるのですか?」

 と質問する。


「一番の目的は検証だ。

 彼女には、魔力塊マナ・コアの状態を常時記録する装置を身につけてもらっている。

 習得前後の魔力塊マナ・コアの状態変化や能力アビリティの成長による変化を記録する事で、能力アビリティの発現条件や成長条件を見つける事も検証の目的の一環だ。

 習得した能力アビリティは、最低ランクのF1になる事が確認出来ている。

 風の上級<暴風>を習得しても、風のランクF1になる事が確認されている。

 他にはあるか?」

 と三上さんが言うと、一人の女性隊員が手を上げた。

「彼女の元々の能力アビリティ状態と今の能力アビリティ状態を教えて貰って良いですか?」

 と質問したので、三上さんは

「彼女の能力アビリティ発露直後状態は、魔力がF2、特殊が能力習得だけだ。


 今は、魔力:F2

 身体強化:F1

 放出系は、風と氷がF1

 具現化系は、風と氷がF1

 特殊系能力は、習得がランク不明、魔力生産量増加と周辺魔力吸収がF1

 という具合だ。


 火と土も習得実験を行ったが習得出来なかった。

 水は、近場に所持者が居なかったので未実施だ。

 他にはあるか?」

 と言って周囲を見渡す。


 三上さんが、嘘の設定をスラスラと答えている。

 今の私の見た目は、黒目黒髪に一般的な肌色の皮膚だ。

 研修島にいる研究者の人が持っている色彩変化の能力アビリティを適用して貰って変化したけど、2時間位しか保たないそうだ。

 当然、この能力アビリティも習得したが発露しなかった。


「無いようなら実験を始めよう」

 と宣言すると、隊員達が1一人ずつ前に出てくる。

 全員から能力アビリティを習得させて貰った。

 能力アビリティを習得させてくれた隊員の一人一人にお礼を言うと、頑張れと励まされたて、本当の事が言えない罪悪感が襲ってくる。


 能力アビリティ習得が終わり、今は港に居る。

 もうすぐ海上保険庁の巡視船が来る。


 落ち込んでいる私に高橋さん

「落ち込んでいる様だがどうした」

 とが声を掛けてきた。


 私は、今回の能力アビリティ習得の際に嘘をついている事に罪悪感を感じている事を説明した。


 呆れたような表情をして

「君の見た目と設定以外は、嘘では無いだろ。

 それに嘘は、君を守る為の行為だ。

 罪悪感を感じるなら習得した能力アビリティをきちんと成長させてやれ。

 それが最大の恩返しになるだろう」

 と返された。


「はい、頑張ります」

 と元気よく返事をする。


 程なく巡視船が来たので船に乗り込む。

 高橋さんに見送られて研修島を後にする。


「青年期特有の潔癖さと真面目さ、年齢に見合わない純真さを兼ね備えている娘だったな。

 力に溺れる様子も無い。

 妬むだけ無駄だな。

 このまま、まっすぐ成長して欲しいものだ。」

 独り言を残して、彼女も職務に戻っていった。



 巡視船の中で、自分の能力を確認をする。

 魔力:1.77GMP (UP)

  身体強化:S1

 放出系

  風:B8 (UP)

  氷:F2 (UP)

  雷:F1 (NEW)

  火:F1 (NEW)

  水:F1 (NEW)

  土:F1 (NEW)

  光:F1 (NEW)

  重力:F1 (NEW)

 具現化系

  風:B4 (UP)

  氷:F4 (UP)

  雷:F1 (NEW)

  火:F1 (NEW)

  水:F1 (NEW)

  土:F1 (NEW)

  影:F1 (NEW)

 特殊系

  耐日光:C1

  魔力回復:A3 (UP)

  能力鑑定:A1

  広域探知:F5 (UP)

  空間把握:F5 (UP)

  記憶:F7 (UP)

  魔力感知:F3 (UP)

  高速思考:F5 (NEW)

  演算:F2 (NEW)

  治癒:F1 (NEW)

  回復:F1 (NEW)

  浄化:F1(NEW)

  体力回復:F1 (NEW)

  身体硬化:F1 (NEW)

  物理結界:F1 (NEW)

  魔力結界:F1 (NEW)

  悪意感知:F1 (NEW)

  先読み:F1 (NEW)


 たった2週間で、こんなに能力アビリティが増えた。

 章、零士、舞は、1つしかなかったはずだから、この量は異常なのだろう。

 絶対にあの三人とお母さんには言えない。


 物凄くねたまれそうだ。

 三上さんからは、一般的にランクDまでなら1~2個

 それ以上なら3個以上持っているのが普通らしい。


 三上さんと若桜さんに聞きながら、能力アビリティの内容を確認する。

 放出系と具現化系の属性についてはそのままなんだけど、かみなり・光・影・重力属性は非常に珍しい属性で、滅多に発現しない属性だそうだ。


 かみなりは、そのまま電撃系


 光は、強力な光を作れるそうで、照明から閃光まで、位相と波長を揃える事でレーザーにもなるそうだ。


 影は、自身の影を伸ばしたり縮めたり形を変えたり出来るそうだ。


 重力は、文字通り対象の重力を操作する事が出来るそうで、成長すると斥力せきりょくも操れる様になるそうだ。

 この能力を使って空を飛ぶ事も可能だそうだ。


 火と土は、能力アビリティを提供してくれた人達の中にも持っている人がいたので再度見比べたら、転写した回路に不備が見つかったので修正したら発露した。


 あと、闇や暗属性は見つかっていないそうだ。



 高速思考は思考速度が早くなる。

 演算は計算が早くなる。

 この2つは自力発露。


 治癒は、自身、他人の傷を修復する能力で最初は、自然治癒力を少し強くする位で、成長すると部位欠損も直せる様になるそうだ。


 回復は、自身の回復力を上げる能力で、成長して上位に進化すると腕ぐらい切り落とされても直ぐに生える事も可能らしい。

 どこかの緑色の身体の人の能力みたい。


 浄化は、純化と分離を行う。

 魔力や瘴気に対して使うと霧散させる事が出来る。


 体力回復は、文字通り体力の回復量が増えるらしい。

 疲れにくくなるそうだ。

 持久走の時に役に立ちそう。


 身体硬化は、体の部位もしくは全身を硬化させる能力で、成長させると鉄よりも硬く出来るそうだ。


 物理・魔力結界は、文字通り結界を張る能力で、最初は両手のひら位の大きさだが、成長させると大きく張れる様になるそうだ。


 悪意感知は、相手に悪意があるかどうかを感知出来るそうだ。

 進化させれば、相手の虚偽きょぎの有無や虚偽の場所まで分かるようになるそうだ。


 先読みは、相手や状況の一瞬先が何となく分かる程度の能力だけど、成長させると高精度の未来予測が可能になる能力だそうだ。

 ただし制限があり、制限以上の予測は出来ないので使用用途が限られるそうだ。

 制限内容は、使用者の習熟度や状況によって変わるそうだから、把握するのが大変そうだな。


 幸い、船酔いもすること無く田子の浦港に着き、迎えに来ていたマイクロバスに乗り換えて研究所に戻りました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る