第67話 能力習得実験(1)
公開演習が終わり、研修島の飛行場に降り立った。
直ぐにバスに乗り移動して、地下通路がある建屋に移動後、地下通路経由で厚生棟3階の会議室に移動する。
そこで、戦闘服を脱ぎ、待機していた研究室の人に
暫くすると、伊坂さんと篠本さんが入ってきた。
伊坂「神城さん、お疲れ様です。
本作戦は完了しましたので、楽にして下さい。
この後の予定ですが、午後から三上さんの監督の元、
それが終了後、帰還となります。
何か質問はありますか?」
「あの、私、やりすぎましたか?」
正直、演習島が消滅するとか思っていなかった。
伊坂「そうですね。
想定以上の被害には驚きましたが、結果的には上々でしょう。
敵性国家の首脳陣が何を考えるかはわかりませんが、あの破壊力を見て戦争を行おうとする国はいないのではないでしょうか。
だから、気にする必要はありません。
地域防衛隊と研究員には、消失した研修島の残骸の回収と環境影響調査を命じています。
そちらも数日で完了するでしょう。
とりあえず、三上さんが到着するまで休んで下さい。」
それだけ言うと、二人は出ていった。
部屋に残ったのは、私と高橋さんと護衛役の6人の8人だけだ。
正直、休憩しろと言われてもどうしたら良いか分からない。
望月さんと植松さんが部屋から出て行った。
私は、だたじっと椅子に座っているのが何となく辛い。
太和「状況が分からない事が不安か?」
戸神「むしろやることが無くなったために、どうして良いか迷っている様に見えますね。」
太和「どうなんだ?」
「両方です。
本当にあれで良かったのかなという思いと、急に手持ち
太和「示威作戦については、隊長の言葉通り受け取っておけ。
結果は、数日しないと分からん。
三上がこっちに来るまで、まだ30分以上掛かるだろう。
昼にするには早すぎるしな。
ここで待機中に出来る事でもするか?」
高橋「休憩も仕事ですよ。」
太和「だが、精神が
なら、少し発散させるべきだ。」
高橋「確かに、一理ありますね。」
太和「じゃあ、神城こっちに来い。」
「あ、はい」
返事をしてから、太和さんの隣の席に移り向かい合う。
太和「手の上に氷を具現化してみろ」
手の上に出る氷は、直径1cm位の歪な形の氷だ。
太和「今度は、その氷が球体になるようにイメージしながら出してみろ。」
両手で作ったお椀の上でポコポコと湧き出る氷達だが、なかなか球体にはならない。
しばらく続けると、球体の氷が出始めた。
太和「その調子で、出てくる氷が全て球体になるように頑張ってみろ。」
私の手から
雛元さんと山下さんが慌ててバケツを持ってきて、溜まった氷を捨てに行っている。
さらに続けていくと、出てくる氷がほぼ全て球体になった所で、望月さんと植松さんがお茶の準備をして帰ってきた。
訓練を中断して、全員でお茶を飲む。
なんだかホッとする。
訓練を再開して、安定して丸い氷が作れるようになると、同じ大きさで丸い氷を出すようにと指示が来た。
同じ大きさで丸い氷を作ろうとして、手の上で氷を生み出し、下に置いてあるバケツに落ちていく。
バケツに貯まった氷を、雛元さん達が交代で捨てに行く。
その様子を見ていた高橋さんが、
高橋「普通、具現化系
「そうなんですか?」
高橋「ああ、具現化系は生成時のイメージが重要だから、普通は1回毎に間隔を開けて生成するものだ。
魔力量に余裕があっても、こうも連続生成することは出来ない。
適正と長年の訓練を経て出来るようになるものなんだが。」
三上「それは、固定観念がないから出来るんだ。」
声のした方、会議室の入り口を見ると三上さんと若桜さんが居た。
三上「よお、派手にやったな。」
若桜「優ちゃん、お疲れ様」
「三上さん、若桜さん こんにちは」
若桜「はい、こんにちは」
まわりの人達は、脱力している。
三上「ははは、神城は意外とマイペースだな」
そう言いながら、手近な椅子に腰掛けた。
若桜さんは、私の横の席に座った。
高橋さんは、気を取り直して
高橋「三上さん、先程の発言の意味は?」
三上「固定観念がないことか?」
高橋「はい、それが神城さんの能力と関係するのですか?」
三上「
でも、通常の能力者の魔力量なんてたかがしれている。
だから自然と自分の限界を知る事になる。
そして上位者が、上限と対策を教えてしまう。
それが、固定観念=常識となって他人にも適用してしまう。
だから、神城の行動が異常に見えているだけだ。
神城は、ほんの2週間前まで能力が使えなかった。
それでいて、此処に居る全員の魔力量を合計しても太刀打ちできない程の豊富な魔力量を持っている。
今、
他の能力者と違って、神城の魔力量の上限は無いに等しい。
時間が許す限り、試行錯誤したい放題なのだ。
たから、他の能力者の様に上級技法を使うのに、一度固定概念を破壊して再構築する必要が無い。
だから、神城の
高橋「それは、我々が必死に習得してきた下級、中級技法は不要と。」
三上「下級、中級の基礎技法は必要だが、小手先の技法は要らない。
特殊技法は、習得可能なら習得するぐらいだな。」
高橋「小手先の技法・・・」
悔しそうに顔を歪めている様に見える。
三上「なにか勘違いしているようだから言っておくが、下級、中級の応用技法は威力の増加や手数を増やすものばかりだ。
神城の場合、現時点で必要なのは威力を弱める方で有って、威力増強の必要性が無い。だから、習得すべき技法の優先順位は、下級・中級・上級の基礎技法、上級の応用技法、下級・中級の応用技法の順になるだけだからな。
こいつが例外であって、一般的な常識に当て
愉快そうに笑いながら、話している。
高橋「随分と楽しそうですね。」
なんか険悪な雰囲気が・・・
三上「おう、楽しいぞ。
ほんの2日程、目を離しただけで演習島を消滅させる程の力を手に入れたんだぞ。次に神城が、どんな事をするか楽しみで仕方ない。
こいつは、本当に真面目で言われた事をきちんと実行する。
どの様な成長するか本当に楽しみだ。」
高橋「……」
三上「そういうわけで、太和と戸神教導官も、神城への技法教育は基礎の基礎と上級応用を教えるようにしてくれ。」
非常に上機嫌のようだ。
太和「ああ、分かった。」
戸神「分かりました。」
三上「午後の予定は、既に聞いていると思うがおさらいだ。
13時00分より、研修棟3階にある小ホールにて
16時00分に海上保安庁の巡視船で出航、田子の浦港で車に乗り換えて研究所に帰還する。
ヘリと護衛艦の動向は、報道陣が目を光らせているから、別手段を使う事になった。
そういう訳で、午後も忙しいぞ。
まずは、昼飯を食べて英気を養おう。」
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