第235話 7月の出来事(2)
この様にプライドをズタズタにされた馬鹿共の4人が、私達への悪評をアチコチで言い触らし始めた。
その事実を知った教育官は、彼女達にランニングコース2,000周の追加の罰を与え、全訓練生に実名で罪状を公表される事態になった。
派閥の構成員もこの悪評をばら撒く行為に加担していたらしく、馬鹿共が所属していた派閥諸共全訓練生に実名で罪状公表の上、障害物コース30万周の刑に処された。
今回の派閥ぐるみで悪評をばら撒くと言う悪行については、事前に内通されていた様で、教育官達や寮監達に注視された中で行われた悪行だったので早期に解決した。
ちなみにクラスの3人が離反した時、派閥の構成員の半数も派閥を離反した模様。
この事件は、宮園達の嫉妬と逆恨みから来ている事は明白だ。
また、派閥の幹部達の関与している事から、私への逆恨みもある様だ。
強制収容所に送られてもおかしくない案件なのに、軽微な懲罰となっているのには理由がある。
武道の訓練中に
また、教室での糾弾行為や悪意のある流言だけで、
7月最初の金曜日の放課後に霧崎教育官に呼び出されて、美智子さん達と一緒に説明された内容だった。
「強制収容所送りにならなくて良かった?のかな」
と都さんが、首を傾げ呆れた感じで言うと
「どうなんだろう?」
と千明さんと口にしたが、誰にも答えが分からなかった。
そんな中、ボソっと小声で
「これが、若さ故の過ちと言うやつか」
と郁代さんが呟いた。
「たぶん。そうだね」
と美智子さんが答えて、郁代さんの顔が赤くなっていた。
私的には、これで彼女達への救済処置だと考えるには軽率だと思っている。
むしろ彼女達とって、強制収容所に送られた方が幸せだったかもしれない。
何故なら、彼女達のスクールカースト最底辺の地位が固定されてしまったも同然だからだ。
この状況を覆す事はかなり難しい。
訓練校間を転校する事は出来ないし、辞める事も引き籠もりも難しい。
本人の意志を無視してでも強制的に登校させられるだろう。
そして、強制収容所行きも事実上ないだろう。
本当の処罰の内容は、最底辺として晒し者にする事だ。
今は気付かなくても、その事をこれからジワジワと真綿で首を締められる様に感じる事になるはずだ。
そんな事を言えるはずも無いので、分からない振りをしつつ心の中で
『ご愁傷さま。強く生きて下さい』
と願うばかりだ。
男子の馬鹿共?
教室で睨んでくる位だ。
実害が今の所無いので放置している。
本日、土曜日の8時30分。
本来なら訓練に向かっている時間なのだが、明日からの夏期集中訓練の為、本日の訓練はお休みになっている。
夏期集中訓練は、研修島への移動に各1日、訓練校合同訓練が12日間行われる。
今年は、中部の
夏期集中訓練は、7校の訓練校全てで行われる。
他の4校は、それぞれ8月上旬と下旬に、2校合同で行わる。
ちなみに時期と合同校は、毎年6月に行われるくじ引きで決められている。
本来、全員参加なんだけど私達は不参加だ。
研修島までは一緒に行動するけど、そこから東海支局教導隊訓練所に移動する予定だ。
さて、私は今、宿泊棟1階の大部屋の応接用のソファーに座って人を待っている。
どうしても私と話をしたいと言う人が居るので、今日会う事になっているからだ。
迎えに行っている美智子さん達が戻ってくるのを待っている状態だ。
しばらく待っていると扉が開き美智子さん達が入ってきた。
郁代さんに押し出される様に伊吹さんが入室した。
そう、4人が連れてきたのは伊吹さんだ。
伊吹さんは、個室になった事を切掛に美智子さん達とも話をする事が増えた。
その時に私と会えないかと相談をした結果、今日会う事になったのだ。
伊吹さんを見ると、かなり緊張している様子でちょっと顔色が悪い。
郁代さんに押され、私の対面のソファーの前までやって来る。
「良く来ました。どうぞお座り下さい」
と微笑んで言うと、伊吹さんは何故かカチコチになって立ち尽くしている。
「ほら、座って」
と美智子さんが伊吹さんの耳元で囁くと
「ひっ」
と小さく声を上げ、崩れ落ちる様にソファーに座った。
今日来ている隊員の一人が、お盆にお茶とお菓子を持って来て私と伊吹さんの前に置いた。
「ありがとう」
と私が隊員に声を掛けると、伊吹さんは慌てて
「ありがとうございます」
と言って、ペコペコと頭を下げた。
女性隊員はにっこり笑って
「ごゆっくり」
と言って、美智子さん達を連れて部屋を出て行った。
伊吹さんは、縋るような目でその様子を見ていた。
二人きりになり、場を静寂が支配した。
伊吹さんは、多少うつむき加減で何か言い出そうとしているが、緊張の為か上手く言葉に出来ていない様子だ。
私は、お茶を一口飲み、伊吹さんが話し始めるのを静かに待つ。
ようやく覚悟が決まった様だ。
先程までのおどおどした感じが消え、強い眼差しで顔を上げた。
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