第234話 7月の出来事(1)

 寮は、玄関と寮監室や私の居る部屋がある3階建ての建物と、その北側に訓練生の住む4建ての建物の2棟建てになっている。


 訓練生の住む建物は、1階が共有スペースで、2階から4階までが居住スペースになっていて、4階が1年生、3階が2年生。2階が3年生になっている。

 2階から4階の各階は、個室が10部屋、相部屋が40部屋ある。


 この建物の階段は2箇所有り、2階から4階の部屋割りは、西端から10部屋が個室で、水場(洗面台と洗濯機が置いてある)、トイレ、階段と続き、トイレ、水場、相部屋が25部屋続いてから、水場、トイレ、階段、相部屋15部屋の構成になっている。

 また、基本的に空き部屋は東端から空ける事になっている。


 西側の階段は、1階の玄関に繋がる廊下のすぐ側にあるので、優秀な訓練生程西側の階段に近い部屋に配置されやすい。

 なぜ配置されやすいかと言うと、相性問題を考慮されて部屋割りをされるので、必ずしも成績順と言う訳でないからだ。


 だが、宮園達が東端に移動されたと言う事は、スクールカースト最底辺に叩き落されたとも言える。

 でも、彼女達は7人の奇数だから、偶数にするために同じ派閥の人間も移動させられていそうだな。

 何故なら人員の端数が生じた場合、相部屋で成績上位者に割り当てられるのが通例だからだ。


 宮園達が東端に移動した件は、彼女達が所属する派閥の評価にも影響する。

 彼女達が所属する派閥は、例のカリスマ先輩が率いる派閥だ。

 カリスマ先輩が、宮園達を庇っても切り捨てても派閥の評価を大きく落とす事には変わりない。

 彼女達の派閥が評価を取り戻すには、宮園達を更正させたと言う実績を作るしかなくなった。


 さて、彼女達がどの様な判断をするのかな?

 矢野さん辺りは、嬉々として様子を見守るだろうな。


 ちなみに西側階段の両側にトイレと水場があるのは、西側のトイレと水場は、優等生専用となっている為である。

 こういう所でも差別化しておかないと、イタズラをする者が後を絶たないらしい。

 その為、個室がある西端エリアの前に鍵付きの扉が設置されている。

 この扉は、学生証が無いと開かない仕様になっている。


 イタズラと言えば、引っ越しについてもそうだ。

 わざと物を残したままや部屋を汚したまま移動する者も居る為、引っ越しが終わった者は、寮監の確認を受ける必要がる。

 そこで合格を貰えるまで移動が完了しない。


 過去には、卒業時にわざと汚して出て行った者も居た様だが、その様な部屋は業者を入れて掃除をした上で、その部屋の使用者に業者代と迷惑料が上乗せされた請求書が送られるそうだ。

 対魔庁に入庁していれば逃げられないし、一般に下ったとしても逃れた例はないそうだ。

 さらに滞納を重ねた結果、数百万円も請求された人もいたそうだ。

 最終的に強制徴収が行われたの事。


 入寮の際に説明をされているし、部屋替えの時にも掲示されているのだから、その様な非常識な人は居ないと思いたいが、あの馬鹿共が行いそうな気がしてならない。


 その事を告げると、美智子さん達も隊員達も同意していた。

 隊員達は、美智子さん達に寮内だけで無く授業中や共同浴場等でも、逆恨みで襲われる可能性もあるから気をつける様に警告した。


 無いとは思いたいけど注意する事に越したこと無い。


 食後、部屋に戻り自己鍛錬等をしてゆっくりと過ごした。

 美智子さん達は、荷物の移動と元の部屋の清掃は終わった(寮監の確認済)そうだが、まだ移動先の部屋の片付けが終わっていないそうだ。

 なのでお風呂に入った後も、片付けをするそうだ。

 こうして、この日は穏やかに過ぎた。



 7月の後半の2週間に夏期集中訓練行われるので、前半の2週間は問題無く過ごせれば良いなーと思っていたが騒動が起きた。


 まず、宮園グループから3人が離反し派閥も抜けた。

 その離反した3人は、宮園達と所属する派閥の行動に疑問を持っていた為、元々教室での糾弾行動にも消極的だった。

 そして、宮園達に加担して厳罰を貰った事で、派閥と宮園とその取り巻きに対する不信感を更に募らせた結果、離反した。

 弾劾を行った翌週の月曜日の朝、クラスメイト達の前で深々と頭を下げて謝罪してきた。

 流石に直ぐに許す事は出来ない事柄なので、謝罪の受け取りを保留した。

 今後、彼女達の行動を持って謝罪の受け取りの判断をすると告げた。

 彼女達は、その事を受け入れた上で感謝していた。


 一方の馬鹿宮園共は、問題を起こした。

 武道の時間、これまでは経験者と未経験者と別れて行っていたが、7月から一緒に訓練を行う様になった。

 初めは私達相手に余裕をかましていた馬鹿共でしたが、私達相手の対戦で徹底的に打ちのめされた。

 そして、激昂して身体強化や攻撃性の高い能力アビリティを使った攻撃を仕掛けて来たが、私達の前に再び打ちのめされた。

 教育官は気づいていたので、この後、教育官が教育的指導という名のシゴキが行われた。


 美智子さん達が、有段者相手に勝てた理由は

 1.得手不手はあれど全員が、打・投・極と剣の基本を一通り習得している事。


 2.隊員相手に能力アビリティ技能スキル有りの訓練をしている以上、馬鹿共の攻撃は比べ物にならない程お粗末だった。


 3.常に格上との戦闘訓練を行っているので、体の動きが最適化されている事。

 身体強化を用いなくても、馬鹿共より素早い動作が可能になっている。


 4.思考加速の技能スキルや高速思考の能力アビリティを使っている為、状況判断が早いのだ。


 これは、日々の戦闘訓練で使わせているので、本人達も無意識に使う様になった。

 そして、この事は教育官も気づいているが特に何も言わない。

 黙認されているのは、攻撃性を持つ能力アビリティ技能スキルで無いためだ。

 私の場合は、この他に相手の魔力を見て先読みをしている。

 なので負ける要素が、純粋な腕力位しか無い。

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