第250話 1年次夏期集中訓練 1日目(13)
郁代さんが
「音より早くて、質量がほとんど無い物って存在するの?」
と疑問を口にすると、照山さんが
「有るわよ」
と答える。
「それは、なんですか?」
と郁代さんが聞くと
「そうね。磁力とか、光とか、衝撃波なんかね」
と答える。
郁代さんが
「へぇー。そう『それだ!』すか…」
返事をしている最中に、伊島さんが大声を上げた。
皆が伊島さんを注目する。
「神城さんの
と言うと、戸神さんが端末を操作する。
一斉にモニターを覗き込んでいる。
「え?」
「はぁ?」
「なにこれ?」
「ものすごい数」
と美智子さん達が変な声を上げる。
「あった。
やっぱり、
これで、攻撃の正体が分かった」
と伊島さんが叫んだ。
伊島さんの側に、研究者達も押し寄せた。
彼らの熱い眼差しを受けながら
「それは、レーザーだ」
と言うと、研究者達の間から
「レーザーか。見落としていた」
「言われれば、それしか無い」
「短波長レーザーなら、見えなくて当然だな」
と口々に言っている。
「レーザーって、黒板に向かって使う赤や緑の点が出るやつ?」
と美智子さんが首を傾げながら呟くと、研究者達が一斉に千明さんの方を向いた。
「ヒッ」
と小さい悲鳴を上げる。
武井さんが
「それは、レーザーポインターだね。
その光源にレーザーが使わているよ」
と言うと、美智子さんは研究者達に見つめられながら
「そうなんですね。
でも、そんなに強い物なんですか?」
と言うと、何か言おうとする研究者達を手で制した武井さんが
「レーザーポインターから想像すると、そうなるかも知れない。
そのレーザーポインターでも、直接目に入ると失明の恐れがある位強いものだよ。
そして、工業用の短波長レーザーなんかは、鉄を切断出来る程強いものなんだ。
だから、各国で兵器転用の研究が盛んな分野でもある」
と言う。
美智子さんは
「取り敢えず、凄いって事ですね」
と答えると、武井さんは
「まあ、今はその認識で良いよ」
と答えて笑っているが、周囲の研究者は、個々に力説をし始めた。
伊坂さんが柏手を打ち、皆が注目した所で
「まずは、神城さんと答え合わせが先だろう」
と言うと、全員の視線が私に集中した。
「超短波レーザーです」
と答えると、研究者達からどよめきが沸いた。
一方、美智子さん達は首を捻っている。
まあ、知らなくて当然だし、原理を説明しろって言われても難しい。
私だって、完全に理解している訳では無い。
それでも理解している範囲で、試行錯誤した末に使える様になったと言うだけだ。
「神城さん。可視光で撃てる?」
と伊島さんが聞くので
「撃てます」
と答えると
「じゃあ、撃って下さい」
と言われたので
「了解」
と返して、構える。
「松永君。スモークを張って」
と伊島さんの声とほぼ同時に、射撃エリア全体を薄い白の煙状のものが覆った。
私はレーザーを連続して撃つ。
射撃空間内に、私の手から的まで青く細い直線が描かれる。
時折、中断の間隔を長くしているので、青い線が途切れる様に描かれる。
「おお、カッコイイ。青い閃光だ」
と千明さんが喜んでいる。
身体能力を
「引換券」
と小声でボソッと呟いた声が聞こえた。
隣にいた都さんが郁代さんの方を向いて
「ん? 何か言った?」
と聞くと
「な、なんでも無いよ」
と慌てた様に答えていた。
ある程度撃った所で止めると、千明さんは伊島さんに近づき
「私も使える様になるかな?」
と聞く。
伊島さんは
「習得難度は高いですが、可能です。
明日から頑張りましょう」
と言われ、千明さんは
「よーし。頑張るぞー」
と気合を入れていた。
戸神さん達や研究者達は、微笑ましいものを見る様な感じになっている。
「ところで、戸神さん達がここに来たのは、見学のためですか?」
と問うと
「いえ、時間なので迎えに来たのですが、過ぎてしまいましたね」
と言って笑っている。
「分かりました。コレで終わりにします」
と言って再び構え、様々な爆撃が的のある空間を埋め尽くした。
すぐに様々な警報がなった。
射座を出て、美智子さん達が居る場所に行くと
「さて終わりです。寮に戻りますよ」
と声を掛ける。
美智子さん達は、あまりの出来事に唖然とした表情で立ち尽くし、研究者は慌てふためいている。
戸神さん達は、苦笑いをしている。
戸神さんが
「良いのですが、あんな大規模攻撃を披露して?」
と言うので
「今更ですよ。
私の
と答えると、顔を真っ青にし
「あ! 済みません。
つい普段通りの対応をしてしまいました」
と言って、頭を下げた。
軽いため息をついてから松永さんの方を向いて
「魔力貯蔵庫の容量はどうです?」
と聞くと、慌てて確認し
「満タンになっている」
と返ってきた。
「じゃあ、今日はこれで失礼します」
と言うと
「ありがとう。この魔力を使って強化しておくよ」
と返ってきた。
「ほら、行きますよ」
と美智子さん達に声を掛け、軽く揺すると曖昧に返事した。
まだ、心ここにあらず状態の彼女達を連れて、寮に戻るのだった。
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