第249話 1年次夏期集中訓練 1日目(12)
「剣の長さも長過ぎです。
もっと短くしないと、剣の折り伸ばし時に必要な空間的制約が大きい。
剣の幅も広すぎるので、もっと細身の剣にしても良いと思います」
と言うと、山本さんは
「それは、身に沁みて理解した。
あの長さでも十分扱えると思ったが、剣速を上げると振り回される結果になった。
軽量化は必須だ」
と返した。
伊坂さんが
「改良点も分かったから、そろそろ行こうか」
と言うので、高エネルギー射撃室に向かう事にする。
移動中に
「
と言うと
「それだと、近接戦闘が弱い。
あと、あまり武器の持ち替えをしたくない」
と返ってきた。
高エネルギー射撃室には、松永さんの他にも多数の研究者達が居る。
その中には、先程の3人の研究者も混ざっていた。
山本さんは、真っ直ぐその3人の元に向かった。
松永さんは、すぐに設備の稼働とモニタリングを指示する。
設備が稼働を開始を始め、使用可能状態になる。
射座に立ち、構えてから連射で的を撃つ。
計測機器が警告音を上げる。
周りの研究者も、伊坂さんも、山本さんも、私が何をしているか気づかなかった。
慌てて計器を確認する研究員達。
的に穴が開いたので、攻撃を止める。
私が攻撃を止めた事に疑問を持った研究員達が、的を注視していた。
その中の1人が
「あ、的に穴が開いている」
と大声を出し、的に向け走りだした。
その声に反応した研究者達も一斉に走った。
そして的の前でガヤガヤと検証を始めた。
松永さんが
「検証は後回し。的の交換をしろ」
と指示をだす。
2人の研究者が、穴の空いた的を外す。
別の2人の研究者が、新しい的を持ってきて取り付けた。
松永さんから
「神城さん。同じ攻撃をもう一度お願いします」
と言われた。
私が構えると、研究者達と伊坂さん達に緊張が走る。
同じ様に的を連続で撃つ。
そして、警報が鳴り、的に穴が開く。
松永さんが、指示を出して的を交換させる。
松永さんから
「もう一度、お願いします」
と指示が来たので、同じ様にして的に穴を開ける。
的が交換される間に、聞こえてきた声には
「測定結果は、どうなっている?」
「同じ場所に、連続で着弾した結果が残っている」
「何故見えないのだ?」
「純粋に、弾速が早いからではないか?」
「発射から着弾までの計測時間は?」
「ちょっと待て、計測結果がおかしいぞ」
「何がおかしい?」
「千分台の誤差も無く同じだぞ。誤差を考慮しても、ありえんだろう」
等々の議論が聞こえる。
再び松永さんから、同じ攻撃を依頼された。
再び構えた所で、高エネルギー射撃室の扉が開き、戸神さんを先頭に伊島さん達と美智子さん達が入ってきた。
彼女達が入りきった所で警報が鳴った為、美智子さん達は何事か分からず、慌てている。
誰の指示も無く、的の交換が行われている。
戸神さんは、近くに居た研究者に
「どの様な状況ですか?」
と聞くと
「神城さんの攻撃は、新型の耐魔力装甲材で作った的を簡単に穴を空けています。
しかも、連続で攻撃しているにも関わらず、我々には全く見えないし、短時間で穴を空けられる事態だ。
発射から着弾までの時間が同じと言う謎のおまけ付きだ」
と言って、お手上げポーズを取る。
伊島さんは、松永さんの側に行き。
「状況は聞きました。
取り敢えず、我々も見てみましょう」
と伊島さんが言うと、松永さんは
「分かりました。一緒に確認して下さい」
と返し、私に合図を出す。
私が構えると、伊島さんの顔付きが変わった。
美智子さん達も、見逃さない様に見つめている。
そして私が撃ち、警報がなり的に穴が開いた。
美智子さん達は状況を理解出来ず、キョロキョロしている。
「なるほど。確かに見えませんでしたね」
と伊島さんが言うと戸神さんが
「魔力の残滓から、直線的に飛んだ事が分かる位ですね」
と続けた。
「やはり、超高速で飛んでいると思うのだが。
衝撃波が無いところを見るに、質量が物凄く小さいか、ほぼ無いと考えた方が良いだろう」
と伊島さんが返す。
「凄い。あれだけでそんな事が分かるんだ」
と郁代さんが言うと
「どの位の速度で飛んだんだろう?銃の弾より早いのかな?」
と千明さんが言うと、武井さんが
「銃弾の速度だと遅すぎるよ。
少なくとも音速の10倍は、出ていると思う」
と答えると、美智子さんが
「音速の10倍! 早い!」
と驚きの声を上げると、照山さんが
「最低10倍。それ以上かもよ」
と修正する。
4人は、絶句した。
そんな中、何かを思いついた都さんが
「それ程の速度で動いたら、大変な事になりませんか?」
と疑問を呈する。
伊島さんは
「その通り。
音速を超えた速度で物体が動けば、それ相応の衝撃波が出る。
火や風の
だから、衝撃波が発生しない程、質量が小さいか無視出来る位の大きさだと仮定すると、空気抵抗で的まで維持出来ないと思う。
的を破壊する程の威力が有りながら、質量を無視出来る物体って有ったかな?」
と返すと、周りの研究者達と一緒に考え込んだ。
何故か、美智子さん達も一緒に考え始め、お互いの考えを言い合っている。
誰も、私に答えを聞くと言う事をしない。
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