第102話 資源ダンジョンから戻って(1)

 普段通り起きたが、物凄く眠い。

 昨夜、訓練所に着いた時には、23時を過ぎていた。

 荷物を降ろして、寮に戻った時、まだ寮監さんが起きて待っていてくれたから、部屋に戻ることが出来た。

 もし、閉まっていたら、研究所の宿泊施設の方に泊まるつもりだった。

 その日は、歯を磨いて、顔を洗ってから直ぐ寝てしまった。

 そのせいで、髪の毛が爆発している。


 シャワーを浴びた後、普段より丁寧に髪を梳く。

 まだ、少しハネているが仕方ない。


 保存食で、朝食を済ましてから、教導隊隊舎へ行く。

 普段なら誰か護衛役が居るのだが、今日は居なかった。

 これは、予測された事なので驚かなかった。


 隊舎の備品室に行くと、山奈さんと黒崎さんが、装備をメンテナンスしている。

 私もそれに倣って、自分が使った装備をメンテナンスする。


 自分の分が終わると、此処に居ない3人の分の装備もメンテナンスする。

 3人共、訓練所に戻るなり、医療チームに連れて行かれた。

 帰りの車の中で、太和さんが伊坂さんに報告していたからだと思う。


 回収品は、そのまま研究所に持っていかれたので此処には無い。


 深夜にも関わらず出迎えた研究所職員は、20人を超えていた。

 山奈さんと黒崎さんの武器と回収品で満載の土の台車ごと載せたトラックが着くと、大騒ぎしながら運搬に使った土の台車ごと降ろして持っていった。

 バックパックに入れていた魔石類も、目聡く見つけられて持っていかれた。


 そのまま、研究室に持ち込んで、調査研究してないよね。

 せめて、目録位作っていると思う。

 思いたい。



 装備をメンテナンス後、山奈さんと黒崎さんの壮絶なジャンケンの末、山奈さんが報告書を作成している。

 山奈さんが報告書を書いている間に、黒崎さんと一緒に新たに見つかったダンジョンの地図を作成していた。

 地図の作成方法は、私の技能スキルでダンジョンの地図を再現し、それを紙の上に写しとる方法だ。

 技能スキルで再現された地図は、私にしか見えないから、私が紙に写している。

 写し方は、地図を俯瞰ふかんにして、A3用紙数枚分に収まる縮尺にしてから、紙に重ねて、境界線を書き写しているだけだ。

 黒崎さんは、何をしているかと言うと、用紙を継ぎ足したり、回収したり、要所要所にコメントを記載している。

 お昼頃には、精度は荒いけど、一応ダンジョンの地図が出来た。

 山奈さんも、一通り終わったので、午後に伊坂さんの所に報告に行く事になった。


 お昼休み後、黒崎さんを引きずって行く山奈さんと一緒に伊坂さんが待っている会議室に行く。


 会議室に入ると、伊坂さんと三上さんが待っていた。

 会議室の席に着いてから、山奈さんが資源ダンジョンの報告を行っている。

 報告書や資料等をプロジェクターに写しながら説明をしている。

 軍隊アーミータラテクトが居たダンジョンの地図も表示している。

 これは、私が紙に書いた物をスキャナーで取り込んだ物である。


 報告が一通り終わると

 伊坂「ご苦労さまでした。

 太和君達からも一応話を聞いていたが、大物が出たな。

 君達のお陰で、被害を未然に防げた。


 ところで、神城さん、女王クイーンと戦ってみてどうだった?」


「はい、女王クイーンはとても硬かったです。

 80%の力で殴っても、ひび一つ入りませんでした。

 オリハルコン製の短剣でも、眼は切れましたが、外殻は数cmしか切れませんでした。

 でも、節は切る事が出来ました。

 あと、頭が良かったです。」


 伊坂「まあ、一応ランクSの魔物だしね。

 純粋な物理防御力なら、ランクS3以上と言われているから、神城さんの拳でも砕けなくても仕方ないよ。

 しかし、オリハルコンの短剣でも、外殻を破壊できないとは、厄介な魔物だ。


 報告書には、詳細な戦闘経過は書かれていない。

 どうやって倒しだんだ?」


女王クイーンタラテクトの前足2本残して、切り落として、右眼を全部潰して動きを制限しました。

 その後、破壊光線を正面から防いだあと、陽電子砲ポジトロン・キャノンを頭部にぶつけて吹き飛ばしました。」


 相当、頭が痛そうな伊坂さんが

「不穏な言葉が出たんだが。

 どうやって、破壊光線を正面から防いたんだ?

 陽電子砲ポジトロン・キャノンとはなんだ?」


「破壊光線は、女王クイーンタラテクトの方に向かって、円錐形の魔力結界を100枚位多重に張って逸しました。

 陽電子砲ポジトロン・キャノンは、重力と高電圧をプラズマボールに掛ける事で、強制的に陽電子で満たしたプラズマボール作成し、対象にぶつける事で陽電子を散布、周囲の電子と対消滅するエネルギーで、周辺を破壊する技能スキルです。」


「魔力結界を避弾経始ひだんけいしと多層構造で防御力を上げた事で可能にしたんだな。

 これなら、破壊光線を防げた事も理解できるが、陽電子砲ポジトロン・キャノンなんて物騒極まわりない技能スキルを教えた馬鹿は、何処の馬鹿研究者だ。

 神城、教えてくれるかな?」

 陽電子砲ポジトロン・キャノンのあたりから、三上さんに青筋が浮かび上がった。


「えーと、工廠に居た研究者の人達です。」


「そうか、馬鹿研究者の入れ知恵が役に立ったことは良いが、後で事情聴取が必要だな。」

 なんだか、凄い事になりそうだけど、頑張って生きてください。


 伊坂「他にも習っているのかな?」


「えーと、攻撃用のなら、

 火炎弾ファイヤー・バレット

 氷弾アイス・バレッド

 石弾ストーン・バレッド

 レーザー砲

 空圧砲エアキャノン

 裂炎球バースト・フレア

 火炎旋風フレアトルネード

 荷電粒子砲エレクトロン・キャノン

 陽電子砲ポジトロン・キャノン

 電離気体球プラズマ・ボール

 電離気体刃プラズマ・カッター

 超電磁砲レールガン

 水刃ウオーター・カッター

 位かな」


 黒崎「あと、極低温ショットブラスト」


 三上「どれもこれも、超難度複合技能スキルばっかりじゃないか。」

 手を顔に当て、天を仰いでいる。


「超難度複合技能スキル?」


 三上「ああ、理論上、能力アビリティで再現可能だが、複数の能力アビリティや膨大な魔力が必要な上、制御が極めて困難な為、再現不可能と言われる技能スキルの事だ。

 いくつかは、複数人で実行可能なんだが、実戦で使えるレベルで威力を出した事例は、今回の2つだけだ。」


「2つ?」


 三上「極低温ショットブラストと陽電子砲ポジトロン・キャノンの2つだ。

 しかも、極低温ショットブラストは、2例もある。」


「2例?」


 三上「神城が行ったものと、戸神・霜月が行ったものだ。」


「え?」


 三上「なんだ、聞いていなかったのか?

 あの二人が、魔力過負荷マナ・オーバーロードになったのは、将軍ジェネラル戦で、極低温ショットブラストを使った結果だ。

 ついでに言うと太和は、将軍ジェネラル相手に単独で時間稼ぎと止めの一撃の反動損傷フィードバック・ダメージで死にかけた。

 全くもって、無茶をしおってからに。」


 伊坂「通常、将軍ジェネラル女王クイーンと戦う場合、前衛50人以上と束縛系の能力アビリティで動きを牽制してから、後衛200人以上が徹底的に火攻めにする。

 外殻が赤くなるまで熱した後に、大量の水や冷却系の能力アビリティで急速冷却を行って、外殻を破壊するんだ。

 外殻が脆くなってしまえば、いくらでも戦い様があるからね。


 ただね、将軍ジェネラルがランクA、女王クイーンがランクSと高ランク魔物だから、耐久力も物凄く高くて、討伐まで2週間以上掛かる事も珍しくない。


 それを、ランクB3人で将軍ジェネラルを短時間で倒してしまったんだ。

 それはそれで凄いことなんだけど、その結果、暫くの間休養が必要になった。

 本来なら、全滅してもおかしくない状況で生き残ったんだから良しとしないといけない。」

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