第103話 資源ダンジョンから戻って(2)

 三上「安心しろ、3人共、体に異常は無い。

 精密検査が終われば、退院するが2週間は安静にしてもらう」


 伊坂「3人が復帰するまでの間、神城さんの護衛役に山奈君と黒崎君に着いてもらう。

 明日は3人と山奈君と黒崎君にも出てもらう」


「明日?」、何か有ったけ?


 黒崎さんがため息交じりに「卒業式」と呟く。


「あ、そうだった」


 三上「濃い日々を過ごしていたからと言って、日常を忘れてはダメだぞ」


 伊坂「うちに馴染むのは良い事ですが、もう少し、年齢相応の事もさせないとまずいですね。

 このままだと、世間知らずになりそうです。

 なにか対策を考えないと」


 三上「氷室や若桜達も交えて検討した方が良いだろう。

 基本方針を決めた後に、訓練校と中部機動戦略隊に伝えるしか無いだろう」


 伊坂「そうですね。

 この案件は、後日に回しましょう。


 この後の予定を伝えます。

 山奈君と黒崎君と共に研究所で、回収物の確認をして下さい。

 その後は、三上さんの指示に従って下さい。


 明日は、訓練所から中学校に通学して卒業式に参加してください。

 明日、明後日は、休養日としますので、ご自宅で過ごして下さい。

 いつもの事ですが、外出が必要な場合は、事前に連絡をして護衛を伴って行動してください。

 その際、護衛官は山奈君と黒崎君を着けます。

 その後は、訓練所に戻って貰って、訓練校入学に伴う事務処理と任務等の説明を行います。

 以上です」


 三上「それじゃ、行くぞ」


 三上さんを先頭に研究所の倉庫に移動する。

 そこには、回収品が置いてあった。

 分別されて置いてあるのいは良いが、女王クイーンタラテクトの外殻で立像が組み上げられている最中だった。


 回収する時に、外殻をバラバラにして剥ぎ取ったとはいえ、外殻を切断出来なかったので、繋ぎ目でバラバラにしていた。

 床には、各部位毎に集められて繋ぎ目に沿って、何処と何処が繋がるか検証をしている。

 検証が終わり、組合せが分かったものから立体化されている。

 立像の完成度で言えば、30%位と思う。


 三上「流石に、呆れるよな。

 昨夜、回収された物を見た連中が、推定女王クイーンタラテクトの外殻がほぼ一体分揃っているのに気付いてな。

 そのまま、分別、洗浄、配置して、立像を組み始めんだんだ。

 入れ代わり立ち代わりで、作業しているから、恐ろしい速さで作業が進んでいる。

 それで、この外殻は女王クイーンタラテクトで有ってるか?」


「はい、合ってます」


 三上「今、聞いた通り、そいつは女王クイーンタラテクトの外殻だ。

 ただし、頭部を吹き飛ばして討伐しているから、頭部の残骸は殆ど無いと思って作業しろ」


『えー、頭部ないのかー』

『無いものは仕方ない。他の部位が揃っているだけでも貴重だ』

『ひょっとしたら、残骸が多少なりとも在るかもしれない。もう一度台車を確認するぞ』

『トラックの荷台も確認しに行ぞ。誰か来てくれ。欠片探しだ』

 それを聞いた研究員達のやる気が一気に跳ね上がった。


 三上「色々と言いたいだろうが、コイツラは放っといて、回収品の目録と現物の確認をしたい」

 そう言って、回収物の一覧が書かれた紙を渡された。

 山奈さんと黒崎さんと共に、一覧の内容と現物を確認する。


 改めて確認すると、結構な量を回収していた。

 確認作業だけで、2時間も掛かるとは思ってもみなかった。


 三上「お疲れ様。

 さすがに、台車1台分もあれば結構な時間がかかったな」


「回収している時には、コレほどの量になっていると思いませんでした」


 黒崎「台車に詰めるだけ詰めたから、見た目以上に詰まっていた」


 三上「おかげで、貴重な素材が多数手に入ったんだからな。

 特に、劣化の無い女王クイーンタラテクトの外殻は貴重だ。

 高位の魔物の素材は、普段ならボロボロの状態で持ち込まれるからな」


「そうなんですか?」


 山奈「高位の魔物討伐の場合、囲んで弱点属性で袋叩きが基本だからね。

 どうしても、素材が駄目になっちゃう感じ」


 黒崎「討伐第一だからしかたない」


 三上「女王クイーンタラテクトは、10年振りぐらいに持ち込まれたかな。

 タラテクトは、滅多に軍隊化しない。

 その分、軍隊アーミー化後のスタンピードの発生確率は、非常に高い。

 だから、軍隊アーミー化の兆候がでたら、即殲滅が必須の魔物だ」


「確かに、あんなのが住宅街に出たらと思うと、ゾッとします」


 三上「簡単に街の1つや2つが消えるぞ。最悪、国も消える」


「うわー、さっさと退治できてよかった」


 三上「その通りだ。

 一方、軍隊アーミースパイダーは、軍隊化しても滅多にスタンピードを起こさないが、一旦スタンピードを起こすと、軍隊アーミータラテクトより始末が悪い。

 アイツラは、小さいものは手のひらサイズ、大きいものでも猫ぐらいの大きさくらいしかない。

 しかし、騎士ナイト以上のスパイダーの外殻は、アサルトライフルの弾を弾く。

 それが、数万から数千万体が群れで襲ってくるんだ」


 視界に一杯に、数え切れない蜘蛛の群れが、襲ってくる光景を想像して、悪寒が走った。


 三上「少々退治しても意味がない、隠密性は高いし動きも速いから、探索して討伐では追いつかない。

 だから、その地域まとめて焼き払う必要が出てくる。

 どちらにしろ、軍隊アーミー化現象を持つ魔物は、軍隊アーミー化の兆候が出た時点で殲滅するしかない。

 そういう訳で、軍隊アーミー化後の魔物素材で、状態が良いものは滅多に無いんだ。

 だから、あそこではしゃいでいる連中も、大目に見てやって欲しい」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る