第64話 示威作戦 事前訓練(3)

 KU-02をガンラックに戻しながら

 高橋「リコイルも少なく、扱いやすいな。」


 深山「お褒めに預かり光栄です。」


 高橋「ところで、セレクターにバースト(3点射)が無いのは何故だ?」


 深山「それは、技術的問題です。」


 高橋「技術的?」


 深山「はい、これらの破壊小銃ブラスター・ライフルには、自己誘導式の魔力共鳴増幅器を使用しています。

 その為、発射機構に圧縮共振器で使用しているシャッター方式が使えません。

 代わりに、物理的に接続、切断を行っています。

 連射機能も、機械的スイッチにて行っています。

 ここまでなら、何も問題がなかったのですが、神城さんの魔力量・伝搬量に耐えられる接点容量を持つ開閉器では、秒間3発までしか高速化出来ませんでした。

 連射でも秒間3発なら、バースト射撃を設定しても意味がありません。

 むしろ、余計な機構を入れることで故障の原因になる方が問題という事で、セレクターにバーストを設定していません。」


 高橋「そうか、分かった。

 話は変わるが、そこで布を被っている小銃ライフルはなんだ?」


 深山「これは、一般隊員向けの試作品で、検証用です。

 神城さんが破壊小銃ブラスターライフルの訓練中に検証しようと思って持ってきた物です。」

 そう言って、布を取り払った。


 高橋「20式5.56mm小銃にいまるしき5.56ミリしょうじゅう?」


 深山「実弾と魔力弾を打ち分ける事が出来る試作品です。

 魔力弾は、E1~C1までの20段階で調整可能になっています。

 機構的に撃てるだけで、実用に足るのかを検証する必要があります。」


 伊坂「それは、この間、三上君が言っていた奴か?」


 深山「その通りです。

 既存の銃機関部に破壊小銃ブラスターライフル機関部を組込んだ物です。

 神城さん専用破壊小銃ブラスターライフル開発の際の不適合品で作っています。

 不適合品と言っても、神城さん専用機には性能不足でしたが通常の破壊砲ブラスターキャノンに載せても問題無いレベルの物です。

 ただ、見ての通り部品が外付けの検証用です。


 これとは別に、一般隊員向けの破壊小銃ブラスターライフル試作品も持ってきています。

 神城さんの物と区別するために、銃床部は黄色になっています。

 こちらには、圧縮共振器と畜魔器を用いて連射を行っていますので、バースト射撃(3点射)設定があります。」


 後ろに控えていた別の研究者が、私専用に開発された破壊小銃ブラスターライフルと同じ形で銃床が黄色に塗られた小銃ライフルが載ったガンラックを持ってきた。


 深山「こちらも魔力弾をE1~C1までの20段階で調整可能になっています。

 よろしければ使ってみてください。


 本当は色々と説明したい所ですが、時間が有りませんので此処までにします。」


 高橋「その通りだな。とりあえず、KU-01から撃ってみようか。」


 まず、伏撃ちで3種類を撃った後、膝撃ちの射撃姿勢を習い3種類の破壊小銃ブラスターライフルを持ち替えながらひたすら撃つ。

 50m先にあるまとには、なかなか当たらないけど少しずつ収束してきている。

 高橋さんに指導受けながら3時間、なんとかまとに当たる様になってきた。

 まとに当たるようになっただけで、まとの中心付近にはあまり当たらなった。

 私が指導を受けている間に、伊坂さんと篠本さんは途中で射撃場から出て行き、他の人達は、一般隊員向けの破壊小銃ブラスターライフル試作品を撃っていた。

 太和さんが、20式5.56mm小銃にいまるしき5.56ミリしょうじゅう改持ち出し、実弾を撃とうとしたが戸神さんに止められていた。

 結局、魔力弾のみ撃っていた。


 訓練を一旦終了して休憩後、戦闘服を身に着けて示威作戦の下見の準備をして待機している。


 10時45分に伊坂さん達が戻ってきた。

 伊坂さん達4人と一緒に射撃場を出入り口から出ると、グランドに着陸しているヘリコプターに乗り込む。


 まず上空から演習島に設置されたまとと観客席の位置、自分がどの様に行動するのかの説明を聞いた後、演習島に降りて実際のまとを前にしてどの様に破壊するのかを確認する。

 まとは、2m四方の超強度コンクリートの立方体が多数設置してある。


 確認が終わり、研修島に戻って昼食を取る。

 昼食を食べながら、予行練習の確認を行った後

 伊坂「神代さんの射撃訓練はどうですか?」


 高橋「午前中の訓練で、膝撃ち状態で50m先の的枠まとわくに収まるようになってきました。このまま訓練を続ければ、今回の作戦に必要な練度には足ると思います。」


 伊坂「そうですか、神城さんは、射撃訓練をどう感じましたか?」


まとも小さくて狙いづらいし、僅かなズレで当たらないから大変です。」


 伊坂「まとが小さくて狙いづらいですか。

 彼女が使っていた破壊小銃ブラスターライフル光学照準器スコープを装備していましたか?」


 高橋「いえ、装備してませんでした。」


 伊坂「神代さん、あなたは遠見とおみを使っていましたか?」


「トオミ?」


 伊坂「使っていない状態で、照門で照準を合わせていたとは。

 それで、500mm角の的に当てているとは・・・」


 伊坂さんだけではなく、幹部用食堂に居る全員が呆れた様子だった。


「トオミってなんですか?」


 伊坂「遠見とおみは、目に魔力を宿すことで視力を強化して遠くを見やすくする方法ですよ。望遠鏡や双眼鏡の様に任意の距離を拡大できるので対魔庁の隊員が射撃の際に良く使っています。

 遠見とおみが使えない人やより精度が必要な射撃の際は、光学照準器スコープを使います。

 魔力の通し方次第では、暗視効果も得られますから習得する事を勧めます。

 高橋君、時間がある時にでも教えてあげてください。」


 高橋「了解しました。

 しかし、基本的な身体強化技法を知らなかったとは思わなかった。」


 伊坂「彼女は、まだ訓練校に通っていませんから習っていないんですよ。

 なので、基礎の基礎から教えるつもりでお願いします。」


 高橋「了解しました。」


 食後は、高橋さんから遠見とおみの技法を習って過ごした。


 午後の予行練習の時間になった。

 伊坂さんと篠本さんは、ヘリコプターに乗って演習島上空の監督位置に移動中、私と高橋さん中之さんが研修島の飛行場で待機している。


 演習島上空には、伊坂さん達が乗っているヘリコプターを含めて3機、ドローンが10機がそれぞれの場所に移動もしくは待機中だ。


 準備が完了したとの無線が入ったので地面を蹴り、空を翔けて最大速度で演習島に向かう。

 演習島の作戦開始位置に着陸後、シナリオ通りに移動、攻撃(まとを破壊しないように形だけ)を繰り返す。

 一通り動作が終わり、最後に破壊テスト用の2つのまとの前に移動する。

 1つ目のまとを50%の力で、魔力を載せた拳で粉砕。

 2つ目のまと破壊小銃ブラスターライフルで単発で10発、連射で10発撃ち込んでまとを穴だらけにした後、擲弾グレネードを撃ち込んで粉砕した。


 その後は、再び空を翔けて研修島の飛行場に着地し、厚生棟3階の会議室で待機している。

 伊坂さん達が戻って来るまで、暗視の技法を習っていた。

 戦闘服は、既に脱いで開発室の人に渡しました。


 伊坂さんが戻って来たので、予行の結果を聞いた。

 問題はなかったが、移動開始前後に僅かな溜めをつける事と飛翔経路が変更になった。これらは、撮影の見栄えを良くするための変更だそうだ。


 私と高橋さんは、この後射撃訓練に戻るが、伊坂さん達は、撮影班と警備班の体制を見直すそうだ。


 屋内射撃場に戻り、夕食時間まで射撃訓練を続けました。

 夕食後は、雛元さんと山下さんから火器類の取り扱い教育を受けて今日は終了。

 部屋に帰り、シャワーを浴びてから寝る準備を完了させる。


 今日一日、部屋に放置していたスマホを確認すると、メッセージが入っていた。

 章と零士からだった。

 内容は、クラスメイトと文化祭の打ち上げだった。

 メッセージに上がっていた写真は、ボリュームが多いことで有名な喫茶店の店内で笑顔でふざけているクラスメイト達だった。

 能力に目覚めなければ、私もそこに居て章と零士に振り回される日々のままだっただろう。

 今はちょっと疎遠になってしまった友人達の笑顔を見て悲しくなった。

 でも、能力に目覚めたから彼らの笑顔を護る事が出来る立場になった。

 疎遠になってしまったことは悲しいけど、彼らの笑顔を護る為には戦争を回避する必要がある。

 明日の作戦行動如何いかんで結果が変わる。

 敵性国家が、侵攻を諦める様に派手に力を使おう。

 明日の作戦行動開始時間10時00分まで、しっかりと射撃訓練をしようと決意をして眠るのだった。

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