第63話 示威作戦 事前訓練(2)

 宿舎の上階にある小さい会議室で色々と教えてもらって分かった。

 まず、自分達の居る研修島と演習島は、メガフロートによる人口浮島で、既存のメガフロートより高い耐久性と低コストを非金属で実現するための実証実験施設であり、今も検証と改良が加えられている。

 なんでも、塩害対策に藻や貝等の海洋生物対策や潮力対策等の課題を克服の為の研究が行われている。


 研修島の主要施設は、4,000mの滑走路を持つ空港、大型船舶も泊まれる港、研究開発エリア、研修場エリアの4箇所である。

 空港と港を除くと研修場が一番場所を取っている事から研修島と呼ばれている。


 研修場は、講義とかを行う研修棟が1棟、サッカーフィールド(105m×68m)が4面入るグランドが2つ、サッカーフィールド1面が入り高さが16m有る屋内運動場が1つ、屋外射撃場と屋内射撃場が1つずつ、あと宿泊施設がある。


 宿泊施設は、一度に2千4百人収容可能な一般隊員用と指揮官・幹部用の2種類があり、今居るのが指揮官・幹部用宿舎で30部屋ある。

 各部屋は、風呂トイレ付きの1LDKでそれなりに広い。

 棟の上層には、会議室とラウンジが設置されている。

 また、指揮官・幹部用宿舎の周囲は高い塀で囲まれている為、容易に内外を往来出来ない様になっている。


 一般隊員用は、1部屋に2段ベットが4台設置されただけであり、トイレ・洗面台は各階共有スペースに設置されているものを利用する。

 1階に20部屋の5階建の建物が3棟立っている。


 食堂とお風呂は、同一の建物内に有った様で、1階が風呂、2階が一般隊員向け食堂、3階が指揮官・幹部専用食堂になっていた。


 指揮官・幹部用宿舎、研修棟、厚生棟、一般隊員向け宿舎と並んでおり、食堂に行くには研修棟の一部を通るのだが、専用通路になっているので隔離されている。

 他にも、専用の地下通路もあり、屋内運動場、屋内射撃場にも外部を通ること無く行くことが出来るらしい。


 何故、この様な作りになっているかと言うと、要人警護や隔離保護が必要な場合も利用されるからであり、学校に通う為、候補から外れたそうだが私の保護先の候補の一つでも有ったそうだ。


 研修島は、対魔庁の部隊のみならず、訓練校の生徒の能力試験にも使われるため、意外と稼働率は高いそうだ。


 演習島は、文字通り演習を行うた場所で、1.5km四方に平地や丘が作られている。

 戦闘に耐えられる様に非常に強固に作られているらしい。

 今回の作戦で、破壊しても構わないと許可が下りているらしく、山下さんから『思いっきりやって、盛大に壊してください。』と言われている。


 研修島と演習島の配置と作戦内容を理解した所で本日の課題は終わり、与えられた部屋に戻ってきた。


 部屋のお風呂に入って、寝る準備している時にスマホにメッセージが入っているのに気づいた。

 寝る準備を完了させてからメッセージを確認すると、家族と幼なじみ達からだった。

 内容は文化祭の写真で、全ての被写体が私で、母さんと舞と零士と章の4人から合計52枚も上がっている。一体、何時撮ったのだろう?

 4人で品評会を行っているようで、『かわいい』と『やばい』と『マジお姫様』が連呼されている。

 私は、そーと画面を閉じた。

 うん、見なかった事にしよう。

 そのままベットに潜り込むと、早々に寝た。


 普段通りに起きて朝のルーティンを熟して、作業服に着替えて雛元さん達4人と合流してからロビーに降りる。

 太和さんと戸神さんと合流し、食堂に移動する。

 先頭に戸神さん、殿は太和さん、前後を植松さんと望月さん、左右を雛本さんと山下さんが囲んで移動する。

 厳重な護衛体勢は、私が此処に居る事への対策の一環で、対外的一般隊員には特殊な能力に目覚めた少女を一時的に隔離保護し能力の検証を行っている事になっている。

 この様に告知しておいても、突っかかってくる馬鹿な隊員も居るそうで、過去に幹部専用エリアに突撃してきた下級下士官も居たそうだ。

 だから、護衛の皆さんは警戒している。


 守護者として行動する時は、中之さんと高橋さんが付き添う事になっている。


 食堂に着くと、伊坂さん、篠本さん、中之さん、高橋さんの4人が朝食を食べていた。

 山下さんに連れられて壁際に置いてあるタブレットの元に行く。

 タブレットには、朝食のメニューが表示されていて、主食、主菜、副菜を選ぶ形式になっており、主菜はご飯とトースト、主菜は、焼き魚(鮭)とスクランブルエッグとハムエッグ、副菜は、味噌汁、海苔、納豆、漬物、サラダ、ゆで卵だった。

 私は、ご飯、味噌汁、焼き魚(鮭)を選んだ。

 他の人達も、順番に選んでいく。

 暫くすると、タブレットの側にある食品用エレベーターにトレイに乗った朝食が運ばれてきた。

 トレイを受け取り、席に着き朝食をいただく。

 他の人達も、朝食の載ったトレイを手に席について食べる。

 そんな中、大和さんのトレイだけは、色々と山盛り状態になっていて、盛々と食べている。

 ちょっと引いていると、山下さんから「現役の男性隊員ならあの位食べる人は結構居ますよ。」言われてビックリした。

 下の一般隊員向け食堂の方は、朝昼晩共ビュッフェ形式になっているので自分で調整できる仕様だそうだ。

 食器を下げる時は、エレベーターを呼んで、トレイを載せてば良いそうだ。

 ちなみに、一番最初に食べ始めた私が食べ終わるのが一番最後になりました。


 厚生棟にあるエレベーターから地下通路まで下りて移動する。

 エレベーターは共用だが、地下通路に行くには登録者で無いと入れないそうだ。

 あと、幹部専用エリアも同様に登録者で無いと入れない。


 地下通路を使って、屋内射撃場に移動する。

 屋内射撃場には、伊坂さん達と開発室の水嶋さん達が待っていた。


 挨拶もそこそこに破壊小銃ブラスターライフルの開発責任者である深山みやま 総司そうじさんがガンラックの前で説明を始めた。

 深山「今回は、反動が少なく、命中精度の高い形状という要望を受けてブルパップ式のデザインを3種類用意しました。

 本来なら、使用者に合わせて1からデザインを起こすべきなのですが、開発期間が短すぎた為、既存のブルパップ式小銃ライフルのデザインを元に開発しました。

 まず、イギリスのL85A3のデザインを踏襲したKU-01。

 オーストリアのステアーAUG A2のデザインを踏襲したKU-02。

 フランスのFA-MASのデザインを踏襲したKU-03。


 この3種類の破壊小銃ブラスターライフルの銃身、機関部は、同一の物を使用している為、性能に差はありません。

 この3種類のデザインの中から、使いやすいものを使用してください。」


 高橋さんは、破壊小銃ブラスターライフルを手に取って

 高橋「見た目以上に軽い。

 マガジンが無いから、随分とスマートね。

 排莢口エジェクトポートも無いから、ショルダースイッチも問題なしと。

 私でも撃てる?」


 深山「当然撃てますよ。

 魔力使用量は、破壊砲ブラスターキャノンより多少増えた程度です。」


 それを聞いた高橋さんは、KU-02を手に取ると射撃位置まで移動して、立ったまま銃を構えて50m先のまとを狙って撃った。

 狙い通り、まとの中心を射抜くのだった。

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