第94話 資源ダンジョン(5)

 食後、30分程休憩してから、攻略を再開する。

 私の探知には、5層に繋がる大穴の底面を埋め尽くす、タラテクトの群れ。

 その中に、タラテクトより大きい反応が混じっている。

 感じ的に、胴体が大型ドラックを2台並べた位のサイズがありそうだ。


「黒崎さん、向こうの穴底に一際大きいのがありますが、何でしょうか?」


 黒崎「グレータータラテクト」


「ありがとうございます。」


 休憩中も数を増やす、タラテクトとグレータータラテクト。

 ついに壁にも登り始めた。


 太和「そろそろ、限界か?」


 黒崎「相当な数が集まっている。」


 太和「どうする」


「私が殺ります。」


 太和「そうか、任せた。」


 私が、大穴に歩き出すと


 霜月「今までと同じ方法を使うのか?」


「そうです。規模を大きくしてみます。」


 霜月「そうか」

 そう言うと、私の後ろに着いてくる。


 大穴の縁に立ち、照明弾を大穴の天井付近に5個撃ち上げる。

 下を見ると、大小様々な蜘蛛がうごめいて気持ち悪い。

 ガチガチ、ガサガサという音が絶え間なく聞こえる。

 深呼吸をして、心を落ち着かせてから


 自分の足元5m下から大穴一杯に極低温のショットブラストを実行する。

 中央付近に重力球を発生させ、極低温の旋風を球形にして風速を更に上げる。

 すると、内部の研磨剤の動きが不規則になり、殲滅スピードが一気に上がった。


 白い地獄の中の生命反応が全て消えたら重力球を消し、内部の回転と風圧を更に強くしてから、横穴に一気に押し込んだ。

 横穴から感じていた、生命反応が全て消えた。


「太和さん、終わりました。」


 太和「お疲れ様」

 そう言って、大穴を覗いて


 太和「下に降りる足場も無くなったな。」


「作ります。」

 私は、左手を壁に着けて干渉する。

 壁の土は、私の足元から高さ2,000mm、奥行き900mm程の量が、幅1,600mm程のスロープ足場に変わり、壁面に沿って螺旋を描きながら底面まで壁を削った足場に変わっていった。

 太和さんは、ポカーンとスロープが出来るのを見ていた。


 太和「は!よし、進もう。」

 そう言うと先頭に躍り出た。


 霜月「戦闘で使った攻撃方法や土の能力アビリティでの足場作り。

 随分と上手くなったな。」


 「ありがとうございます。」

 霜月さんに褒められた。

 ちょっとうれしい。


 霜月「色々と言いたい事も聴きたい事も有るが、それらは後にしよう。

 戸神も色々聞きたそうにしてるしな。」


 戸神「当然ですよ。既存の戦闘方法から大きく外れた能力アビリティの使い方を眼の前で見て、好奇心が抑えられません。

 後程、色々と聞かせて下さい。」

 戸神さんが、子供の様に目を輝かせて詰め寄ってくる。


「え、あ、はい。」

 タジタジになりながら、そう答えるので精一杯だった。



 大穴の底に降りると、先程の攻撃の余波が残っており、かなり寒い。

 しかし、ダンジョンの不思議な力なのか、数分で元の気温に戻ってしまう。

 変形した地形も戻って良さそうなんだけど、元に戻らないから何でだろう?


 5層の地図を見ながら、私と黒崎さんが探知した結果を示しながら攻略ルート決めて侵攻を開始する。


 通路に現れるのは、無印とグレーターの2種類だけで、散発的にしか襲ってこない、徐々に出現する魔物の比率は、グレータの方が多くなってきた。


 私は、壁の高い所や天井に居るモノを氷や土の能力アビリティを使って、倒すか叩き落として止めを刺す。

 

 太和さんは拳で、山奈さんは戦鎚で、頭を粉砕するか、魔石を外殻ごと粉砕している。


 黒崎さんは、穂に炎を纏わせ、外殻を突き破り、体内から焼き尽す。


 霜月さんは、ジャマダハルで外殻を突き破り、体内に生成した氷柱が体外に何本も飛び出して倒している。


 戸神さんは、炎の槍ファイヤ・ジャベリンで焼き尽くしている。

 火の矢ファイヤー・アロー炎の槍ファイヤ・ジャベリンって、ゲームとかだと比較的低位の魔法なんだけど、実際に能力アビリティでやると、結構難度が高い。

 なぜ、難度が高いかと言うと、矢や槍の形に整形して維持するのが難しい。

 一時的に、形を作るだけならそれ程では無いけど、それを攻撃対象に当てるまで維持するのが難しいのだ。

 これは、明確な質量を持たない為、手元を離れると構成の弱い所から霧散してしまうからだ。

 だから、一般的にはただの棒 になってしまうし、威力なら火の玉ファイヤー・ボールの方が高くなりやすい。

 この状態での利点は、たた連射し易いと言う点だけだ。


 本来の火の矢ファイヤー・アロー炎の槍ファイヤ・ジャベリンは、やじりや穂の先端部に高熱量を集中させて、貫通力を上げている。

 シャフト部分は、エネルギーを供給する燃料タンクなのだ。

 本来の機能を持たせて撃ち出すというのは、火の能力アビリティと魔力操作のレベルが相当高くないと出来ない芸当なのだ。

 しかも、戸神さんの炎の槍ファイヤ・ジャベリンの穂は、青白い色をしている。

 だから、一撃で外殻を貫き、内部から炎を噴き上げて燃え尽きていく。


 4層までの進行速度は出ないが、それでもかなりの速度で攻略して行く。

 6層に入るとグレーターしか出なくなった。


 7層を一通り探索し、ダンジョン・コアのある場所に来た。

 この場所は、通路の途中にある亀裂の奥の小部屋で、畳12畳程度の広さで天井までは3m程度だった。

 入り口となる亀裂は、太和さんが横向きでようやく入れる程度の大きさで、20m以上も進む事で辿り着く場所だった。

 そこの中央に、1m位の球形の魔石が浮いていた。


 太和「これが、ここのダンジョン・コアだ。

 特に変化は無い様に見えるな。

 戸神、何か変わった所は有るか?」


 戸神「魔石も異常がありません。

 魔鉄鉱石も、普通に取れますね。」


「このダンジョンの資源って、魔鉄鉱石ですか?」


 戸神「その通りですよ。

 このダンジョンで取れる魔鉄鉱石からは、非常に上質な魔鋼が作れます。

 我々戦術課の標準装備に、使われています。

 魔鋼製の装備は、貴重品なので地域防衛隊には、配備されていません。

 なので、装備を見れば所属が直ぐ分かります。」


「そうなんですか、知りませんでした。

 ところで、7層は全て周りました?」


 太和「ここで、全てだ。

 単にタラテクトが進化しただけだったのか?」


「まだ、周っていない場所有りましたよ。」


 太和「それは、何処だ」

 そう言うと、地図を取出し、地図を押し付けるように差し出す。


 地図である地点を指し示しながら

「ここです。ここの天井付近に通路が有りました。」


 そこは、7層入り口とダンジョン・コアの部屋から最も遠い場所だった。


 太和「黒崎、お前は気付いたか?」


 黒崎「いいえ、気づきませんでした。」


 太和「黒崎でも気づかなかった場所なら、何かある可能性が高いな。

 よし、これからそこに向かう と言いたい所が、今日の攻略は此処までだ。

 此処で、夜を明かすぞ。」


 時間を確認すると、既に19時を回っていた。

 私は、まだ16時になっていないと思っていたけど、実際はもっと時間が経っていたんだ。

 ダンジョンの中だと、時間感覚がおかしくなるとは聞いていたけど、こういう事だったんだ。

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