第93話 資源ダンジョン(4)

 翌朝、普段通りに起きると他の人は既に起きていた。

 朝のルーティンを熟してから、4人で朝食を食べに行く。

 食堂に入ると、既に太和さんと戸神さんが既に食べていた。

 そして、太和さんの座っている机の横に棒が立て掛けられている。


 太和「おはようさん」


 戸神「おはようございます。」


 太和「先に飯を食ってからだ。」


 黒崎さんが、手をワキワキとしている山奈さんを引きずって、配膳に並んだ。

 それに続いて、私達も配膳に並んで朝食を貰い、太和さん達と同じテーブルに着いて食べる。


 太和「今日は、一気に7層を目指す。しっかりと食べておけよ。」

 そう言うと、山盛りのご飯を掻き込んでいる。


 食後、食器を片付けると山奈さんと黒崎さんは、太和さんが座っていた席の側に立て掛けれていた棒を取った。

 それは、穂が長い槍と頭部が巨大な戦鎚だった。

 どちらの柄も長く、2mを超えている。


 私の後ろに来た太和さんが

 太和「あれが、二人の本来の武器だ。

 山の中や蜘蛛から魔石を取るには不向きだから、予備武器を使っていたんだ。

 それと、これを使え」


 そう言って、先日のダンジョンで見つけたオリハルコン製の短剣を渡された。


 太和「鑑定そのものは、既に終わっている。

 ただ、彼奴等あいつらが色々と研究対象にしていたから、取り寄せるのを渋られたが、三上経由で軍隊アーミー案件と伝えて送らせた。

 今、うち静岡支局教導隊と研究所で所有している武器で、神城の力に耐えられそうな武器は、コレしかないからな。

 済まないが、期待しているぞ。」

 そう言って、頭を乱暴に撫でられた。


 装備を整え、駐屯所の隊員のどよめきの中、ダンジョンに向かう。

 隊員達の話し声から、黒崎さんと山奈さんの武器に注目が集まっているようだ。


 黒崎さんの槍は、穂が大身槍おおみやりと言われる65cmも有るミスリル製の穂を着け、4mのレッドメタル製の柄でこしらえている。


 山奈さんの戦鎚は、総アダマンタイト製で、頭部が300mm角、長さ500mmで、片面が平面、反対側はギザギザの山型になっており、その外見は巨大なミートハンマーだ。

 柄の長さは2.5mもあり、総重量は400Kgを超えている。

 それを、比較的小柄な山奈さんが、片手で振り回す様子は人目を引く。

 いくら、身体強化の能力アビリティ有りきとはいえ、十分驚愕の光景です。


 ちなみに予備武器として使っていた戦鎚は、総魔鋼製で頭部が150mm角、長さ240mmで片方は鳶口とびぐちになっており、柄の長さが2mで、総重量は34kgもある代物です。


 ダンジョンに入り人目が無くなり、外部に声が届かない所で

 太和「これからの予定だが、軍隊アーミータラテクトが誕生し、組織化が済んでいることを前提に行動する。

 機動戦略隊に応援依頼を掛けているが、先遣隊の到着は早くても今日の夕方と予想される。

 本隊に至っては、数日後となるだろう。

 神城を中心とした討伐隊を編成し、討伐開始までの期間は2週間と予想される。


 正直、そこまで待つ必要は無いと判断した。

 その理由は、

 1.軍隊アーミータラテクト側に反撃体制を整えさせない事。

 宰相チャンセラーが居ると、彼奴等は確実に対抗手段を講じてくる。

 蜘蛛だからと言って侮るな、奴らは賢いぞ。

 2.我々が、先遣隊として軍隊アーミータラテクトの個体数を削る事。

 3.神城がこの場に居る事。


 以上の事より、我々の第一目標は、軍隊アーミータラテクトの規模の確認と殲滅だ。

 支配階級が出てきたら、神城が対応しろ。

 それと済まない。

 本来なら、お前の破壊小銃ブラスター・ライフルも取り寄せるべきだったんだが、あれを此処で使うと崩落の可能性が高いので、あえて取り寄せなかった。


 それと、能力アビリティは自由に使ってくれ。

 ただし、必ずひと声かけてから頼むぞ。


 いいか、殲滅が不可能と判断した場合、即時撤退する。

 決して、死に急ぐ行為はするな。

 いいな!

 このまま7層まで一気に雪崩込むぞ。」


 太和さんと山奈さんが先頭に立ち、

 私と戸神さんが、中衛

 黒崎さんと霜月さんが、殿を勤めて駆け抜ける。


 1層では、索敵範囲内に魔物が現れず、2層目入り口の広間に、スモールレッサーとレッサーが合計50体、待ち伏せしている。


「この先の広間に、スモールレッサーとレッサーの反応50あります。

 先制します。」


 太和「おう、ヤレ。」


 広間全体に1mmサイズの氷の塊を万全無く散布してから、広間内に極低温旋風で万遍まんべん無くかき混ぜる。

 広間内の気温が急激に低下する。

 広間内の温度を-196℃まで一気に下げる。

 広間内の全ての物に氷の粒による研磨を受け、砕けた石や砂、魔物の体の欠片が研磨剤に加わる。

 広間内は、照明弾の明かりに照らされて、真っ白に輝きを放つ。


 自分達が、広間に突入する直前に広間内の冷気と研磨剤を、ダンジョンの奥に強烈な勢いで送り出す。


 広間に突入する。

 そこは、30m四方で高さ10mの地面や石が剥き出しの凹凸の激しい広間が、研磨されて磨かれていた。

 大きな石は小さくなっているが、その場に残っている。


 太和「うぉー、寒い。

 すっかり、綺麗になっているじゃないか。

 それにしても、寒い。」

 ダンジョン内は、蜘蛛の魔物が活動しているだけあって、常時24℃前後に保たれている。


 黒崎「魔物の反応無し」


 太和「先に進むぞ」


 ダンジョンの奥に走り進む。

 通路には、凍ったモノ、砕けたモノが散乱している。

「20m先、地上にタラテクト1」


 太和「山奈任せた」


 山奈「はい」

 半分氷漬けのタラテクトを、通り抜け際にハンマーの一閃で粉砕。


 探知範囲に次の広間が入った。

「次の広間、タラテクト10。先制します。」


 太和「おう」


 先程の広間と同じ様に、極低温きょくていおんのショット・ブラストで殲滅して、冷気を奥の通路に押し込んで通路上の魔物も殲滅していく。

 生き残った魔物を、太和さん達が狩る。


 その勢いまま、4層の最奥まで進んだ。

 「次の広間、タラテクト20。先制します。」


 太和「待て、ここは通常攻撃で撃破する。」

 その言葉に従い、広間に突入後、1分程で殲滅完了する。

 部屋の隅に、残骸を寄せ集める。

 全てのタラテクトが1撃で破壊されたが、魔石が無事なモノは一つも無い。


 時刻は、11時30分。

 ダンジョンに突入したのが、朝7時

 既に4時間半経っている。

 ダンジョンは、深い階程広くなるので、どうしても時間が掛かる。

 倒した魔物の数など既に分からない。

 殲滅を目的とした戦闘なので、魔石諸共破壊してきた。

 その分、鎧袖一触がいしゅういっしょくで進めたので、かなりの時間短縮になっている。

 魔石採取の様に丁寧に戦っていたら、3層目を攻略開始した位だろう。


 4層最奥の広間から、5層へと続く通路を覗く。

 そこの先には、直径30m、高さ40mの円筒形の空間が広がっており、底部に4方向に横穴が掘られていた。

 横穴は、4層までの広間の大きさ位ありそうだ。


 太和「丁度切りが良いから、此処で休憩するぞ。

 今の内に飯を食っておけ。」


 各人が、携帯食を取出して昼食を取っている最中


 太和「4層までは、広間と通路に分かれていたが、5層と6層は通路が入り組んだ迷路状になっている。

 どの通路を進んでも、移動距離が異なるだけで下層に続く場所に出る事が可能だ。

 ただ、今回は、殲滅が大前提だ。

 黒崎、神城、索敵頼むぞ。」

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