第92話 資源ダンジョン(3)

 1層目を探索する、

 幅10m、高さ5m位の洞窟状になっており、凸凹でこぼこも多数あって死角もも多い。

 小動物みたいなモノは発見出来たが、魔物も資源も発見する事無く、2層目に突入する。

 しかし、1層目と2層目の境に明確な坂道が存在するとは思わなかった。

 こちらは、少し小さく、幅5m、高さ5m位の大きさだった。


 霜月「1層目に魔物が出ないとは、確かに異常事態だ。」


 戸神「ええ、おかしいですね。」


「そうなんですか?」


 黒崎「1層目は、スモールレッサータラテクトやキラーラットが出る。

 普段は、そいつらが散発的に襲ってくる。」


 2層目と思える広い空間が見えてきた。

「この先の空間に、小型犬位の大きさの蜘蛛型魔物が多数の地面の起伏に潜伏しています。天井付近に大型犬位の大きさの蜘蛛型魔物が27匹居ます。」


 黒崎「地面に潜伏しているのは、スモールレッサータラテクト、天井に居るのはレッサータラテクトです。」


 太和「このまま、広間に入るぞ。

 広間に入ると、一斉に襲ってくるから、各個撃破だ。」


『了解』


「ひぃぃぃーーー。キモい」

 ガザガザと蠢くように、襲ってくる蜘蛛の集団に、泣き言を言いながら、近づいて来る蜘蛛を、風の刃で切り裂き、氷弾で撃ち抜き、接近した蜘蛛を戦闘用ナイフで切り捨てまくった。


 戦闘は、10分程で終了した。

 蜘蛛の魔物の死体を解体して、魔石を取出して回収する。

 正直、気持ち悪いし触りたくないけど仕方がない。

 放置していると、ダンジョンに吸収されてしまうから、手早くやらないと。

 最後の1匹の解体が終わるまでに、30分も掛かった。


 回収した魔石をバックパックに入れて先に進む。

 2層の探索が終了するまでに、計5回の戦闘が行われた。

 5回目の戦闘では、タラテクトが10匹出てきたけど、普通乗用車サイズの体に足が付いている、最悪のビジュアルだった。

 あれが、ガサゴソと高速に足を動かして襲ってくる様子は、鳥肌が立った。

 あいつら、ジャンプするし、下顎の牙がガチガチと打ち合わせながら襲ってくる。しかも、動きも速いし硬いし、頭を潰しても暫く動き続けるんだ。

 本当にキモい。


 太和「やはり、おかしい。」


 霜月「ああ、タラテクトが集団で襲ってくるなんて、初めてだ。

 上位の魔物が、誕生したのかもしれん。」


 太和「その可能性が高いな。」


 戸神「これでは、一般隊員に対処させるのは無理ですね。」


 太和「取り敢えず、タラテクトを解体してから、戻ろう。」

 大急ぎで、タラテクトから魔石を回収して、甲殻を剥ぎ取りバックパックに入れる。

 大和さんは、タラテクトの足をバックパックに入れている。

 なんでも、タラテクトの足の肉は、絶品らしい。


 地上に戻りながら、聞いてみた。

「普段のタラテクトの行動と違うのですか?」


 黒崎「レッサーやスモールレッサーは、たまに集団化する事は有るが、基本的にタラテクト系は、単独行動をする。

 タラテクトが集団で襲って来たのは、初めて見た。」


 山奈「タラテクトを相手にしても、私達は直ぐに倒せるから良いけど、一般隊員では相当苦労する相手だ。

 それが、集団で襲ってきたんだ。

 一般隊員では、対応できなかったんだろう。」


 霜月さんが補足を入れてくれた。

 霜月「蜘蛛型の魔物は、大きく分けてタラテクト系とスパイダー系と軍隊アーミー系に分かれる。

 タラテクト系は、基本単独行動かつ近接戦闘を主体にする大型蜘蛛の魔物だ。

 スパイダー系は、基本単独行動かつ罠や遠距離攻撃を主体とする小型蜘蛛の魔物だ。

 軍隊アーミー系は、集団かつ分業制の蜘蛛の魔物だ。

 軍隊アーミー系を除けば、蜘蛛系魔物は、単独行動を行い、自分の縄張りに他の蜘蛛系魔物が入り込むと、目の前に私達がいても、縄張り争いを優先する魔物なんだ。

 だから、集団で襲ってくるという事は、通常は無い

 それが、集団で襲ってきたという事は、タラテクトより上位の魔物が現れて、上層に逃げてきたと考えられる。

 通常、5層に居るタラテクトが2層に来た事により、ダンジョンの生態バランスが狂い、1層の魔物が駆逐されたのかもしれん。」


 大和「明日は、一気に7層を目指す。

 泊まり込みの調査になるから、物資の補給と英気を養っておくように。」


 地上に戻ると、空は茜色に染まっていた。

 資材庫で、今日の戦果を預けて、携帯食を3日分貰う。

 太和さんが持ってきたタラテクトの足は、そのまま食堂に運ばれていった。

 その後、太和さんは部隊長の元に向い、私達は備品庫で装備の手入れをしてから、寄宿舎に向かった。


 寄宿舎で、夕食を食べ、お風呂に入ってから、割り当てられた部屋(4人部屋)でくつろいでいた。


 山奈「神城さんは、タラテクトの鑑定は出来た?」


「一応、確認しました。事前に確認した内容と同じでした。

 多少違いが有ったのは、個体差だと思います。」


 山奈「タラテクトのランクはどうだった?」


「スモールレッサータラテクトが、F3~F6

 レッサータラテクトが、E3~E7

 タラテクトがD4~D8

 でした。」


 山奈「戦闘毎なら?」


「1戦目が、D3

 2戦目が、D5

 3戦目が、D4

 4戦目が、D3

 5戦目が、C5

 位ですか?」


 黒崎「おお、正解。

 ちなみに、ここの資源調整部隊のチームは、3チーム居る。

 ランクDの6人パーティーが2個とランクCの4人パーティーが1個で、それぞれのパーティーランクが、D5、D7、C4だ。

 安全に討伐出来る目安は、2ランク下とされているから、此処の連中では上層階でも対応が出来ない。」


 霜月「厳しい言い方だが、事実だな。

 ここのダンジョンは、最高位がタラテクトだったんだが、上層階に出てきた事を考えると、上位の魔物が居ると考えた方が良いだろう。

 タラテクトの上位なら、グレートタラテクトかアークタラテクト当たりと思う。

 コイツラが下層を支配したから、上層に逃げた可能性と、軍隊アーミー系が誕生した可能性がある。


 帰りに説明しなかった軍隊アーミー系は、蜘蛛系の魔物の中から極稀に支配階級に進化する個体を中心に形成される。

 タラテクト系から出ると、軍隊アーミータラテクト。

 スパイダー系から出ると、軍隊アーミースパイダーとなる。


 軍隊アーミー系の支配階級は、女王クイーン将軍ジェネラル宰相チャンセラーの3種だ。

 その下に、騎士ナイト兵士ポーン工兵エンジニア兵站ロジスティックの4部隊に分類される。

 そして、そこに組み込まれなかったモノは、食料になるか逃げるかしか無い。

 既にいるモノが組み込まれるのは、兵士ポーン兵站ロジスティックだ。

 軍隊アーミータラテクトが誕生していると仮定した場合、私達が倒したタラテクトは、兵士ポーン兵站ロジスティックと思ったほうが良い。

 そして、1層で魔物が居なかった事と2層でレッサーとスモールレッサーの大群に出くわしたのは、軍隊アーミータラテクトに狩られているからかも知れない。


 むしろ、この仮説の方が正しい気がしてきた。

 まあ、下層に行けばハッキリと分かる事だが、全員気を引き締めて欲しい。


 将軍ジェネラル宰相チャンセラーの1体なら、私、太和、戸神の3人掛かりで、何とかなるかもしれないが、女王グイーンには歯が立たない。

 我々の中で、支配階級を単独討伐できるのは優ちゃんだけだ。


 非常に不本意ながら、支配階級が出てきた場合は討伐を頼む。

 当然、我々も出来る限りのサポートは行う。


 本来、軍隊アーミー系が誕生している可能性が出た時点で、機動戦略隊を呼ぶ案件だが、優ちゃんが此処に居る以上、我々で討伐しなければならないだろう。」


「分かりました。がんばります。」

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