第91話 資源ダンジョン(2)

 早朝、装備を持ってマイクロバスに乗り込み、半日かけて移動する。

 山間やまあいにある対魔庁の駐屯所に到着した。


 ここの一角に資源ダンジョンがある。

 最も、資源ダンジョンが見つかったから、ここに駐屯所が作られた方が正しい。


 太和さんは、到着後直ぐに此処に常駐している部隊長に挨拶をしに行っている。

 その間に、荷物を降ろして寄宿舎の割り振られた部屋に荷物を置いてから、寄宿舎の前で待機している。


 近くを通りかかった隊員達が、驚きの表情でこちらを見て、暫く固まった後、慌てて去っていく。


 山奈「失礼な連中です。

 どうやら、隊規が緩みすぎていますね。

 顔は覚えましたので、合同訓練時にハードメニューを用意してあげましょう」


 黒崎さんは、端末を取り出して、何かを確認してから

「6月下旬。

 訓練内容をスペシャルハードに設定」

 端末で設定を変更しているようだ。


 なにやら、恐ろしい事が決定しているみたいだ。

 戸神さんは、我関せずと明後日の方向を見てるし、霜月さんは腕を組んで目をつむっている。


 10分後、太和さんと男性隊員2人を連れてやってきた。


 私達の前にやってくると、壮年の男性隊員が前に出て

「部隊長の田中 伸之のぶゆき3尉です。

 資源ダンジョンの調査、よろしくお願いします」

 そう言うと、頭を下げた。


 太和「今日は軽くダンジョンの上層階を周るぞ。

 本格的な調査は、明日からだ。

 行くぞ」


 太和さんが動き出そうとした時、

 部隊長「ちょっと待って下さい。

 その子供も一緒に連れていくのですか?」


 太和「こいつも連れていきます。

 こいつは、此処に居る誰よりも広範囲の空間探査能力を持ち、鑑定、治癒等の補助能力アビリティを複数持っている。

 今回の任務に、これ以上無い最適な人材だ」


 部隊長「そうですか、そういう事なら仕方ありません。

 どうか無事に帰還して下さい。

 佐々木君、ダンジョンまで案内を頼む」

 どうやら、純粋に私の事を心配してくれたみたいだ。


 佐々木「分かりました。こちらです」

 そう言うと、私達を先導して歩き出した。

 私達は、佐々木さんの後を着いて行く。


 すれ違う人達から、驚きの表情が見えるが、皆あわてて道を譲り敬礼をして、私をガン見している。

 まあ、私一人が特別小さいうえ、大きなバックパックを背負っている為、尚の事小さく見えるから仕方ないか。

 私の身長が、130cm弱でバックパックの高さが60cmもあるから、バックパックに背負われている状態だ。

 後ろから見たら、バックパックに足が生えている様に見えるのかな。

 ちなみに、太和さんが184cmと一番大きく、戸神さん、霜月さん、黒崎さん、山奈さんの順になる。


 資源ダンジョンを封鎖している門の前に到着した。

 門番に、佐々木さんが何かを話し掛け、ゲートがゆっくり開いて行く。

 門番が、何度も私と佐々木さんを見ながら何か小声で言っているが気にしない事にする。


 門が開くと

 太和「入るぞ、神城は適時照明弾を上げてくれ」

 太和さんに続き、ゲートを潜る。


 資源ダンジョンは、洞窟型で内部は真っ暗だったので、照明弾を撃つ。

 後ろ、ゲート付近には、何時の間にかに20名程の人が集まっており、照明弾を撃つと、どよめきが起こった。


 私は、意味が分からず首をひねっていると

 黒崎「光属性の能力アビリティを有する者は少ない。

 神城さんの様に照明弾として使える者はいない。

 普通は、一瞬閃光を放つのが精一杯」

 ドヤ顔で言われた。

 私達は、ダンジョンに降りて行く。




 Side:ゲート付近

「おい、何であんな子供が教導官達と一緒に居るんだ?」

「そんなの知るか」

「可愛い子だな」

「あの子も、一緒にダンジョンに潜るみたいよ」

「ただの足手まといじゃん」


「照明弾って、何だよ?」

「なんだあの光の玉」

「天井に留まった。かなり明るいわね」

「あれは、便利そうだ」

「お前、光の能力アビリティ持ってるよな。あの子と同じこと出来ないのか?」

「できねーよ。一瞬強い光を出すのが精一杯だ」

「あ、副隊長、あの子供は何者なんですか?」

 佐々木「俺も分からん。

 分かっているのは教導官達が、今回の探索のために連れてきたって事ぐらいだ。

 探知、鑑定等のサポート要員らしい」

「らしいって?」

 佐々木「だから、俺も知らんって言っただろう。

 ただ、一つだけハッキリと分かっている事がある」

「ハッキリと分かる事?」

 佐々木「お前ら以上の実力者だという事だ」

「どういうことですか?」

「あんな子供が、俺らより上って、何を言っているんですか」

「副隊長、冗談きついっすよ」

 佐々木「なんだ、お前ら気付いていなかったのか?」

「なにをですか?」

 佐々木「あの子、120Lの拡張バックパックを装備していたんだぞ」

「それが、どうしたというのですか?」

「ちょっと待って下さい。120Lの拡張バックパックをですか?」

 佐々木「そうだ」

「あれを装備してダンジョンに潜る許可って、ランクC7以上必要だったはず」

「え!」

「確かに」

 佐々木「そうだ。しかも、探知と照明を兼任するとなると、ランクB1以上あると思われる」

「はぁ?」

「嘘だろ!」

「マジ!!?」

 佐々木「探知が得意な黒崎教導官が居て、適任者として連れてきているんだ。

 それだけの能力が有ると言う事だ」

「マジか!」

「嘘だろ!」

 佐々木「それと、お前ら態度を改めろ」

「はあ、いきなり何ですか?」

 佐々木「あの子、戦術課の准尉だ。上官だぞ」

『!!!!』

「嘘だー」

「俺らより上の階級?」

「マジかよ!」

 佐々木「お前ら、部隊章と階級章を確認しなかったのか?」

「あ、みてません」

「子供が、一緒にいる事に驚いて、確認していませんでした」

 佐々木「お前らなー」

「副隊長、冗談じゃないんですよね?」

 佐々木「当たり前だ。ほら、さっさと解散して業務に戻れ。」

「あ、はい」

 蜘蛛の子を散らす様に、居なくなった。


 佐々木「ゲートを閉じろ。

 教導官達が戻ってきたら、連絡をくれ。

 あとを頼むぞ」


 門番「分かりました」


 隊舎に戻りながら、深い溜め息をついて

 佐々木「最近、弛んできてるな。次の合同訓練、地獄が待っているだろうな」

 そう呟くのだった。

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