第212話 訓練という名の地獄2(2)
そもそも、50m位しか離れていないのに、馬鹿みたいな大声で作戦指示をするとか何を考えているのだろう。
わざと作戦を聞かせて罠でも張っているのだろうか?
それとも、指示の合間に入れている嫌味や悪口で、私を怒らせる作戦なんだろうか?
正直、気分が悪い。
愛知方面隊に白目を向ける。
しかも、時間を掛けすぎだ。
だんだんとイラっとしてきた。
敢えて不満を態度に出している。
これは、丹念に叩き潰す必要がありそうだ。
ちょっとドス黒い思いを貯めつつ、愛知方面隊の準備を待つ。
10分も待たされて、
この程度の戦闘準備に時間を掛けすぎ。
私の中の評価が更に下降した。
太和さんが右手を上げた。
それを見た愛知方面隊の隊員の顔に緊張が走り、各人が持つ武具を強く握り締め、武具を構えている。
私は、右足を後ろに半歩引き、軽く腰を落として右手を腰に当てて気付いた。
訓練用の戦闘ナイフを装備していなかった。
まあ、無くても
太和さんは、右手を振り下ろしながら
「はじめ」
と叫んだ。
愛知方面隊が1歩踏み出す間に、私の右側、左翼先端に移動した。
愛知方面隊が2歩目を踏み出す前に、右拳に溜めた魔力を拳と共に打ち出す。
拳と共に撃ち出された魔力が、強い指向性を持った衝撃波となり、左翼を形成していた隊員全員を巻き込んで、中央の部隊に叩き込まれた。
中央の部隊は、吹き飛んでくる左翼の隊員達により、陣形を崩され、動きを止めた。
右翼は、目標を見失った事と左翼側から轟音が聞こえた為、4歩目で足を止め、音が聞こえた方に顔を向けてた。
その時点で、右翼の先端に移動済みだ。
左拳に溜めた魔力を拳と共に打ち出した衝撃波で、右翼も中央部隊に叩き込む。
そして、右手に魔力を溜めた状態で団子状態の愛知方面隊を飛び越える。
その際、愛知方面隊の真上から、部隊中央付近に居た荻原を狙い高圧縮した右手の魔力を拳で打ち放ち、地面が爆発した。
愛知方面隊の隊員全員が地面に転がり、まともに動く事が出来ない程のダメージを負っているが、全員意識がある為うめき声や呪詛が聞こえる。
彼らの側から20m程離れた位置にゆっくり歩いて移動し、振り返ると
「大層な時間を掛けた割に4秒も保たないとは、呆れて物が言えない。
さっさと寝っ転がってないで立ち上がりなさい」
と冷たい声で話しかける。
既に地面を経由して治癒を掛けていたので、もう動けるはずだ。
それでも立ち上がる者は居ない。
「10」
「9」
「8」
とカウントダウンを進めながら、右手に魔力を溜めていく。
私の状況に気づいた数人が立ち上がるが、カウントダウンは進む。
「2」
「1」
立ち上がった隊員の何名かが、私に駆け寄ろうとし、盾を持つ者は盾を全面に構える
「0」
のカウントと同時に、愛知方面隊に向かって右手に溜めた魔力を拳で打ち抜く。
私の全面、愛知方面隊を飲み込む様に衝撃波が広がり、愛知方面隊の隊員達が四方八方に吹き飛ばされ地面に叩きつけれて転がっている。
グランドに飛び散った隊員達のうめき声が聞こえる。
一応手加減をしているので、意識を失っていない。
「さっさと立て、いつまで寝ている。
初歩の攻撃
立ち上がらないなら、こちらから一方的に行くぞ」
と宣言する。
絶望的な顔をして転がっている隊員達を無視して、攻撃を開始する。
転がっている隊員達を、1箇所に集めるように吹き飛ばしながら攻撃を繰り返す。
それを延々と繰り返しながら、隊員達がある程度戦力を回復するのに10分以上掛かった。
それに伴い、徐々に飽和攻撃が成立し始めた。
いくら私の方が、スピード・パワー共に高くても、無手では一度に捌ける数が限られるから仕方ない。
だから土の
正面の盾を構えた隊員に対して、棍に十分な魔力を込めた状態で盾の上から突く。
棍は、複合装甲材の盾と防具を紙の様に貫き、肉体を穿つ。
素早く棍を引き戻し、弧を描く様に棍を返し、突いた方の反対側で水平に叩きつけた。
叩きつけられた隊員は、砕け散った防具と共に吹き飛ばされた。
私の正面以外の3方から同時攻撃を仕掛けている隊員達も、それぞれを一振りで叩き飛ばす。
叩き飛ばされた隊員は、周囲に居た隊員達を巻き込みながら50m位先の地面で、数度跳ねてから転がっり止まった。
愛知方面隊の隊員達の動きが止まり、間が抜けた声が聞こえた。
しかし、私は止まる事無く、間抜けな顔を晒した近くの隊員を棍で殴り飛ばす。
愛知方面隊が思考停止状態から復帰するまでの間に、更に13人を棍で殴り飛ばし、飛ばされた隊員に巻き込まれた者は100人は軽く超えていた。
その後は、高速に動き回りながら棍で殴り飛ばして回った。
私の棍に殴られた隊員達は、装備も砕かれながら吹き飛ぶ。
ある程度バラけると、1箇所に集まる様に吹き飛ばす。
1箇所に集まると、
それを何度も繰り返す。
いくら傷つき倒れようとも強制的に治癒を掛けて続けている為、意識を失う事も出来ず、立ち上がる事も出来ず、戦う気力も失っても、無慈悲に巻き込み戦闘を継続する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます