第100話 資源ダンジョン(11)
閃光が消えた直後、
私は、
他の人の戦闘を確認すると、黒崎さんの槍が腹部に刺さって、床に縫い留められた
一方は、凍りついた
霜月さんと戸神さんも、床に倒れていた。
3人に駆け寄る。
霜月さんと戸神さんは、魔力欠乏で動けないだけみたいだ。
問題は、太和さんだ。
顔は真っ青で、体中に傷を負っており、凍傷に罹っていた。
生きているのが不思議なほどだ。
それでも、意識は辛うじてあるようだった。
直ぐに鑑定を掛けて、状態を確認する。
無数の打撲に切り傷と骨折。
低体温症のうえ、体のあちこちに凍傷が出来ている。
本当に辛うじて生きている状態だった。
直ぐに治癒の
体温より少し温かい温度のお湯を作って、傷の汚れを洗い流す。
凍傷で、駄目になった部位を戦闘ナイフで抉り取り、治癒の
そのついでに、全身の打撲と切り傷も治す。
麻酔なんてものは無いので、激痛に襲われ暴れる太和さんを、山奈さんと黒崎さんに押さえて貰って、施術を行った。
施術が終わった頃に、ようやく動ける様になった霜月さんと戸神さんが来た。
「何も手伝えなくて済まん」
霜月さんが謝ってきた。
「太和君は、どうです?」
と戸神さんが、太和さんの容態を聞く。
「意識を失っていますが、体の方は問題がありません。
目が覚めれば、普通に動けると思いますが、暫く戦闘は無理です。
二人共、大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ。魔力を使いすぎただけだ」
青い顔をした霜月さんがそう答え。
「正直に言った方が良いですね。
私達二人は、
幸い、命に係る程まで行きませんでしたが、数日は魔力が回復しません」
戸神さんが、今の状態を説明する。
「3人共、無茶しすぎです」
「それは、そのまま返すぞ。
なんで、
そして、何で無傷なんだ?
どうやって、
霜月さんは、半分怒り、半分呆れた感じで聞いてきた。
「ほんと、破壊光線を真正面から受けたのを見た時、驚いたんだからね」
「あれは、心臓に悪い」
山奈さんと黒崎さんにも、心配を掛けた様だ。
「えーと、ごめんなさい。
それしか、勝機が思いつかなかったから」
「何をどうしたのか、教えて貰えないか?」
と霜月さんが問う。
「
「アレは魔力結界で防げる程、弱くない」
「そうよ」
黒崎さんが、珍しく声を荒げ、山奈さんが同意する。
「魔力結界を、
『は?』
山奈さんと黒崎さんは、驚きと呆れが混ざった感じの声で
「そんなんで、逸らせるの?」
「
ただ、一瞬で100個張る事できる結界師居ないから、検証のしようがない」
と感想を述べる。
「最初は、30個程張ったのですが、直ぐに割れちゃったので、どんどん追加していって、100個位張る事になりました」
「それで、
と霜月さんが問う。
「それは、
「なにそれ?」
と山奈さんが疑問を口にする。
「プラズマボールを作成して、重力と高電圧を更に掛ける事で、強制的に陽電子を放出させ、陽電子で満たしたプラズマボールを、
と説明すると、霜月さんは
「
まあ、いい。
優ちゃんのお陰で、誰一人欠けることが無かったのだからな」
と言って、無理に納得していた。
状況が安定し、疑問が解決したので
「落ち着いたなら、解体して回収。
このまま、ダンジョンに吸収させるのは勿体ない」
と言う黒崎さんの言葉で、山奈さんと黒崎さんに手伝って貰いながら、解体していく。
流石にバックパックに入らないから、土の
その際に、改めてこの空間を確認すると、入り口から左右それぞれ500m、奥行き1,200m、高さ60mなんて大きな空間なんだんだろう。
解体を終わらせて、戦利品と一緒に太和さん達の所に戻ると、太和さんが目を覚ましていた。
太和さんは、床に座った状態で
「神城、話は聞いた。ありがとうな」
と言って、頭をさげた。
「あまり無茶をしないで下さい。」
太和さんは
「ふ、これじゃあ、どっちが保護者かわからんな」
と言った。
それを聞いた皆が笑い出した。
ようやく、
その日は、そのままこの場で一夜を明かす事になりました。
機動戦略隊の先遣隊は、遅れていた後続隊と合流出来たのは、16時を回っていた。
その為、この日の探索を諦めざる得ない状況だった。
何よりも、24人もの人間が野営出来る場所を選定しないといけなかった。
流石に魔物が居ないとは言え、通路のど真ん中で野営は出来ない。
選定した場所は、7層入り口とダンジョン・コアの部屋の中間地点にある空間で、壁際に空いた幅3m高さ2mの穴の奥にある幅25m、奥行き40m、高さ5mの空間だ。
「なんか隊長、機嫌悪くねー」
「ああ、思いっきり不機嫌だな。」
「近づかない方が賢明だな。」
そんな隊員達の小言を聞いて
「おい、
いい加減に不貞腐れるな。
部下達が、怯えてるぞ」
と吾郎が言う。
「当然だろ、流石に14時半には到着すると思っていたら、16時を回っていたんだぞ。
しかも、ただ走るだけで、
お陰で、今日の探索が捗らなかった。
今回の調査は、
何よりも、迅速な調査と討伐が必要な案件なんだぞ。
悠長に構えていたら、スタンピードを許してしまう。
それなのに、コイツラを見ろ。
全員間抜け面を
コレを怒らなくて、何を怒る?」
と俺がイラツイていると、吾郎が
「あー、そういや、あいつらにその事説明してねー」
とか言い出した。
「は?何やってんだよ。
と問い詰めると
「こいつら、戦術課の隊員と言っても下っ端だ。
そんな重大案件の先遣隊なんて言ったら、暴走するのが目に見えている。
だから、敢えて言ってない」
「だからって、私と南にも内緒にしていたんですか?」
と同じ班の高月が怒ったように文句を言う。
「いや、すまん。
と言って、吾郎が謝っている。
「それは、随分と酷い扱いですね」
と同じ班の平田も無表情に返している。
「そうですよ。山本さん。
私たちは、資源ダンジョンの深部で発生した異変の調査に向かった教導官達の支援としか聞いていないんです。
そうと分かっていたら、多少無理をしてでも探知をしていました」
と高月が怒る。
「それは、本当にすまん」
と言って、吾郎は頭を下げた。
「とにかく、今は動けん。
休息後、明朝6時より隠し通路の発見に全力を尽くそう。
全ては、そこからだ」
と俺は指示を出す。
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