第142話 4人の初訓練(5)
「訓練次第では、この位の事が出来る様になります。
次、最大出力で行うよ。」
4人が画面に集中したのを確認してから、公開しているデータの最大値で
4人の目が大きく開かれ、顎が落ちたと思われる程大きな口を開けて固まっている。
手を叩いて音を鳴らすと、正気に戻ったのが騒がしい。
「なにこの魔力量」
「一、十、百、千、万、10万、100万、1000万、・・・7300万MP!!」
「どのランクはになるの?」
「知らないよ」
「いつ魔力が上昇したのか全く分からなかった」
「瞬時に最大値まで上昇って、どういう事?」
「あれ、威圧感感じないっておかしくない?」
「そういえば、全く感じない」
「どういう事?」
4人が私を見るので
「威圧は、こんな感じだよ」
と言って、彼女達に魔力を浴びせる。
4人の顔が真っ青になって、膝から崩れ落ちた。
魔力を浴びせた時間は、0.01秒と極短時間にもかかわらず、恐怖を貼り付けた青い顔で床に座り込んで震えている。
座り込んでいる4人の前で、腰に手を当て
「私の魔力量は、ランクB7。
実用魔力量範囲内で、魔力の増減に時間を掛ける様では半人前です。
あと、魔力を高めるだけで周囲に威圧するのは、魔力制御が全く出来ていない3流以下の
ほら、放出魔力量をよく見ください」
私が指差す値を4人がノロノロと画面を見て
「うそ、平常時と変わらない」
と呟きをこぼしている。
「魔力制御の見本をみせます」
体に均等に魔力を配分した状態で、右拳に魔力を圧縮増幅を行う。
右拳の魔力だけが急上昇して351MMP(ランクA3)まで増える。
呆けている4人から
「なんで、右手だけ魔力が増えてる」
と呟きが溢れる。
体全体に均等に配分していた魔力を両拳とその他に7:3に分割したり、指先に全魔力を集めたり、左腕だけに集めたりと、魔力配分を変更してみせた。
「きちんと制御出来る様に成るとこの様な事も出来ます」
次に、魔力弾を空中に次々と作る。
全て直径3cm程度の球体が31個空中に並ぶ。
籠めた魔力量は、D1~A1に順に大きくなっている。
魔力感知を持っていなければ同じに見えるだろうが、画面の方には個々の魔力量が表示されている。
「ざっと、こんな感じです」
そう言って、手を一発叩いて全ての魔力弾を消滅させ、最大出力の
未だ床に座り込んでいる4人に向かって
「訓練を積めば、この様な事も出来る様になるので頑張ってください」
とエールを送る。
引きつった笑顔で、4人は私を見上げている。
「今日の訓練は終わりです。さあ、立ってください」
4人を立たせ、コンソールを操作してシステムを終了する。
土田さんがコンソールの横、私の足元にある鉄のボールに気づいて拾い上げ、手に持って「変わった色のボールね」と言いながら、ボールをグニグニと変形させている。
「それ、鉄球なんだけどね」
苦笑いしながら答えた。
「え、うそ。だってこんなに弾むのに鉄?」
ボールを床に落として弾ませている。
私は、部屋隅から鉄板を1枚取り出し
「残念ながら、私が作った鉄球。これが材料ね」
と言って鉄板を渡す。
鉄板を受け取った土田さんが、困惑した表情で鉄板を見ている。
その横で、他の3人がその様子を覗き込んでいる。
「鉄板を手のひらの上に載せて」
土田さんが、手に持っていたボールを鳥栖さんに渡し、手のひらの上に鉄板を載せたので、鉄板に魔力を注ぎ土の
その変形の様子に驚きの声を上げる4人。
球形になった鉄板を恐る恐る突く。
「硬い。鉄だ」
「まだ、そのまま持っていて」
と声を掛け、鉄球に魔力を注ぎ、物性変化の
手の上の鉄球の感触変わった為
「え、うそ、柔らかくなった」
と声を上げた。
周りも慌てて鉄球を触っている。
「本当だ。ゴムボールみたい」
「ぷにぷにする鉄球って、変な感じ」
「この感触、癖になりそう」
「ところで、このボールどうするの?」
「訓練で形作っただけだから、また元の鉄板に戻すよ」
「えー。勿体ない。もしよかったら、これ下さい」
「え、別に良いけど」
「やったー。大切にする」
「私も欲しい」
「私も」
「私も、私も」
「じゃあ、一人は最初の奴で、あと3つ作るよ」
「じゃあ、私が持っている奴貰うね」
鉄板を3枚取り出し、彼女達の目の前で3個同時に作成して渡した。
「ねえ、これの色って変えられないのかな?」
「どうして?」
「だって、みんな同じ色だと自分の物と区別つかないし、色の種類があった方がかわいいと思って」
「多分変えられると思う。やったこと無いけど」
「じゃあ、これをオレンジでお願いします」
土田さんが手に持ったボールを差し出してくる。
物性変化の
その際に、緑より赤の方がより強く反射する設定にした結果、ボールの表面はメタリックオレンジに輝いている。
土田さんが、グニグニとボールを変形させると赤や金色ぽっく色が変化した。
「いい。これ凄くいいよ。グニグニさせると色んな色が出てかわいい」
うん?かわいいのか?
「私は、青色がいい。青空みたいな青がいい」
「私は、落ち着いた緑色がいいな」
「私は、ピンクがいい」
彼女達の要望に沿った色を付加していった。
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