第220話 休日のお出かけ(4)

 若菜さんに連れられて来た部屋には、設置された棚に様々な生地やレースやフリルが所狭しと置かれおり、体型の違う数種類の頭と手足がないマネキン(トルソーと言うらしい)が壁際に立っている。


 奥に工業用ミシンが置かれ、近くに設置されている机の上には、裁断途中の布と型紙が置かれている。


 他には、タンスと思われる物が置かれ、ハンガーラックには様々な種類のブラジャーがハンガーに吊るさている。


 若菜さんは、部屋に入ると扉の鍵を締め、開けられていた窓を閉めて、カーテンを閉めた。

「さあ、上を脱いで」

 と言われた。


「えーと、どういう事でしょう」

 と聞くと

「え、バストサポーターのオーダーメイドに来たのでは無いの?

 杏奈あんなは、作成依頼みたいな事を言ってたのに?」

 と言って、首を傾げている。


「若林さんには、今使っている物と同じ物を取り扱っているお店を教えて欲しい事と、良いバストサポーターがあれば教えて欲しいと言っただけです。

 だから、私も良く状況が飲み込めていません」


「あー、ナルホド。

 だから、杏奈は私を紹介したのね。


 じゃあ、説明するわね。

 私は、ランジェリショップを経営しているの。

 お店では既製品以外にも、ショップ・ブランドも販売しているわ。

 あとは、オーダーメイドの作成しているわ。

 当然、バストサポーターも作成出来るわよ。

 ほら、私のサイズだと既製品は無いし、神奈川方面隊に居た頃は、個人的に制作依頼も受けていたからノウハウはあるわよ。


 どぉ。私の所で作ってみない?」


 そのお胸で自信満々に言われると信じるしかないではないですか。

「分かりました。制作をお願いします」

 と言ってから、服を脱ぎ測定を受けた。


 測定が終わり服を身につけている横で、若菜さんは、計測データを元にラフ画を書いている。


 服を身に着け終わると、書いていたラフスケッチを私に見せ、構想を説明してくれた。

 あとは、制作費用の概算見積もりと納期を教えて貰って結果、3着制作して貰う事になった。


 話は終わったので、皆の所に戻ろうとすると

「神城さん、貴方のブラ、サイズが合っていないわよ。

 3/4カップでも問題ないけど、普段はフルカップを使った方が良いわよ


 それとバックベルトは、今より長い物にした方が良いわね」

 と言われた。


 確かに、最近、ちょっときつくなったかなと思ってはいたんだけど、まだ大丈夫だと思いたかった。


「馴染のお店とかあるの?」


「有りません」


「この後の予定は?」


「特に決めていません」


「じゃあ、私のお店に行きましょう。

 家から近いから、歩いて行けるよ」


「取り敢えず、皆と相談してからにします」


「そう。じゃあ、戻りましょう」

 と言う事で、店舗側に戻る事になった。


 店舗側では、4人共訓練用戦闘服に着替えていた。

 まあ、まだ、戦闘服に着せられている感が強いが、使っていく内に馴染むだろう。


「うんうん。初々しいけど似合っているよ」

 と若菜さんが、田中さん達を褒めている。


「訓練用戦闘服と戦闘靴ブーツに問題があった人居る?」

 と若菜さんが聞くと、皆一様に

「問題有りません」

 と回答した。


「じゃあ、問題は無いのね。元の服に戻って良いよ」

 と言う若菜さんの言葉で、鳥栖さんが最初に更衣室に向かった。


 鳥栖さんを見送った所で、田中さんが

「ところで、何故、訓練用戦闘服と言うのですか?

 戦闘用戦闘服と何か違いがあるのですか?」

 と聞いた。


「訓練用も戦闘用も、服そのものは同じものよ。

 ただ戦闘用は、対魔物用の特殊なコーティン処理を行っているの。

 その分、お値段もかなり高額になるの。

 だから、訓練用と分けているだけよ」

 と若菜さんが説明をすると、納得した様だ。


「ところで貴方達、この後はどうするの?」

 若菜さんが尋ねる。


「特に予定は立てていません」

 田中さんが答える。


「だったら、私のお店に来ない?」

 と若菜さんが皆を誘う。


『おみせ?』

 と皆が、疑問を口にした。


「私ね。下着とかのお店をやっているの。

 それで、神城さんのブラジャーが買い替え時だから、私のお店を紹介しようかなっと思って」

 と若菜さんがニコヤカに言う。


「そのお店って遠いのですか?」

 と田中さんが聞く

「歩いて10分位よ」

 と若菜さんが答えると

「ちょっと、行ってみたい」

 と都竹さんが名乗りを上げると

 田中さんと土田さんも同意した。


 鳥栖さんが更衣室から出てくると、土田さんが更衣室に入った。

 鳥栖さんが、若菜さんに戦闘服と戦闘靴ブーツを手渡すと、テキパキとたたみ、袋に詰めた。

 その間に、田中さん達がこの後の事を説明している。

 当然、鳥栖さんも若菜さんのお店に行く事に同意した。


 梱包が終わると、鳥栖さんはお会計をしていた。

 後は順番に着替え、梱包、お会計を済ませ、最後の都竹さんの会計を済ましてお店を出た。


 若菜さんは、旦那さんの護さんにお店を任して、私達と一緒に移動する。

 お店を出る時、店主が顔を出したて何か言おうとしていたが、後ろから奥さんに首襟を掴まれて奥に消えた。

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