第134話 訓練校の初の週末は

 伊坂さんと高月さんと一緒に病院を出て、訓練校の寮に戻る途中でスーパーに寄ってもらう。

 山本さんは、放って置くといつまでも平田さんから離れないから、伊坂さんが久喜さんに頼ん命令官舎に連れ帰って貰った強制退去させた


 スーパーでは、米、パスタとパスタソース、缶詰、カップラーメン等の保存食を10日分位と数日分の生鮮食品を購入した。

 高月さんからは

「保存食は分かるけど、食堂があるのに生鮮食品が必要?」

 と聞かれた。


「たぶん必要になると思います」

 答えると

「どんな状況を想定しているのかしら?」

 と言われたが笑って済ませた。


 伊坂さんは、お酒とおつまみを購入していた。

「晩酌用ですか?」

 と聞くと

「吾郎を捕まえておく必要があるからな。

 放って置くとまた病院に押しかけるかもしれんから、一緒に酒を飲んで官舎に押し留めておく」

 と言う返事が返ってきた。


 山本さんが、平田さんに執着しているのは分かっていたけど、ちょっと異常だなと思っていると、高月さんがそっと耳打ちで

副隊長山本さんは、平田さんにぞっこんなんだよね。

 なんでも一目惚れらしいよ。


 それで、何度もアタックしているんだけど、南がずーと断っている状態。

 断っている理由は

狂戦士バーサーカー能力アビリティで暴走して殉職する可能性が高いから、誰も好きにならない』

 と言って断っていたのよ。

 でも、貴方の治療が終われば、狂戦士バーサーカー能力アビリティを封印するでしょ。

 だから、南が断る理由がなくなるから、余計に暴走しているみたいなのよ。

 南も満更でもない様子だったしね」

 と教えてくれた。


 その高月さんは、デザートを購入していた。

 夜食として食べるのかな?


 訓練校に19時20分位に着いた。

 寮と守衛所の門限が20時だから、特に問題も無く守衛所を抜けて寮の前まで送ってもらう。


 ちなみに訓練校貴陽学園と最寄りの駅までの交通手段は公共バスだけで、道路が空いている時間帯なら40分程度だが、朝夕の混雑時間だと倍の80分は掛かる。

 しかも、平日の朝晩の通勤時間帯で1時間に2本、土日・祝祭日は1時間に1本、空いている時間だと2時間に1本しかないうえ、最終が19時40分発になる。

 なので、街まで遊びに行った連中は、最寄り駅を17時40分出発のバスに乗らないと門限に間に合わない。

 門限を守らないと、1ヶ月間は外出禁止になる。

 ちなみに、その1本前のバスは、15時40分発になる。

 田舎だね。


 身体強化を使って走れば、訓練校と駅間を1時間位で走り切る事が出来るそうなので、走っている生徒も結構いる。

 そして今日は、上級生が新入生の希望者を連れて最寄り駅周辺を案内している。

 そして、身体強化の能力アビリティを持つ新入生を連れて、走って帰ってくるのが恒例行事になっているそうだ。

 ちなみに、街から能力アビリティを使って走って帰って来る行為は、自主訓練扱いになっているので訓示に接触しない。


 もちろん、希望者のみだが、殆どの新入生に煽り耐性が無いため、ほぼ全員が走って帰る事になるのだが、常時身体強化を発動出来ず、2時間から3時間かかってしまう。


 なぜ、そんな話をしているかと言うと、寮の玄関で息絶え絶えの新入生で溢れているからだ。

 身体強化を一定出力で長時間使い続けるには、それ相応の訓練が必要だ。

 まだ、訓練を受けていない入校間もない訓練生は、途中で維持出来なくて途切れたり、魔力切れを起こして普通に走る事になってしまう。


 何か言いたそうにこちらを睨む者も居るが、疲労困憊の為かそれ以上の行動に移せる者はいなかった。


 彼女達の横をすり抜け、寮監さんに挨拶してから部屋に戻る。


『お前達、共同浴場はもう閉まるから、シャワー室で汗を流してこい。

 さっさとしないと門限の時間になるぞ』

 背後で、上級生の激が飛んでいる。


 部屋に戻り、室内着に着替えて荷物の整理をしていると、厚生棟から寮に向かって歩いている田中さん達が見えた。

 彼女達も最寄り駅街まで行っているので、メッセージで『ご飯とお風呂は、済んだ?』と送ると『お風呂は入ったけど、ご飯には間に合わなかった』と返事が来た。

 なので、『30分後に私の部屋に来て』と送ると『分かった』と返信が来た。


 手早くお米5合を洗い、炊飯器の早炊きでスイッチを入れる。

 部屋にある炊飯器は、一般家庭用の5合炊き炊飯器だ。

 何故5合炊きの炊飯器を持っているのかと言うと、私一人だとそんな量必要ないので1~2合用の物を選ぼうしたのだが、霜月さんから5合炊きの方が良いと押し切られたからだ。

 早速、役に立つと思ってもいなかった。


 人参、じゃがいもを一口大に切り、耐熱容器に入れて電子レンジで加熱する。

 玉ねぎをくし切りとスライスした物を用意し、スライスした物は水にさらす。

 パプリカを千切りにする。

 にんにく一欠片をみじん切りにする。

 鶏もも肉を一口大に切る。


 お鍋に油とみじん切りにしたにんにくを入れ、軽く炒めた後に鶏肉を入れ、表面に焼き目が着くまで炒める。

 鶏肉に焼き目が着いたら、くし切りにした玉ねぎを入れて更に炒める。

 玉ねぎに軽く火が通ったら、レンチンした人参とじゃがいもを入れ、全体に水が被る程度まで水とコンソメ顆粒を入れて火にかける。


 鍋が沸騰するまでの間に、スライスした玉ねぎを水から上げ、水切りをする。

 キャベツを千切りにしてから軽く塩もみをして余分な水分を出す。


 沸騰したら火を止め、時折鍋底から上面までかき混ぜながら5分程冷ます。


 水切りしたキャベツと玉ねぎとパプリカを混ぜわせ、サラダにてお皿に盛る。


 お鍋に2種類のカレールーを溶かし、ソース、醤油、ケチャップで味を整え、隠し味にチョコレートを一欠入れた後、ひと煮立ちさせてから火から下ろす。


 時短レシピで作ったカレーとサラダの完成。

 私一人なら数日分の食料を使って、田中さん達4人のご飯になりました。

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