第286話 1年次夏期集中訓練 4日目(7)
Side:植松 杏奈
昼食後のまだ昼休み中だが、三上主任の指示で会議室に向かう。
指定された会議室に入ると三上主任が電話をしていた。
空いている席に適当に座ると、次々と人が入ってくる。
教導隊は
伊坂2佐
霜月教導官
戸神教導官
見崎教導官
中部方面隊は
伊坂2尉
山本3尉
三上主任
若桜1尉
私
の合計9人だ。
最後の一人が席に座った時に、三上主任の電話が終わった。
三上主任が周りを見渡し
「まだ時間前だが、全員揃ったようだな。
急な召集で済まなかった」
と言った。
「それで今回の緊急招集は、何事なんだい?」
と伊坂3佐が問う。
「今回の招集理由は、神城についてだ」
と三上主任が言うと、全員が息を潜めた。
「既に聞いていると思うが、彼女が調子を崩している。
と言った後、周囲を見渡す。
「ああ、確かに苦労していた」
と伊坂2尉が発言した。
「そう言えば、神城と戦闘訓練をしていたんだったな。
他に気づいた事はないか?」
「そう言えば、らしく無いミスをしていた」
「どんなミスだ?」
「状況判断が遅かったり、制御ミスのリカバリーを間違ったりだな」
と言うと、少し考え込んでから
「なんというか。
戦闘訓練に集中していながら、無自覚に注意力散漫というか、別の事を考えているみたいな感じだったな」
「ああ、それは俺も感じた」
と山本3尉も同意する。
「少し離れた所から見ていたが、なんというか。
言葉にするのは難しいのだが、チグハグだった気がする。
そうだな。
複数人で動かす人形を、素人が動かしている様な感じだった」
と霜月教導官が言った。
三上主任は
「まあ、この様に不調なのはわかるな」
と言った後、周囲を見渡した。
全員が頷く。
「早ければ明日、遅くても明後日には、
と三上主任が言った。
え?
なんて言った?
優ちゃんの
どういう事?
意味を理解する程に疑問が湧き上がる。
耳が痛くなる程の沈黙の中、誰かが唾を飲み込む音が大きく聞こえる。
沈黙を裂く様に
「それは、一時的なものか?」
伊坂2佐の鋭い声が響く。
周りが押し黙る中
「それは、分からない。
だた、対処を間違えると。
我々は神城を失う事になる」
と三上主任の言葉が響く。
しかし、
だから、三上主任が失うって言う表現が引っかかる。
あ、でも、能力者としては失うで合うのかと思っていると
「優ちゃんを失うって事は、命に関わると言うことか?」
と霜月教導官の鋭い声が響く。
「その可能性は、十分有り得る」
と返ってきた。
皆が渋い顔をしているなか
「それで、我々は何をすれば良い?」
と伊坂2佐が声を上げた。
全員視線が集中する中
「三上主任は、対応方法を把握していると思われる。
だから、我々を招集したのだろ」
と言った。
三上主任に視線が集中すると
「私から諸君達に依頼する内容は」
と言うと言葉を区切る。
皆が固唾を飲む。
「神城を見守ってほしいと言う事だ」
と言った。
霜月教導官が何か言おうとするより早く、三上主任は右手の手の平を前に突き出した。
「色々と言いたい事もあるだろうが、まずは聞いてくれ」
と言うと、皆聞く姿勢に変わる。
「まず、神城の
なので具体的な治療は、
次に、神城の症状の原因については見当がついているが現時点では秘匿する。
これは、治療までの間に神城に原因が知られる事で起こるだろう不測の事態を避ける為だ。
3つ目は、太和を近づけない事だ。
あいつの事だ。
直感と言う訳の分からん理由で、本質をついた事を言うだろう。
それが、神城にとって余計な負担になりかねないからだ。
最後に今回の件は、神城の心身に大きな負荷を掛ける。
だから神城の状態については、何も言わないで欲しい。
ただの不調対応で頼む。
その事を留意して見守って欲しい。
以上だ」
と言うと周りを見渡し
「質問がなければ、これで解散だ」
と宣言する。
無言で伊坂2佐が立ち上がると、皆立ち上がり言葉無く出て行く。
私も立ち上がると
「植松。
少し話があるから残ってくれ」
と言われ、三上主任の下に移動する。
会議室が、三上主任と私だけになると
「お前には、神城の現状とこれから起こる事を伝える」
と言われ、姿勢を正して聞く姿勢を取る。
そして告げられた事実。
確かに、慎重に対応した方が良い案件だ。
少し考え込んでから
「これは、
と問うと
「それは間違いない。
少し鑑定している間にも急速に成長していた。
本人が無自覚に発動しているのも確認している」
と言うと、三上主任は背もたれに体重を掛けた。
「それとなく神城と接触して、カウンセリングをしてくれ。
神城の現状把握が治療の成否に関わると思う。
頼んだぞ」
と言われた。
「分かりました。
全力を尽くします」
と答えると
「余り張り切らなくて良いぞ。
普段の通りで良いからな」
と微苦笑をされながら言われた。
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