第8話 研究者たち(2)

 Side:葉山

 対魔物対策庁研究機関 思金おもいかね関東支局能力研究課で主任補佐をやっている葉山はやま さとるだ。

 肩書なんぞどうでも良いんだが、周りのクソジジイ供がうるさい。

 仕方ないか主任補佐をやっている。


 最近のもっぱらの仕事は新人指導だ。

 これもクソジジイ供に押し付けられた仕事だ。

 自分の子飼いにやらせれば良いのに、嫌がらせで俺にやらせてやがる。

 俺が育てた人材を、自分の小間使に使ってやがる。

 まったく、この老害共が。


 そんな日々の中、三上から面白い情報が来た。

 俺は早速、主任と局長に許可を取りに行った。

 そしたら、案の定クソジジイ供が自分が行く案件だとシャシャリ出やがった。

 だから

の案件ですよ。

 でしかないあなた方が行ってどうするのですか?

 経験でどうにかなる問題では無いのですよ。

 では、見る事もかなわない案件に口を出さないで貰いたい。

 要請には、5と明記されてるでしょ」

 懇切丁寧に説明してやった。

 が100人集まろうが、1人の鑑定能力には敵わない。

 なにせ上級能力鑑定士でなければ見えない情報があるからだ。

 その情報が見えないからクソジジイ供は、なのだ。

 その時のクソジジイ供の顔は傑作だったな。

 主任と局長の許可はその場で下りた。

 許可さえ貰えば新人供の教育は、補佐をやっている連中に丸投げして東海支局へ直行した。


 東海支局へと着後、三上を強襲して情報をみる。

 現状分かる情報だけでも面白い。

 性転換前の情報も解析中か。

 遺伝子や生理データは、専門外だがある程度わかる。

 三上と情報交換をしながら、色々仮説を立てていく。


 羽佐田と伊島もやって来た。

 有能そうな助手も連れて。

 俺だって、あのクソジジイ供が居なければ有能な助手を手に入れられたのに。

 全く、老害共が消えればいいのに。


 研究者も6人になり、より活発な意見交換と仮説を立てていると、羽佐田が新型のバイタルメーターを持参していることが分かった。

 このバイタルメーターは、装備型で常時記録が取れるうえ、通信で距離100km圏内の専用端末にデータを転送可能とか超優秀。

 しかも装備者に負担を掛けない超軽量密着型。

 よし、魔力測定後装着させよう。

 すると、三上が被験者の病室のベットにバイタルメーターが設置してありデータがあるという。

 全員で監視室に移動し、被験者の様子を確認後、バイタルデータを見ながら意見交換をしていたら夜が明けてた。


 水無月が来た、あいつすげー良いもん持ってきた。

 ありがたい。ここの設備も良いものだか、それを上回るもの持ってくるとか。

 わかってるねー。

 水無月が来たことで、情報共有して一旦解散。


 俺は、ちょっと気になる事が有ったので、解析を続ける為に検査室に戻った。

 だってな、被験者の性転換前の生理データがおかしいのだ。

 検査室の端末で、一般の魔力検査履歴を調べ始める。

 やはり、過去歴から見るとおかしい。

 何故この魔力検査データで、精密検査履歴が無いのに検査結果だけが見つかる。これ、不正行為だな。ちょっと調べるか。




 Side:羽佐田

 俺は、羽佐田うさだ 庄司しょうじ 対魔物対策庁研究機関 思金おもいかね関西局能力研究課の第3研究室の室長だ。

 専門は、魔力と能力の関係を調べている。その関係で、研究の為の機材は自分で開発している。

 何処で嗅ぎつけたか知らないが、地元の測定器を開発している会社が俺が開発した機材を商品化したいと言ってきた。

 最初は、面倒くさいから断っていたが、局長を巻込んで話が大きくなってしまったので、幾つか条件を付けて承認した。

 条件は、

 1.俺が開発した機材(以下、原型機)の所有権・使用権は、俺が有する。

 2.原型機を見本とし、量産機を開発する。

 3.俺以外が原型機を研究課棟から持ち出す事を禁ずる。

 4.俺が必要とする時、いかなる場合でも俺の使用を優先する。

 5.上記を破棄する場合、俺が開発した原型機の量産機全ての製造・販売・転売を禁ずる。

 後、お金とかの条件も有ったが局長達に任せた。

 念のため契約書の一部を有している。

 その会社で売り出した製品の売上の一部が関西支局の資金になっているらしく、俺の研究室の予算も増えた。


 ある日の午後、三上からの協力要請が来た。

 内容も面白い。俺の研究テーマにも合致している。

 早速、局長に許可を取り最新のバイタルメーターを持ち出そうとすると、待ったを掛けられた。次の開発対象にするから待てだと。ふざけるな。

 俺は、契約書の項目を上げ持ち出そうとするが、それなら契約事項の緩和しろと言ってきた。いい加減に頭に来た。

 お互いのやり取りで、間に休憩を挟んだのでこれ幸いと、公安庁と弁護士の友人に今回のやり取りを説明、証拠の契約書のコピーと録画していた交渉の映像を送った。その後、交渉が再開したが、俺はリアルタイムに友人に情報を流し続けた。

 1時間後には、公安庁の捜査課の連中が脅迫の現行犯で連れて行った。

 何でも、あの局長 贈収賄と経費不正使用の嫌疑が掛けられていたが、証拠がなかったんだとか。今回の件で、足がかりになると喜んでいたよ。

 手間を食ったが、ようやく東海支局へ行ける。


 東海支局へ到着したが、すっかり夜になってしまった。

 しかし、途中で伊島とも途中で合流できた。

 あいつは、上手く行っているらしく助手2人も連れてやってきた。

 羨ましい限りだ。


 三上・葉山と再開して、飯を食いながら情報交換と近況報告として、バイタルメーターと関西支局でのゴタゴタを話した。

 葉山は、バイタルメーターに興味津々だった。

 三上は、その話で被験者のベットにバイタルメーターが仕込んであることを思い出したようだ。

 飯を食って、被験者の様子を見ながら被験者のデータの考察と仮説の意見交換をしていたら夜が明けた。

 夜が明けたら、水無月がなかなか良い装置と共にやってきた。

 水無月が持ってきた魔力分析装置とここの魔力測定装置を組み合わせれば、リアルタイムで魔力塊マナ・コアの3Dマップが作れそうだ。

 今までは、回転する魔力塊マナ・コアの3Dマップは、リアルタイムで表示出来なかったから、魔力検査が楽しみだ。万全を期すため、仮眠を取ろう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る