第114話 模擬戦

 準備運動が終わったので、伊坂さんと対峙する。

 篠本さんの合図と同時に一足飛びに距離を縮め、右の正拳を打ち込む。

 伊坂さんは、右手で受け止めたて掴んだ。

 右手を引き、固定された右手の反動を利用して、左足の蹴りを伊坂さんの右膝側面に打ち下ろす様に放つが、伊坂さんは右手を離して後ろに飛ぶ。


 お互いに距離を取った状態で構え直す。


 再び、一気に距離を詰める。

 先程より早く、半歩深く踏み込んで右の正拳を打ち込む。

 伊坂さんは、今度は受けずに私の左側に躱しながら、右正拳を顔面目掛けて打ち下ろしてきたが、後15cm位まで迫った時にバックステップで距離を取った。

 直前まで、伊坂さんの頭が有った位置に、石柱が立っていた。


 伊坂「ふうー。あぶないあぶない。

 カウンターで石柱を当てに来るとか、なかなかやるね。」

 そう言いながら、構える。


 伊坂さんが、真っすぐ飛び込んで来る途中で消える。

 しかし、私は正確に動きを追尾できているので、最短最速で動き、攻撃をさばき、反撃を行う。

 それを、なして攻撃に繋げてくる。

 お互いに、攻撃をさばき、なし、反撃を行う。


 山本「大隊長。あの子何者なんですか?

 すすむの攻撃を正確に捌くなんて、普通出来ないですよ。

 しかも、お互いに攻防を入れ替えながら、双方攻めきれないってどういう事ですか?

 晋の奴も、本気を出しているのに、互角とか在りえん。

 本当にランクBか?」


 篠本「そろそろ、良さそうだな。高橋君合図を」


 高橋「はい」


 大きく息を吸ってから「神城、ゴー」と大声で叫んだ。


 私は、その声が聞こえた瞬間に、距離を大きく取った。

 伊坂さんも追撃をしようとしたが、高圧の水を地面から噴き上げて出鼻をくじく。


 身体強化を技能スキルから能力アビリティに切り替える。

 魔力纏身まりょくてんしんで覆った身体が、薄っすらと白く輝く。

 伊坂さんの顔に驚愕の表情が表れた。


 双方の距離は20m弱、瞬時に詰めて右正拳を放つ。

 伊坂さんは、慌てて右スッテプで躱すが、拳に纏った魔力が体に掠り数m飛ばされる。


 私は、素早く向きを変えるが、追撃を行わずに構え直す。

 飛ばされた伊坂さんも素早く体勢を立て直して、構え直すがその表情は驚愕に染まっている。


 伊坂さんは、表情を引き締め、一気に距離を詰めて攻撃をしてきたが、私はそれを左腕で受け止めて、1歩踏み込んで右正拳を打ち込む。


 伊坂さんは、当たるのに合わせて後ろに飛んだが、相当なダメージが入った。

 伊坂さんの着地に合わせて、複数の氷の刃を空中に生成して首元に突きつける。


 篠本「そこまで。」

 氷の刃と魔力纏身を霧散させる。

 山本さんは、顎が外れるのではないかと思うほど大きく開けて驚いている。


 伊坂さんに一礼をしてから、篠本さんの元に歩いて行く。

 伊坂さんも、拳が当たった場所を手で押さえて、篠本さんの元に歩いて行く。

 山本さんは、高橋さんに背中を叩かれて正気に戻ったようだ。


 全員が篠本さんの元に集まった所で、

 篠本「改めて紹介しよう。の神城 優准尉だ。

 この事は、他言無用だ。」


 伊坂さんと山本さんの顔が呆けている。

 理解が追いついていない様だ。


 伊坂さんは、篠本さんの言葉を小声で復唱を繰り返している。

 しばらく沈黙していた山本さんは、「はあ!! 守護者だと」絶叫が響いた。



 二人が落ち着くのに数分を要した。

 篠本「落ち着いたか?」


 伊坂「はい、もう大丈夫です。」


 山本「本当に、その子が守護者?」


 高橋「山本!」


 山本「いえ、実力から守護者と言われれば納得出来るのですが。

 その、外見が全くそう見えないので、つい。」


 篠本「間違いなく、彼女は守護者だ。

 これは、極一部の者しか知らない事だが、君達が応援に行った資源ダンジョンの奥のダンジョンで、彼女は女王クイーンタラテクトを単独討伐している。

 ついでにいうと、道中の魔物も彼女が討滅したそうだ。

 その数は、4桁に届いたようだ。」


 伊坂・山本「「はあ?」」


 山本「マジかよ」


 伊坂「一体どうやって?」


 高橋「超低温の氷雪嵐アイスストームで、粉砕一掃したそうだ」


 山本「訳がわらん」


 伊坂「粉砕一掃なら、道中の魔物の残骸が少なかった事の説明が成り立つ」


 篠本「そろそろ本題に戻るぞ。

 作戦行動時には、お前らの隊に配属する。

 また、神城の戦闘訓練の相手を務めろ。」


 山本「ちょっと、待って下さい。

 守護者と一緒の隊って、何をさせるつもりですか?

 それに、戦闘訓練の相手って、晋でも相手にならなかったのにどうやって務めるんですか?」


 篠本「決まっているだろ、神城はランクS能力者だが経験が足りない。

 経験を積ませるのが、お前らの仕事だ。」


 山本「おいおい、どうすればいいんだよー。」

 頭を抱えてしまった。


 篠本「中部方面部隊最強の二人がそんな様子でどうする。

 普段から、他部隊のランクAと模擬戦を希望していたくせに。」


 山本「確かに、普段の訓練では晋以外と模擬戦をする事が無いから、そんな事言った気もしますが、それでもランクS相手にどうにかなるはず無いでしょうが」


 篠本「全く、情けない事言うな。

 伊坂、さっきから静かだどうした。」


 伊坂「俺達二人だけに能力開示したという事は、普段は隠蔽いんぺいすると言う事ですか?」


 篠本「その通りだ。普段は、先に見せた能力という事になる」


 伊坂「隊での行動時は、後衛支援ということか。

 それなら、作戦行動に影響はないな。

 戦闘訓練そのものは、色々と考えないといけないが、経験を積ませるだけなら俺達でも何とかなるか。

 前衛、後衛どちらもこなせる様にしないといけないのか。

 これは、結構大変だぞ。」


 山本「お前、前向きでいいな」

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