第166話 戦術課 一般隊員との模擬戦(4)
「非常識な威力とは、失礼ですね。
創意工夫次第では、コレ位の威力は出せます。
特に水・土は、放出・具現化系を問わず質量が大きいので、単発での威力は火・風系を上回る事ができます。
また、具現化系は、物質そのものを魔力によって具現させています。
具現化された物は、能力者の魔力が浸透しています。
すなわち、他の物質と比べ、生成した能力者との相性が非常に良い物質です。
それがどういう意味か理解出来ていますか?」
浅野3曹に話を振る。
「え?
そんな事考えた事も無かった。
分かりません」
と、かなり狼狽した感じだ。
周りを見渡して見るも、理解出来ていないのが見て取れる。
これは、訓練校や各戦闘部隊が、過去の経験を元にした戦闘教育・訓練が行われている為で、各系統の
「生成した能力者と相性が良いと言う事は、その物質への魔力伝達性も良いと言う事です。
それは、少ない魔力量で強化・変形・操作が容易になるという事です。
だから、都竹3尉の攻撃を全て防ぐ事が出来る程、強い水の膜を展開出来るのです。
水の弾丸も同じです。
魔力で強化された水に超高圧を掛ける事で、
これは、着弾時の衝撃も内部圧縮に使い、弾丸先頭から極細のウォータージェットを噴出する事で、石板に穴を空けています。
この様に工夫次第では、威力を何倍にも上げる事が出来ます。
水の具現化系
今見たように、少ない魔力量でも十分な攻防手段となり得ます」
私の説明を聞いた隊員組は、驚愕を露わにしている。
彼女達の中にある水の
一部の高レベルな能力者が、ウォータージェットを使える位の認識なのかも知れない。
そんな常識が、根底から覆る技術を目の前で見せられたのだ。
この反応は、ある意味仕方がないのかも知れない。
一方、田中さん達は
「へぇー、そうなんだ」
程度の感想で、事の重大さに気付いていない。
「はい。実際に使った水の量ってどの位ですか?」
田中さんが、右手を上げて質問してきた。
彼女は、水の具現化系
彼女に分かりやすい様に、見えやすい位置に展開していた水を全て集める。
「コレぐらいです。容量は分かりますか?」
と問いかける。
水玉を見た彼女は
「思ったより小さい」
と呟いた後、しばらく水玉を眺めてから
「3~4
と言うので
「水の弾丸分減りましたが、2
と答えると、田中さん達は
「そうなんだ」
程度の反応だが、隊員組からは
「ありえない」
「少な過ぎる」
等々の驚愕の言葉が溢れている。
隊員組の方に向き直り
「一つ言っておきますが、今の貴方達では私の技の再現不可能です。
この様な技術は、高度な魔力制御能力が必須です。
そして、貴方達の魔力制御能力は未熟です。
技術供与出来るレベルを満たしていません。
まずは、魔力制御能力の向上に努めてください」
隊員組全員が、悔しさを顔に滲ませている。
年下の上官に未熟と言われるのは、精神的に堪えるのだろう。
「これで、総評と模擬戦を終わります」
そう言うと、全員が整列して
『ありがとうございました』
と唱和していた。
「ところで、何故田中さん達まで一緒になっているのですか?」
田中さん達は、お互いに顔を見合わせた後、
「えーと、何と無く」
田中さんが答えた。
そう、この唱和には、田中さん達4人と南雲さんと平田さんも混ざっていた。
この後は、平田さんと南雲さんを除いて、いつもの
南雲さんは、田中さん達に高圧縮学習の2回目を直ぐに始めたがったのだ。
当の田中さん達は、模擬戦を見た後だったので、訓練の方に意識が行っていた。
そのため、高圧縮学習の事が、頭からすっかり抜けていた。
なので、南雲さんに
「これから行う訓練は、魔力調律状態を維持する訓練です。
訓練後は、
1回目と比較するデータとしては、面白いと思いますよ。
それに彼女達には、最初の1回目だけの訓練参加ならどうでしょう?
それなら、30分程度で終わります」
と提案を行った。
南雲さんは、少し考えてから了承した。
了承した理由は
「最初から魔力が活性化状態で、高圧縮学習を使用したデータを取った事がない事」と
「2回目の使用ならほぼ初回に近いデータが取れる事」
の2点の為だ。
訓練では、隊員組が大いに訓練生組を意識していた。
訓練生組は、まだ自力での調律状態に成れないが、維持時間が10分を超えていた。
隊員組は、都竹3尉と先日から来ている2人は自力で調律状態になれるが、維持時間はまだ1分位しか保たない。
模擬戦をした3人組は、自力で調律状態に成れない上、維持時間が20秒位しか保てなかった。
そんな訳で、隊員組は大いに気合が入っていた。
気合を入れるのは良いが、気合で維持時間が伸びる事は無いのだけど。
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