第244話 1年次夏期集中訓練 1日目(7)

 美智子さん達と別れ、第三射撃場の別の実験室に移動する。


 部屋の奥には、3人の研究者が棚台車の前に居る。

 棚台車には武器が乗っている。


 部屋の中を見渡す。

 戦闘訓練を行うには十分な広さが有り、防御結界も張れる様になっている。

 そして、アチコチにカメラと計測機器が設置されている。


 山本さんに続いて研究者達の所に向かう。


「あ、山本さん、伊坂さん。おかえりなさい。

 神城さんもよく来たね」

 私達に気づいた研究者が声を掛けてきた。


 1人の研究者が

「山本さん。要望の改修が終わりましたよ」

 と言って、山本さんを呼ぶ。

 山本さんは、小走りでその研究者の元に走って行った。

 山本さんを見送り、私と伊坂さんは歩いて向かう。


 私と伊坂さんが研究者達の所に着くと、山本さんが研究者から受け取った装備を着けているけど、変な武器だ。

 外見は、腕盾アームシールドの下部側に、腕盾アームシールドと平行に幅広の両刃直剣が生えている形をして、腕盾アームシールド部分では半分だけ出ている。

 刀身の大部分が金属製で、刃の部分は透明な薄緑の物質で構成されている。


 山本さんは、刀身が肘側から突き出た形で右腕に装備した。

 腕を下ろした状態でも、頭より上に剣先が出ている。

 肘を振り回して使うのかな?


「変わった武器ですね」

 と私が問うと

「そうだろう。

 俺好みの癖のある武器なんだぜ。

 俺と1戦やってみないか」

 と嬉しそうに言う。


 まあ、元々戦闘訓練の為に来たので

「分かりました」

 と答えると、研究者の1人が

「神城さん。コレを使って下さい」

 と言って巨大な剣を指差す。


「流石にそれは大きすぎます」

 と答えると

「大丈夫。神城さんなら使えます」

 と謎の自信をもって返された。


 その後も、渋る私をしつこく1度使ってくれと懇願された。

 伊坂さんからも

「1度使えば納得してくれるみたいだから使ってみたら」

 と呆れた感じで言われたので、渋々了承した。


 研究者から大剣の説明と扱い方を教わり、防具を着用して大剣を携え部屋の中央付近で山本さんと対峙する。

 私が手に持った巨大な直剣は、刀身だけで私の身長超えの170cm、最も広い部分の幅は40cmもある。

 厚みは、最も厚い所で5cmはありそうだ。

 あと、柄の長さも50cmと長い。


 そしてこの剣の重量は、なんと200kgもある。

 いくら身体強化で持てると言っても、私の体重の6倍以上ある。

 重力の能力アビリティを使って重量を軽減しても、まともに振り回せない代物だ。


 この剣の刃の部分にも、透明な薄緑の物質が使われている。


 研究者達は、この刃の部分に使っている物質を魔晶結晶と呼んでいて、資源ダンジョンの最奥で見つかった透明な魔石を核にして成長させた物の1種だそうだ。

 あの透明な魔石は、研究室で増やす事が出来たので成長条件を変える中で見つかった物質だそうだ。

 特性としては、魔力を込めると強度が跳ね上がるそうで刃の部分に使うと切れ味も良いそうだ。


 伊坂さんが手を挙げる。

 山本さんは、右半身を半歩引き右腕を軽く曲げた。

 私は両手で正眼に構える。


「俺達の見立ては間違っていなかった」

「大剣幼女はロマンだ」

「女の子と巨大兵器は、正義!」

 と外野が騒いでいる。


 伊坂さんの「はじめ」の号令と同時に山本さんは右拳を突き出した。

 私はとっさに右にズレる。

 私に掠るかどうかという所を閃光が抜けた。


 感じ的に破壊小銃ブラスター・ライフルの低出力みたいな感じだ。


 山本さんは、私に狙いをつけて連射する。

 私は、そのまま右回りに回り込みながら閃光を躱しつつ、体の右側に体をねじりながら剣を右後ろに流して接近する。

 右下から左上に抜ける様に斬撃を放つ。


 山本さんは、右半身を前に出し、右肘を大きく曲げた状態で肘を突き出した。

 盾に取り付けられた剣で私の斬撃を受け、上方に逃がされた。


 振り切った剣の勢いに負け上体が流れる。

 無理に体を止めず流れる勢いに任せて前方に飛ぶ。

 着地する勢いを利用して距離を取り、山本さんの方に向き直る。


 山本さんは、右腕で受けの姿勢のまま、左手で腰に差した訓練用のナイフを抜いて振り抜いた姿勢で止まっていた。


 直ぐに右側に回り込み、右側から振り回す様に斬撃を打ち込む。

 山本さんは、左手のナイフで受け流す。


 剣を振り抜き、体を右回転しながら腕を体に巻きつける様にしながら踏み込み、更に斬撃を繰り出す。


 姿勢を下げ、コマの様な回転から斬撃を数度繰り出す。

 その間、山本さんは左手のナイフで受け流しながら、右手の盾の刃で受けようとしたり銃撃を行おうとするが、ただでさえ背の低い私が更に姿勢を下げて攻撃するので上手く行かない。


 そして盾の刀身を手首付近を支点にして180度旋回し、盾の前面に展開した。

 この剣を私の斬撃のタイミングに合わせて突き下ろした。


 私は、回転の軸足を左足から右足に切り替えると同時に、左足で床を蹴って体を捻り、上半身を床と水平にしながら山本さんの剣を弾き飛ばす。


 山本さんの上半身が大きく流れた。

 振り切った剣先が床に接触する。

 腕を強く引いて体に逆回転の右回転を与え、山本さんの背中に向けて斬撃を放つ。


 山本さんは、そのまま前方に倒れ込む事で私の斬撃を躱し、そのまま前転して立ち上がった。


 私は、右回転の低い姿勢で山本さんの大剣側から攻勢を掛ける。

 適度に上下にバラけさせた斬撃を打ち込む。

 山本さんは、右腕の刀身を使って斬撃を苦心しながらも受け流す。

 私の斬撃を盾で受けるとそのまま後ろに飛んで距離を取った。

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