第243話 1年次夏期集中訓練 1日目(6)

「この6属性は、いわゆるレア属性と呼ばれていた物です。

 では、各属性を説明します。

 雷は、電撃や放電と言った電気系の現象を表す属性です。

 氷は、氷系の現象を表す属性です。

 この2つは、レア属性の中でも有名だと思います。


 木は、植物に作用する現象を表す属性です。

 実際に戦闘での使い道が限られている為、あまり知られていません。


 金は、金属を始めとする鉱物に有用に効果を発する属性です。

 なので、永らく土属性と混同されていた事が今回の検証で分かりました。

 ちなみに羽佐田さんの属性も、土ではなく金で有った事が今回の検証で分かっています。


 塵は、物質崩壊系の属性です。

 物質を粉砕・粉塵化する砂塵と言う能力アビリティが該当するだけで、詳細が分かっていません。


 最後の命は、生命に関する属性です。

 この属性に属する能力アビリティは、解毒・治癒・再生・耐性が確認されています。

 従来、回復系と呼ばれて一緒くたにされていた回復や自己再生は、命属性では無く無属性でした。

 無属性については、後で行います」

 と言うと、画面が切り替わり、画面には球体が表示された。


 基本属性と複合属性を表した基準円が、球体の中央付近にある。

 基準点を底辺とした2つの半球の頂点にそれぞれ、光と闇と表記されている。

 そして、球体の中心、重心には無と表記されている。


「光は、灯りや閃光や浄化の能力アビリティが確認されています。

 闇は、影や重力の能力アビリティが確認されています。

 そして、光と闇は、現状複合属性の有無は確認できていません。


 最後の無ですが、かなり特殊な属性です。

 無属性は、単体で存在しながら、他の属性の様に振る舞う事も出来る特性を持っています。

 この属性は、これまでの検査で全員が持っており、身体強化や技能スキルに影響している事までは分かっています。

 しかし、何がどの様に作用しているかまでは不明です。

 この様にまだ謎に包まれた属性です。


 属性の説明は以上です。

 そして、検査結果に書かれている数値は、あくまでも取得可能性や成長速度が優位なものが高い数値を示す傾向があります。

 数値が低いからと言って、取得できない訳では有りません。

 ただ、より困難だと言うだけです。

 それを踏まえて数値を確認して下さい」

 と言って説明を終えた。


 画面には美智子さん達4人の11属性の値が示されている。

 皆、しばらく自分の数値とにらめっこした後

「数値が0になっている項目は、取得可能性が無いと言う事でしょうか?」

 と都さんが質問すると

「まだ仮説ですが、才能が無いと言うより取得条件を満たしていないと言う事だと思います」

 と安藤さんが答えた。


「そうか。まだ可能性があるんだ」

 とちょっと安堵していた。


 それもそうだろう。

 都さんの属性値は、火と風と無だけで他は0だったからだ。

 他の3人は、数値が低くても複合属性に数値が入っていたから、自分だけ複合属性を習得出来ないと思っても仕方ない。


 皆の属性値は、以下の通りだ


 田中 美智子

 火:9

 水:13

 命:2

 無:24


 都竹 都

 火:15

 風:12

 無:27


 土田 郁代

 地:9

 火:9

 金:7

 無:25


 鳥栖 千明

 地:4

 火:3

 風:5

 水:2

 塵:2

 光:8

 無:24


 うん。なんだろう。

 美智子さんは、治癒系?かな

 都さんは、お母さん都竹3尉似の様な気がする。

 郁代さんは、魔道具作成に適しているな。

 千明さんは、なんだろう?

 なんだか幅広く才覚があり、特に光が高い。

 当面は、光属性の習得を目指した方が良さそうだな。

 等々を美智子さん達と話したあと


「優ちゃんの値は?」

 と千明さんが言った。


 私は

「参考にならないよ」

 と答えるが、私だけ公表しないのはずるいと4人が言い始めたので、仕方無しに安藤さんの方を見る。


「神城さんの値は、本当に見ても意味がないのだけどな」

 と言いながら隣の部屋に指示を出して表示された。


 それを見た美智子さん達4人の顔には、疑問が浮かんでいた。

「何?このOORって?」

 と千明さんが疑問を口にする。


 私のデータは、OORと1文が表示されていた。


「Out-Of-Rangeの略で、意味は範囲外。

 神城さんの能力値が高すぎて、この機械だと測定出来なかった」

 と安藤さんが答えた。


「優ちゃんは、こんな所でも規格外なんだ」

 と郁代さんがボソっと呟くと、部屋に居た全員が頷いた。


 属性習得訓練を行う為、第二射撃場に移動する事になった。

 と言う訳で、移動しようと言う話しが出た所で扉が開いた。

 開いた扉の向こうには、複合装甲の防具を身に着けた中部方面隊の伊坂さんと山本さんが立っていた。

「お。ここに居たか」

 と山本さんが言って、入って来た。


「どうしてここに?」

 と聞くと、私の前に来て

「新素材で作られた武器の評価試験の為に出向中だ。

 あと、副司令から、夏期集中訓練で帰隊している神城さんの戦闘訓練の相手になってやれとさ」

 と山本さんが状況を説明してくれた。


「で、どうする?」

 と伊坂さん問う。


「分かりました。やりましょう」

 と答えると、伊坂さんがニヤリと良い笑った。

 相変わらずの戦闘狂だ。


 えーと、美智子さんが、伊坂さんの笑みを見て頬を染めている。

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