第245話 1年次夏期集中訓練 1日目(8)
私も山本さんと距離を取る様に後に飛び上がり、5m位の高さで空気の足場を作り上に立つと同時に大きく振り被った。
山本さんが、私を見失っている間に剣を振り下ろすと同時に
私の左手に柄尻から15cmの柄を残して、山本さん目掛け飛んで行く。
剣は、空中で縦一列の6本に別れ山本さんを襲う。
山本さんは、慌てて私から見て左方向に飛んで避けた。
剣は、6本共床に突き刺さった。
私は、空気足場を蹴り降りる。
加速した勢いそのまま床を蹴り、最も近くに突き刺さった剣に向かって走る。
山本さんが、崩れた姿勢を立て直す位置に合わせて、左手に持った柄を投げる。
この柄には、刃渡り20cm位の細身の片刃の直刀が付いている。
山本さんが左手のナイフで直刀を弾く間に、手前の2本の剣を取り、山本さんに向かって走る。
この2本は、左手に持った大型ナイフと右手に持ったショートソードだ。
大型ナイフは、刃渡り55cm位で、直角三角形の垂線の底辺付近に、握る為の穴が開いた形状だ。
ショートソードは、刃渡り70cm位で幅7cm高さ55cm位の長方形の上に三角形が乗っている様な形状で、柄は大剣の時に鍔だったものが真っ直ぐの伸びている。
この2本の剣には鍔がなく、剣の重心も一般的な物と違っているので、扱いに注意が必要だ。
山本さんの間合いに入った瞬間に、大上段からの一撃を放ってきたが、左手のナイフで内から外に向かって強く弾く。
山本さんの動きが一瞬止まる。
そのまま私の間合いまで入り込み、右手のショートソードで山本さんの喉目掛けて突きを入れる。
山本さんは、左手のナイフで辛うじて防御する。
右手のショートソードを引きながら、身体を反転させながら踏み込み、左腕を伸ばしてナイフを首筋に当てて終了だ。
「そこまで」
伊坂さん号令で、お互いに武器を引く。
研究者達が床に刺さった武器の回収に走る。
取り敢えず手に持った武器を棚台車の上に置く。
山本さんと伊坂さんも棚台車の側にやって来た。
「結構上手く使えるつもりだったんだがな」
と言って、左手で頭を掻いている。
「私相手では相性が悪かったですね」
と言うと
「その通りだ。
神城さん相手に武器の長所を全て潰されていたな」
と嬉しそうに伊坂さんが言う。
山本さんは、右腕に着けた武器を外しながら
「ああもう。次はうまく使って見せる」
と息巻いている。
研究者達が剣を抱えて戻ってきた。
彼らは剣を棚台車に載せると
「大剣はどうでしたか?」
と聞くので
「はっきり言って、使い物なりません」
と言うと、3人共床に崩れ落ちる程、激しく落ち込んだ。
落ち込んだと思ったら、ガバっと起き上がってきて
「ど、どこが悪いのですか」
と縋ってきたので
「全部」
と答えると、再び床に崩れ落ちた。
それでも縋るように顔を上げたので、彼らを見ながら
「そもそも私よりも大きく重いって時点で使えない。
ましてや、変なギミックが入っているせいで重心がかなり外側にあるから、重力の
大剣を振ると重量で体が流れるので大振りになってしまう。
だから、振り下ろすか振り回すかの2択しか無い。
大振りにで体が流されるから、流れるに任せた回転する様な動きの移動攻撃を行うしか出来なかった。
質量兵器として考えた場合も、ギミックが入っているせいで強度不足。
これなら山奈さんの様な
それに、大剣の分割機構も刀身が縦に6分割で分かれるとか訳分からない。
正直、使い所が有りません。
それに分割された剣も使い勝手悪い。
各剣の形状が特殊な為、バランスが悪い。
外側2組の剣は、鍔が無いから受け流しで手元に刃が滑らない様に気を使う必要があって使いづらい。
どこにもメリットが有りませんね」
と酷評をすると、研究者3人は床にめり込む様に倒れた。
「結構辛口だな」
と山本さんが言う。
「山本さんが使っていた武器だって、欠点だらけで利点なんてほとんど無いじゃないですか」
と言うと
「うぇ、こっちに飛び火した」
と失敗したという顔になった。
「こんな大剣で無く、ナイフやショートソードだったらもっと早く終わっています」
と言うと
「グハ」
と言って胸を押さえて吐血する振りをする。
「遠距離を銃、中距離を剣、近接を拳で対応するつもりだったんでしょうが、その機構の要であり、最大の弱点である支軸が壊れると、機能の大半を失ってしまって使えなくなった。
それに腕に固定して重量もあるから、バランスも悪く攻撃範囲が狭められている。
私の様に小さくて速い相手には、最も不適切な武器となっていた。
しかも右手はグリップフォルダーで固定されているから、間合いの内側に入られると左手1本で相手せざる得ない。
それなのに武器を放棄しなかったのでは、出来なかった。
欠陥品ですね。
それに、これらの欠点を補うべき左手装備がナイフ1本と言う事は、この様な状況を想定していない。
もしくは、『まあ、なんとかるだろう』的な考えで選ばなかったのでしょう」
と言うと山本さんは、胸を押さえたまま倒れ込んだ。
「後者で当たりぽいですね」
と言うと、伊坂さんが
「その通り」
太鼓判を押した。
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