第246話 1年次夏期集中訓練 1日目(9)
「よし、次は俺とやろう」
と伊坂さんが言った。
足元で床に転がる研究者達を見ながら
「それは構いませんが、武器はどうしましょう?」
と言うと、伊坂さんは
「奥の棚に通常の武器と同じ形の物が置いてある」
と移動棚の更に奥、壁際の棚を指さした。
「分かりました。行ってみます」
と言うと奥の棚に小走りで行く。
奥の棚には、刀身が全て魔晶結晶で作られた武器が置いてあった。
戦闘ナイフかショートソードを探していると、刀も置いてあった。
刃渡りは70cm位。
柄は、多分魔鋼製で滑り止めを巻いているだけの物だ。
手に持って見ると見た目以上に軽い。
一旦刀を置き、他の武器も見ている。
大剣、バスターソード、ロングソード、ショートソード、
ショートソードも持ってみると刀の倍位の重さだ。
ショートソードを置き、刀を掲げてみる。
薄い緑色の透明な刀身が不思議な感じだ。
その場で軽く素振りと型をなぞる。
基本的な刀の扱い方は、候補生時代の
振ってみた感じ悪く無い。
伊坂さんが
「神城さんは、刀を使うのかい?」
と言ってきた。
「どうしようか迷っています」
と素直に答えると
「綺麗に振れていたから、使い熟せると思うけど?」
と言うので
「以前、基本の型を習っただけです。
それに以前試しに使った時は、直ぐに刃をボロボロにしてしまったので、使い熟せていないと思います」
と答えた。
「なら、俺が教えようか?」
と言う。
「使えるのですか?」
と聞くと
「一通りね。
でも実戦だと、武器の耐久性優先でロングソードを使っている。
刀も悪く無いのだけど、遠征先だと手入れが疎かになるから、直ぐに刃こぼれを起こすし、鈍器代わりに峰で殴ると直ぐに折れるからな。
ロングソードなら、多少刃こぼれを起こしても問題ないし、ぶん殴ってもそれなりに保つ。
だから、ロングソードを常用しているだけだ」
と言う。
「では指南お願いします」
と言うと
「分かった」
と言って、大太刀を手に取った。
部屋の中央付近で対峙すると
「お願いします」
と言ってから、正眼に構えた。
伊坂さんも正眼に構え
「よし、来い」
と言ったので、真正面から打ち込む。
伊坂さんは、切先を軽く当て、私の太刀筋を流した。
そのまま伊坂さんの横を抜け、伊坂さんの方に向き直り構える。
今度は、伊坂さんが正面から打ち込んでくる。
先程の私と同じ太刀筋でだ。
伊坂さんが行った様に切先で相手の太刀筋を流す。
それを数度繰り返すと、「次」と言われたので、違う太刀筋の攻撃を行う。
今度は、その攻撃の太刀筋での受け流しを交互に行う。
それを延々と繰り返す。
そうして
「休憩にしよう」
と言う伊坂さんの掛け声で中断になった。
「だいぶ頑張ってね。
太刀筋も大分良くなった」
と伊坂さんが言ってくれた。
「あ、ありがとう ございます」
と荒い息遣いで言った。
「まだ、握力は残っているかい?」
と問われると
「手の感覚がありません」
と答えると、伊坂さんは、私の両手の間の柄を掴むと、ヒョイっと刀を取り上げた。
「うん。もう握力が無いね。
今日はここまでにしよう」
と言われたので
「ありがとうございます」
と答える。
「流石の神城さんも、
しみじみと言われた。
「
と答えると
「もう少し、身体を鍛えた方が良いな」
と言う。
「以前より筋肉が着きましたが、他人より筋肉の付きが悪い様で、あんまり筋肉が付かないのです」
と答える。
「そういう事なら、無理をしない範囲で筋トレをするしかないな」
と苦笑いされながら言われた。
武器を棚に戻し移動棚の方を見ると、山本さんと研究者3人が、山本さんが使っていた複合防盾をバラしていた。
山本さん達に近づくと、伊坂さんが
「どんな感じだ?」
と聞くと、山本さんが
「今回強化した所に問題は無かった。
刀身を回転させる支持軸を支える土台が歪んでいる。
刃を収納時に保持するフォルダーと固定器も破損していた。
やはり、刃を収納したまま、神城さんの攻撃を受けた時に破損したんだろう」
と言うと
「現状の構造だと、納刀状態での保持力に問題がありますね。
保持器の破損の影響で、支持台に歪みが出たみたいです。
なので、保持器の強度アップで対応は難しそうです。
新しい保持方法の検討も必要かと」
「これ以上保持器を大きくすると、更に重量を増やす事になる。
むしろ、本体そのものの構造から見直した方が良いな」
「現状で、コイツの強化は難しいので、メインフレームは再設計が必要だな」
「軽量化と高剛性化が、必要だな」
「そうなると、ソードの部分と
「あと、非常時のパージについても検討がいるぞ」
と口々に言う。
「まだ改良するつもりなんですか?」
と思わず聞くと
『当然』
と4人は、声を揃えて言う。
「根本的に欠陥武器としか思えないのですが」
と言うと
「この武器には、男のロマンが詰まっている」
「その通り。変形武器はロマンだ」
「複合防盾は、可能性の塊だ」
「攻防一体の装備こそ、次世代の星」
各々が熱弁する。
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