第247話 1年次夏期集中訓練 1日目(10)
変形する武器がカッコイイと言うのは分かる。
でも、実用性があるかと言われると微妙と言わざる得ない。
それに、このロマン武器には貴重な材料がかなり使われているはずだ。
私は呆れ気味に
「その武器に使われた材料は、許可を取った物なんですか?」
と聞くと、4人共固まった。
1人の研究者が
「大丈夫。試験用に申請した材料の中から工面している」
とぎこちなく答えた。
「試験用の材料を多めに申請したと」
と問うと、4人共絶句した。
「この魔晶結晶は、新素材なんですよね。
製造コストとか、相当掛かっているのではないですか?」
と問うと後から
「その通り、魔晶結晶の製造方法については改善中だが、1kgで100万円位掛かっている。
ましてや、それらの武器に使われたのは、結晶を切断した後に削り出された物だ。
それだけ大きな結晶は、まだ数作れないからな」
と言う声が聞こえた。
振り返ると、そこには松永さんが居た。
「神城さん。お久しぶり」
と声を掛けられたので
「お久しぶりです」
と返す。
4人は、青い顔で直立不動になっている。
「それで使ってみた感触はどうだった」
と聞かれたので
「まだ全力で魔力を込めていませんが、悪くない感触でした」
と私が答えると、伊坂さんが
「俺はあの大太刀が気に入ったな。
かなりの衝撃を与えても、刃こぼれ一つなかった。
あれなら現場でも十分使い物になる」
と答えた。
「それは良かった。
気に入ったなら、…しばらく試用して貰おうかな」
と言った後、4人の方に向き直り
「新しい
材料の性質調査に試験、そして改良。
それらが終わってもいない内から、何をやっているのですか?」
と静かに怒っている。
「まず、大太刀と刀の
耐久試験の為、二人に貸与します」
と指示を出すと、研究者3人は
『イエス・マム』
と返事をして、疾風の如く走って行った。
「良いのか?」
と伊坂さんが聞くと
「ええ、大丈夫よ。
魔晶結晶の研究・開発の責任者は私です。
その私が許可しました。
それに製造コストも、期間限定ですが解決しましたから」
と言って笑った。
「期間限定?」
と聞くと
「詳しい事は省くけど。
魔晶結晶を作るには、核になる結晶を結晶材料溶かした溶液に漬けて、高圧・高濃度の魔力下に置くと、結晶が成長する。
成長した結晶は、溶液の割合と魔力の圧力と濃度の比率を変える事で性質が決まるの。
そして、高圧・高濃度の魔力がコスト高の要因なの。
結晶材料なんて、1
でも、神城さんが、高エネルギー射撃室の余波エネルギー吸収装置の魔力貯蔵庫を満タンにしたでしょう。
あの魔力を魔晶結晶の生成に当てたのよ。
そのお陰で蓄魔に特化した魔晶結晶を大量に生産出来たし、装置の魔力貯蔵庫も空に出来たわ。
そうして出来た魔晶結晶は、装置の増加魔力貯蔵庫に使ったから、どんどん使ってね。
神城さんから溜めた魔力で、様々な種類の魔晶結晶も量産出来る様にするから、当面コストの心配をしないで、大量に魔晶結晶を作れるという訳。
特に蓄魔の魔晶結晶は、従来の畜魔器の10倍以上も貯められる様になったから、もう、引く手数多よ」
と言って笑っている。
「そんなに直ぐに出来るものなんですか?」
と聞くと、非常にご機嫌な様子で
「魔晶結晶は、ちょっと特殊なんだ。
魔晶結晶は、掛ける魔力濃度と圧力によって成長速度が変わる特性もある。
しかも、濃度と圧力が高い方が品質が良いんだ。
だから、今回、高濃度高圧力を掛けて生成してみたら、わずか数時間で非常に品質の良い大結晶が生成出来たと言う訳。
だから、神城さんが居る内に生成技術の最適化を行わないとね。
戦闘訓練を終えた様だけど、この後は何をするのかな?」
と聞かれた。
「休憩ですね。無理はいけませんから」
と伊坂さんが私を見ながら答えた。
松永さんも、私を見ながら
「確かに重要な事だね」
言った。
その後、時間を確認すると
「休憩後で構いませんので、高エネルギー射撃室に行って下さい」
と言われた。
「魔力貯蔵庫に魔力を貯めたいのなら直接貯めましょうか?」
と言うと
「それは有り難い申し出なんですけど、お断りします」
と返された。
「それは、どうしてですか?」
と聞くと
「余波エネルギー吸収装置の改良型を設置したからです。
今は、余波エネルギー吸収装置の吸収効率が悪いので、改良を進めている最中です。
将来的には小型して、魔力防護壁と組み合わせる事を目指しています。
その為にも、吸収効率の向上は必須です。
また、完成した装置を訓練校や各駐屯地の訓練施設に設置して、魔力を集める事に使いたいと考えています。
その集めた魔力で、安定した魔晶結晶生産環境の構築を最終目としているので、是非とも実験にご協力をお願いします」
と言われた。
「分かりました。後で向かいます」
と返す。
「お願いします」
と松永さんが言い、伊坂さんが
「休憩する時間が無くなるから、行こうか」
と言って歩き出す。
私は「はい」と答え、伊坂さんの後を追う。
そして、残された山本さんが慌てて追いかけて来た。
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