第86話 ダンジョン(2)

 扉の向こうから、ガシャン、ガラガラ、ゴロゴロと金属が落ちる音がした。


 黒崎「私の探知範囲内に敵性反応はありません。

 室内の瘴気が減ったせいでしょうか、内部の様子が見やすくなりなりました。」


 太和「そうか、神城の方はどうだ?」


「私の探知では、1体残っています。」


 太和「なら上出来だ。突入するぞ。」


 その言葉で陣形を整える。

 先頭を太和さんと山奈さん

 中衛を戸神さんと私

 殿を霜月さんと黒崎さん


 太和さんが扉を開け突入する。

 部屋中央付近の天井から降り注ぐ光に映し出される赤黒い骨と武具が、部屋中に転がっている。

 赤黒い骨は、赤黒い煙を上げながら徐々に消えていく。

 部屋の奥に佇む1体の黒いスケルトン。

 背は3m近くあり、額には特徴的な角が生えており、右手にその体格に合った大きな剣を持ち、左手には大きな円盾ラウンドシールドを持って佇んでいる。


 太和「ブラック・オーガスケルトンか」


 山奈「速攻で仕掛けますか?」


 太和「いや、その必要はなさそうだ。」


 山奈「え?」


 その会話を待っていたかの様に、剣と盾を構え走り出す

 剣と盾を構え走り出すブラック・オーガスケルトン。


 部屋の中程で、崩れ落ち、派手な金属音が響いた。

 立ち上がろうともがいていたが、直ぐに動かなくなった。


 山奈「出番なく終わってしまいましたね。」


 太和「まだ、先が在るんだ。

 楽に進めるに越したことは無い。

 取り敢えず、散らばっている戦利品を集めよう。」


 霜月「その通りだな。

 取り敢えず、太和の作戦が有効である事が証明されただけだ。」


 今回の一方的な殲滅劇は、太和さんの作戦によるものだ。

 作戦は、扉越しに部屋の中にバスケットボール位の浄化機能付きで、部屋全体を照らす程明るい照明弾を作り、部屋中央付近の天井に留まるように1つ作って撃ち出す。

 さらに、強い浄化機能付きで、ほんのりと光っているのが分かる程度の照明弾を左右壁中央付近に留まるように撃ち出す。

 合計3発の浄化機能付き照明弾を設置後、直ぐに変化が起こった。

 崩れ落ちていくスケルトンの音が続き、音が無くなった所で突入した次第だ。


 何故この様な作戦になったかというと、ダンジョンの壁や扉には魔力を遮断する効果がある。

 しかし、ある程度魔力強度があると、扉程度なら大幅に減衰するが、魔力を透過する事が出来る。

 その為、私と黒崎さんの魔力強度の差で、室内の探知距離と精度が大幅に異なる結果となった。

 また、浄化の波動等を扉の前から放っても、大幅に減衰する為室内にはほどんど届かない。

 そこで、室内に透過した魔力で浄化機能付き照明弾を作って、攻撃しようという作戦だったのだ。


 取り敢えず、散らばっている武具を一箇所に集める。


 太和「神城、鑑定してくれ。」


「え、私、能力鑑定しか持っていませんよ。」


 太和「ん? 三上から習っていないのか?」


「何を習うのですか?」


 太和「上級能力鑑定は、人だけではなく、物の能力も鑑定出来るのだぞ。」


「初耳です。」


 太和「取り敢えず、見てみろ。」


「分かりました。」

 言われた通り、能力鑑定で武具を見ていく。

 何となくだけど、どの位の能力かは漠然と分かる。

 能力鑑定で見たものを、能力別に分類していく。


 鑑定の結果、4つに分別された。

 能力的に無しで材質が違う物が3山と、特殊な能力が付いた武具だ。


 特殊な能力が付いた武具は、

 大剣

 材質:不明

 付加能力:強固、鋭刃


 盾

 材質:不明

 付加能力:強固、衝撃緩和


 槍

 材質:不明

 付加能力:鋭刃、軽量化


 の3点だった。


 それを見た太和さんは

 太和「取り敢えず、この3点は持ち帰ろう。

 他の武具は、鋼と鉄の武具みたいだから、余裕があれば回収班に引き渡しでいいな。」


 山奈「一旦、ダンジョンの外に放り出しますか?」


 太和「いや、持ち帰る武具は、一纏めに括り付けて通路に置いておこう。

 帰りに回収する。」


 山奈「了解」


 そう言うと、手早く紐で一纏めにして、入り口の扉を開けて通路に立て掛けていた。


 太和「時間に余裕があれば運び出す所なんだが、嫌な予感がするからさっさと攻略しよう。」


 黒崎「太和さんの嫌な予感って、100%当たるから嫌だな。」


 戸神「そうかも知れませんが、今回は相性の良い神城さんが居るので、相当楽に攻略出来ると思いますよ。」


 黒崎「そうですね。」


「私と相性が良い?」


 戸神「ええ、このダンジョンは、アンデット系が主みたいです。

 神城さんの浄化は、魔力や瘴気をエネルギー源として活動する魔物の弱点です。

 ダンジョンを破壊しない様に手加減するなら、我々でも多少苦戦するはずのレッド・スケルトンの群れも、一方的に殲滅出来ていますからね。」


「レッド・スケルトンのランクってどの位なんですか?」


 山奈「スケルトンは、元種や能力によって強さが上下します。

 人型スケルトン単体の基本ランクは、

 スケルトンがランクF

 ブルー・スケルトンがランクE

 レッド・スケルトンがランクD

 ブラック・スケルトンがランクC

 シルバー・スケルトンがランクB

 ゴールド・スケルトンがランクA

 クリスタル・スケルトンが暫定ランクSです。


 クリスタル・スケルトンは、発見事例が1件のみで、ヨーロッパで甚大な被害を与えた後、次元の狭間に消えたとされています。


 また、集団に成れば、その数に応じて脅威度は上がっていきます。

 今回の場合、想定脅威度はランクBに相当します。


 ちなみに過去、討伐されたスケルトン・ドラゴンもしくはボーン・ドラゴンと呼ばれる存在は、ランクBでした。」


 霜月「スケルトンだからといって、あなどって良い相手ではないという事だ。」


「はい、分かりました。」


 太和「じゃあ、先に進むぞ。」


 太和さんを先頭に進む。

 通路は相変わらず狭いが、敵も罠も無い一本道が更に地下に向かって続いていた。


 再び扉が出現した。

 上の階と同じ様に索敵した結果、同じ様に待ち伏せされて居たので、上の部屋と同じ戦法で殲滅した。

 戦利品に、特別な物は何も無かった。

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