第85話 ダンジョン(1)
再び、太和さんと私が先頭に立って、残り10mを移動する。
目的地の起伏部は、更に臭いが強くなっているし、僅かに
「ここです。」
太和「此処が、違和感と臭いの元か?」
「はい、そうです。」
太和「特に変わった所は、見受けられないな。」
戸神「そうですね。
少なくとも、私にはなにかが在るように感じません。」
戸神さんの言葉に、他の面々は頷いている。
太和「神城、お前はどんな風に見えているんだ?」
「私には、この場所が僅かに陽炎の様に揺らめいて見えてます。
臭いも、一段と強くなっています。」
太和「なら、陽炎の範囲を教えろ。
この場から氷か土の杭で、範囲を囲んでくれ。」
土の杭を生み出し、陽炎の範囲に杭を4本を撃ち込む。
すると太和さんは、地面に手を当てそのまま姿勢で固まっている。
暫くすると、杭で囲んだ範囲の地面が変化し始めた。
杭の範囲内の地面が退かされ、観音開きの扉が出現して、勝手に開かれた。
強烈な臭いが溢れ出した。
思わず、両手で口と鼻を押さえた。
太和「ダンジョンの入り口が隠されていた。
恐らく、先程の岩場に在った物を移動させたのだろう。」
山奈「流石に、ここまで瘴気が濃いいと私でも分かります。」
戸神さんはそっと、私を見ながら「瘴気に敏感な神城さんには、辛そうですね。」
涙目で口と鼻を手で押さえて蹲っている私の背中を、霜月さんが擦ってくれている。
太和「神城、悪いがちょっとこっちに来てくれ。」
ダンジョンの入口に居る大和さんに呼ばれて、ダンジョンの入口に近づくと臭いはどんどん強くなる。
ダンジョンの入口前に立つと、ダンジョン内から強烈な臭いが溢れ出ている。
これから此処に潜ると考えると、既にやる気が底を着いた。
大和「そう、やる気をなくすな。
光弾に浄化の能力を持たせて放つことは出来るか?」
「やったことないですが、出来ると思います。」
大和「そうか。
なら、光弾に浄化を載せて、ダンジョン内に向かって撃ってくれ。
弾速は、ゆっくりで頼む。」
「分かりました。やってみます。」
野球ボールぐらいの光球から、光が届く範囲に浄化の波動が届く様に設定をして、ダンジョンの真っ暗な通路に、人が歩く位の速さで撃ち出す。
光弾は、20m先の壁当たって停止したが、発光し続けている。
大和「あれは、どの位光っていられるんだ?」
「浄化の波動も放出しているので、多分20分位だと思います。」
大和「明かりだけだと、もっと長いのか?」
「はい、あの大きさで光だけなら、1時間位は光っています。」
大和「光は、
「放出しか出来ません。」
大和「浄化の能力は、魔力消費量が大きいのか。
どの位の範囲に浄化が届く様に設定した?」
「光が届く範囲です。」
大和「なら、浄化範囲を狭べれば、燃費は向上しそうだな。」
少し考え込んでから
大和「バスケットボール位の大きさで、浄化範囲を10mに制限して、あの光球当たりに撃ってくれ。」
「はい」
言われた通りの光球+浄化を撃ち出し、先に撃ち出した光球の隣に着弾して停止している。
大和「壁に着弾しても割れないから便利だな。」
「魔力密度の高い層で、表層を囲う様にしていますから、割れにくくなっています。」
戸神「それでも、よく割れないものです。」
「表層の魔力密度は高いですけど、内部の魔力圧力は高くないからです。」
戸神「どういうことですか?」
「
戸神「それは、面白い。
どうやって、見つけたんですか?」
「以前、物理結界を硬くしようと試行錯誤した時に、偶然柔らかい結界が出来たので、それの応用です。」
戸神「うんうん、良いですね。
そうやって試行錯誤して、どんどん
最近の子は、応用が利かない子が多くて困りものです。」
「はあ、そうなんですか。」
戸神「そうなんですよ。皆、派手な力ばかり使いたがって、基本を疎かにしているので、能力の偏りが激しくてね。
教わった内容を正しく理解していれば、また違うのかも知れませんが、派手で強い能力ばかり追求しているから、汎用性に欠けているのですよ。
型に嵌まれば強いですが、それ以外だと全くもって使い物にならない。」
そう言うと、大きくため息をついた。
大和「そろそろ、ダンジョンに突入するぞ。
神城の浄化で、大幅に瘴気が減少した。
俺と戸神が先頭に立つ。
神城は、ダンジョン内で照明弾と浄化を適度にバラ撒いてくれ。
では、行くぞ。」
大和さんと戸神さんを先頭にして、ダンジョン内に入る。
扉の内側は、地面がむき出しの洞窟状で、幅・高さ共に2m位で、やや下向きに20m直進後、左に曲がっている。
太和さんが言っていた様に、瘴気が減少したからか、ダンジョン内でも悪臭を感じる程度にまで減っていた。
それでも、光球が止まっている所まで来ると、多少は強くなったので、臭いと瘴気が関係していると思う。
ダンジョンの奥に向かって、バスケットボール位の照明弾(浄化機能付き)を撃つと、奥にあった扉に当たって止まった。
扉の前まで移動して、太和さんと黒崎さんが中の様子を窺う。
太和「中の様子は静かだが、アンデット系の魔物が待ち伏せをしていると思う。」
黒崎「私も同じです。
少なくとも中級以上で、数は100を超えています。
扉を開けると、襲ってくると思います。」
私も扉の向こう側を探知する。
太和「神城、内部を探知出来たか?」
「はい。
扉の向こう側は、左右25m、奥行き50m、高さ10m、右奥に通路があります。
部屋の中は、扉から10m位離れた位置で扉を囲むように、盾と槍を構えたスケルトンが隊列を組んでいます。
左右壁側にバルコニーの様な高台があり、そこに弓を持ったスケルトンが立ち並んでいます。
数は、歩兵が200位、弓兵が50。
あと、スケルトンの胸元に魔石?瘴気石?が私の拳大の大きさあります。」
黒崎「私よりも見えてる!」
山奈「ダンジョンの強度が分からないので、手加減した状態で正面突破は、正直辛いですよ。」
「ダンジョンの強度?」
霜月「ダンジョンの境界線の強度の事だ。
主に壁や結界の事だな。
ダンジョンは、次元の狭間とこの世界の魔力か瘴気が結びついて実体化すると考えられている。
実体化が完全に終わったダンジョンだと、壁が崩れると部屋が崩壊する危険があるが、実体化途中で壁が壊れると、次元の狭間に吸い込まれてしまうんだ。」
「うわー」
太和「神城が、詳細に見えているから、手段はあるぞ。」
全員が太和さんを見る。
太和さんの作戦を聞いて、その作戦が採用された。
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