第87話 ダンジョン(3)

 先に進むと、再び扉が出現した。

 上2つの部屋と変わらず、相当な数のスケルトンが待ち伏せしていた。

 上の部屋と同じ戦法を実行しようとしたら、浄化機能付き発光弾を撃ち落とされた。

 直ぐに破壊されたので、敵陣にダメージを与えることが出来なかった。


「む、照明弾が壊された。」


 太和「ほう、もう対策をしてきたか。」


「浄化弾を撃ち込んでいいですか?」


 太和「いいぞ、やってみろ。」


「はい。」


 私は早速、扉の部屋側にゴルフボールサイズの浄化弾を一気に10個作り、照明弾を撃ち落としたスケルトンを目掛けて撃ち出す。

 直ぐに次弾を作成して撃ち出し続ける。

 浄化弾は、盾を持ったスケルトンに防がれているが、破裂した瞬間に浄化の波動を周辺2mにバラ撒く為、1撃で倒せなくても数発当てる事で倒す事が出来る。


 秒間100発を1分間撃ち出し続ける。

 浄化機能付き照明弾を撃った後、浄化弾を再び撃ち込む

 まだ、照明弾を落としたスケルトンが健在なため、そのスケルトンを主軸に狙いながら、周辺のスケルトンにも散弾して数を減らしていく。

 合間合間に浄化機能付き照明弾を増やしながら、浄化弾を撃ち込むこと10分。

 何度か照明弾を撃ち落とされたが、全てのスケルトンを倒すことが出来たので、部屋に入った。


 問題のスケルトンが倒れた当たりに、杖が落ちていたのでスケルトンメイジだった可能性が高い。


 太和「神城の照明弾を壊したスケルトンが持っていたのか?」


「恐らくそうです。」


 太和「スケルトンメイジだったみたいだな。

 扉からスケルトンメイジまでの間に、殆どの武具が落ちている所をみると、指揮官タイプだったんだろう。

 まあ、いい。

 鑑定頼むぞ。」


 戦利品の鑑定の結果、特殊な能力を持っていたのは、スケルトンメイジが持っていたと思われる杖と2対の短剣だけだった。

 しかし、太和さんが言うには、大量らしい。

 普通、ダンジョンで特殊な能力が付いた武具は、1点でも見つかれば僥倖ぎょうこうらしい。

 それなのに、此処までで既に5点も出ているので、このダンジョンのボスが強力なのか、相当深いダンジョンに違いないらしい。


 ちなみに杖と短剣の能力は、以下の通りだった。


 杖

 材質:不明

 付加能力:魔力増幅、消費魔力減少


 短剣

 材質:不明

 付加能力:鋭刃+1、強固、属性(火・風)


 杖と短剣は、それ程大きくないため、黒崎さんと山奈さんが持つ事になった。


 更に先に進むと、豪華な扉の前に出た。

 扉までの道も、敵も罠も無い一本道だった。


 中を探知しようと扉に近づいたら、勝手に開いた。

 開かれた扉から、大量の瘴気が溢れ出す。


 私は、直ぐに浄化機能付き照明弾を数発室内に向かって3発撃ち込む。

 真っ暗な部屋の中が光で照らされるが、部屋の半分程度進んだ所で全て破壊された。


 再び、浄化機能付き照明弾を撃ち込む。

 奥に向かうものを2つ、1/3程度で天井に張り付くものを2つ撃つ。


 放ち終わった直後に、私以外の人達が部屋に雪崩込む。

 私も後に続て部屋にはいると、浄化機能付き照明弾を左右の壁に着弾する様に2発ずつ撃つ。


 明るくなった室内に居たのは、真っ黒なオーラをまとい、男性用の登山服装を着ている薄っぺらい人の皮膚が張り付いたアンデットで、瘴気溜まりの前に立って此方を見ている。


 太和「リッチか、面倒だな。」


 リッチ「愚かな生者共よ。

 我が配下を倒した報い、その身であがなぇぇぇぇぇぇ」


 私は、リッチの口上を無視して、浄化弾をひたすら撃ち込む。


 リッチは、慌てて障壁を張った。

 リッチ「愚か者め、その程度の攻撃で我がどうにかなると『パリン』」


 リッチの張った障壁が割れ、浄化弾がリッチに当たる。

 大したダメージを貰っていない様だが、これだけ連続して当たると無視できない威力になっている様だ。


 リッチ「ちぃ、小癪な!」

 リッチが、再び障壁を張り直す、浄化弾の連射速度を上げて、早く障壁を割る。

 リッチが障壁を張り、浄化弾で割るを数回繰り返す内に、障壁を割る時間がどんどん短くなり、ついに障壁を張る事も出来なくなり、浄化弾にその身を削り取られて消滅した。


 ドン引き状態の太和さんが

 太和「神城、意外とエグい事するな。」


「だって、あいつ喋ると臭いから。」


 全員から呆れた顔をされた。


 気を取り直した太和さんが、

 太和「取り敢えず、この部屋を探索後にそこの瘴気溜まりを浄化したら撤退しよう。

 神城、部屋の探索が済むまで、瘴気溜まりを消すなよ。」


 探索の結果、リッチが持っていた禍々しい指輪が1個見つかっただけだった。

 鑑定結果も酷いものだった。


 禍々しい指輪

 材質:不明

 付加能力:魔力増幅+5、消費魔力減少+2、狂気+5、死霊化+5

 

 戸神「死霊アンデットになる指輪は、初めてですね。」


 太和「ああ、そうだな。

 この場で破壊処分したい所だが、適切な処理をしないと破壊しようとした者が死霊アンデット化する可能性があるから。

 取り敢えず、研究所に持ち帰ろう。」


 霜月さんが、小箱を取り出して、指輪を入れた。

 霜月「この箱は、魔力を遮断する効果がある。

 何らかの魔力を放出していても、この箱で魔力を遮断するので周辺への影響を抑える事が出来る。」


 霜月さんは、説明後に小箱を荷物に片付けた。


 太和「さて、全員撤退準備は良いか?」

 全員を見渡してから

 太和「神城、あの瘴気溜まりを浄化したらダンジョンが消滅する可能性が高い。

 だから、3割まで減らした後、浄化機能付き照明弾を瘴気溜まりに撃ち込んだら、全員でダンジョン入り口まで走るぞ。


 始めてくれ。」


 言われた通り、3割まで減らすとダンジョン内が振動した。


 太和「良し、照明弾を撃て」


 浄化機能付き照明弾を瘴気溜まりに撃ち込むと振動が激しくなった。


 太和「総員、撤退」

 太和さんの掛け声で、一斉に走りだす。

 私も、皆に合わせて走る。

 最初の部屋で見つけた特殊な能力を持った武具を回収してダンジョンを脱出した。


 ダンジョンを脱出して5分後、ダンジョンは消滅した。

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