第88話 ダンジョン(4)
ダンジョンが消えた場所は、普通の地面になっていた。
太和「実体化途中のダンジョン・コアを破壊すると消滅するんだ。
今回の場合だと、瘴気溜まりだな。
普段は危険だからやらないんだけどな。」
そう言って、豪快に笑い出した。
霜月「今回のダンジョンは、規模が小さいからコアを破壊して消滅させたんだ。
正直、このダンジョンを放っておいたら、またアンデットの溜まり場とかに成りそうだったしな。」
「だったら、他の戦利品を運び出した後に破壊した方が良かったのでは?」
太和「あんな鉄屑を抱えて山を降りるのは嫌だぞ。
それに、あの場所は、早々に破壊した方が良い気がしたしな。」
「他のダンジョンも、同じ様に消滅させているのですか?」
山奈「違いますよ。
ダンジョンの規模や出現する魔物の種類によります。
基本的は消滅ですが、規模が大きいとダンジョン・コア破壊から脱出が間に合わない為、実体化が終わった後にダンジョン・コアを破壊します。
実体化が終わっているので、構造物がそのまま残ります。
訓練に適した魔物が出現するダンジョンや鉱物が取れるダンジョンなんかは、ダンジョン・マスタを撃破後、対魔庁の管理下に置かれます。
今回のダンジョンは、規模は小さいですが脅威度は高いので、消滅推奨です。
神城さんが、浄化の
その位、強い敵だったのです。」
黒崎「まあ、実感湧かないと思う、その位の敵だったと覚えていて。」
「はあ、分かりました。」
太和「もう直ぐ日が暮れるから、暗くなる前に野営準備を行おう。」
近くの開けた場所に移動して、大急ぎで薪になりそうな枝を拾い集める。
火を囲み、夕食を終えた後
太和「ちょっと聞いてくれ。
明日の予定だが、10時頃に回収班のヘリがこちらに来る。
山奈と黒崎で対応を頼む。
神城と戸神で、魔法陣の石の浄化作業を頼む。
俺と霜月で、この周辺調査を行う。
その後、集合してから次の行動を決めようと思う。
良いか?」
全員から了承を得られると
太和「神城、ダンジョンを攻略して安堵していると思うが、気を抜くな。
ダンジョンを消滅させたと言っても、この辺の魔物を殲滅させた訳では無い。
それに、これは俺の勘なんだが、今回の一件、
ランクC上位の魔物であるリッチが君臨するダンジョンにしては、小さすぎる。
それに、各部屋に居たスケルトンが全て人型のうえ、ランク的には同ランクのブラック・スケルトンも相当数居た。
どう考えてもおかしい。
通常のダンジョンなら、ダンジョン・マスタを頂点としたピラミット構造の魔物構成になるはずだ。
ダンジョン・マスタ(ランクC)、部隊長(ランクD)、兵長(ランクE)、兵隊(F)位の構成が一般的だ。
今回のダンジョンは、ダンジョン・マスタ(ランクC)、部隊長(ランクC)、兵隊(ランクD)という構成だった。
構成の情報は、神城がスケルトン共を相手している間に、黒崎に調べて貰ったから間違いない。
それに、ダンジョン・マスタのリッチが、登山服を着ていた事から、意図的に作られたダンジョンでは無いかと思う。
最も、誰が何の目的で、どの様な手段を用いて行ったなんて分からないが。
だから、まだこの辺りに首魁に繋がる手掛かりが在るかもしれない。
だから、気を抜くなよ。」
「分かりました。」
その後何事も無く、夜が過ぎた翌日。
戸神さんと一緒に宙を駆けながら、魔法陣の石に浄化を掛けて周るついでに、周辺も調べるが、何も見つからなかった。
お昼前に、ゾンビの襲撃を受けた広場に集まり報告を行うが、太和さん達も何も見つかっていなかった。
午後に、もう一度魔法陣の中央部を調べるが、何も見つからなかった。
ダンジョンが在った場所と魔法陣を挟んだ反対側も調べてみたが、無駄足に終わった。
結局、ゾンビと魔法陣とダンジョン以外に何も見つけられず、明日(5日目)に帰還する事になった。
5日目、日の出とともに山道を走って降る。
途中の休憩時に
太和「神城、その短剣は?」
荷物に縛り付けた短剣を指さして言われた。
「これは、一番最初の部屋で見つけたものです。
特別な能力は持っていなかったんですが、不思議な感覚がするので持ってきました。」
太和「そうか。後で研究所で鑑定してもらおう。」
それ以上は、何も言われなかった。
その後は、登山道入り口まで一気に走り抜け、サポート部隊の車に乗り込み訓練所に帰還する。
訓練所に戻ると、備品室で装備一式の手入れと片付け、戦利品の確認を行っていたら、伊坂さんが入ってきた。
伊坂「お疲れ様。調査・討伐はどうだった?」
太和「はい、亜人と思われた人影は発見できず、ゾンビと遭遇しました。
周辺一帯の調査の結果、用途不明の魔法陣とダンジョンを発見しました。
魔法陣は、動力と思われる瘴気を
ダンジョンは、攻略後消滅させました。
再度、周辺を調査しましたが、何も発見出来ず帰還しました。
詳細については、後日報告書を提出します。」
伊坂「ご苦労さま。早めに報告書を頼むよ。
今回の突発依頼は、無事完了と考えて良いのかな?」
太和「今回の依頼は、完了です。」
伊坂「依頼以外の部分に何かあるのか?」
太和「詳細は、報告書にて行いますが、作為的に作られたダンジョンの可能性があります。」
伊坂「なるほど、厄介事が残っていると。」
太和「そう思います。」
伊坂「分かった。報告書は、数日中に提出してくれ。
そこに有るのが、今回の戦利品かい?」
太和「その通りです。
まだ、研究所での鑑定前ですが、それなりの性能の物だと思います。」
伊坂「戦利品の鑑定結果も、報告書に添付してくれ。」
太和「了解です。」
私の前にやって来て
伊坂「神城さん、初陣ご苦労さま。
本来なら、対魔庁で管理しているダンジョンで行う予定だったのだが、突発依頼の要求ランクが高かったので君達に行ってもらった。
初陣で色々有って大変だったろうが、これもいい経験だと思って欲しい。」
「わかりました。」
伊坂「太和、後を頼むぞ。」
そう言うと、備品室から出て行った。
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