第284話 1年次夏期集中訓練 4日目(5)
お昼休みと言う事で食堂に移動する。
伊坂さん、山本さん、植松さんと一緒だ。
各々料理を選んで受け取り席に着くと、直ぐに食堂の入口に美智子さん達が見えた。
美智子さん達に続いて、山奈さん、黒崎さん、三上さんが入ってきた。
珍しいなと思っていると、三上さんが正面に座った。
「調子はどうだ?」
と聞かれた。
「どうとは?」
と聞き返すと
「調子を崩していると聞いたからな」
と言われたので
「調子が良いとは言えません。
出来るだけ速やかに、復調します」
と答えると
「焦らなくて良い。
お前位の歳なら良くある事だ。
焦ると余計に悪化する。
基本に立ち戻り、1から学び直すつもり位がちょうど良い。
と言っても、焦りは消えないだろう。
だから、無理だけはするな。
後、不調や違和感があれば、私でも若桜でも植松でも構わん。
どんな小さい事でも言え。
良いな」
と言われたので
「分かりました」
と答えた。
三上さんは、美智子さん達の方を見た後
「彼女達4人も優秀だと報告が上がってきてるが、実際の所どうだ?」
と言うと、山奈さんが
「基礎体力についてはまだまだですが、基礎戦闘能力は十分です」
と答えた。
「それは、訓練校基準か?」
と三上さんが問うと
「訓練校以上、新入隊員未満と言った所です」
と山奈さんが返す。
三上さんは、満足そうに頷きながら
「
これは、将来が楽しみだな」
と言うと
「午後の武器・武術適正検査がある」
と黒崎さんが言葉を挟む。
三上さんは、笑いながら
「うむ。
それを含めて楽しみだと言っている」
と言った後、微苦笑を浮かべ
「出来れば、太和の様な無手・
と言った。
美智子さん達は理解出来ていないみたいだけど、その他の面々は苦笑いを浮かべている。
無手の人は一定数居るが、上位陣には殆ど居ない。
ましてや、武術<気功>の適正なんて希少な存在だ。
その両方を持つ太和さんは例外と言うかかなり特殊なのだ。
「無手・
と郁代さんが問うと、山本さんが
「無手が悪い理由では無いが、色々と不利なんだよ。
主にリーチと威力の関係でな」
と答えると納得した。
「じゃあ、気功は?」
と郁代さんが問うと
「気功は、生体エネルギーを利用して身体強化を主としている。
その効果は
と伊坂さんが言った。
「悪い効果では無いのですね。
むしろ、良い効果の様に思えるのですが」
と美智子さんが言うと
「そう。効果だけ聞けばな」
と山本さんが口を挟む。
続けて
「確かに、習得出来れば効果は高い。
しかし、習得難易度が高く使い手も限られる為、指導者が殆ど居ないのが現状だ。
しかも、熟練度が低い内は、その効果は微々たるものだし、実戦で運用が出来る状態じゃあない。
実戦で運用出来る程となると、高熟練度の人に限られる。
だから、殆どの人が大成しない」
と言った。
「そうすると、その太和さんって凄い人なんですね」
と都さんが言うと誰もが口を閉ざした。
「え?どういう事?」
と郁代さんが呟くと
「凄いかと言われたら凄い事なんだけど…」
と山奈さんが言葉を濁し
「あれは、理解不能」
と黒崎さんが答えた。
混乱している美智子さん達に三上さんが
「太和の事は気にするな。
あれは、存在自体が例外みたいなものだ」
と言い切った。
「珍獣扱い?」
と千明さんが呟くと、三上さんは大笑いをしながら
「言えて妙だな」
と言った。
美智子さん達が、微妙な顔をして黙り込んでしまった。
これ以上聞かないほうが良いと判断した様で
「あのー。
武器・武術適正検査って何をするんですか?」
と美智子さんと話題を切り替えた。
山奈さんと黒崎さんは、三上さんを見た。
その三上さんは
「ん!
ああ。
安藤達の研究だったな」
と思い出した様だ。
「まあ、後で
要は、個人の能力の数値化を目指したものだ。
とは言っても、まだまだ試作の域を出ていないものだ。
軽い気持ちで受けてくれ」
と軽い口調で言った後
「まあ、一応実験を兼ねているから、診断結果の武器・武術の訓練を今日、明日、明後日の2日半は頑張って貰う。
合わなければ、別の武器・武術に切り替えて貰って構わない。
だから、合わないと思ったら遠慮なく言ってくれ。
多種多様な武器・武術を経験する事も重要だからな」
と真剣に言った。
都さんが小さく手を上げた。
「どうした?」
と三上さんが聞くと
「武器は分かるのですが、なんで武術まで入っているのかな?と思って」
と答えた。
「この場合の武器は、武器種の事だ。
剣、槍、斧、鈍器、杖、盾、無手、弓、銃、その他の10種を指す。
この中で剣を選択した場合、前衛隊員が好む両刃のショートソードやロングソードと言った肉厚の剣と後衛隊員が好むレイピア系の細剣では扱い方は同じか?」
と問うと
「違うと思います」
と都さんが答えると
「その通り、扱い方が違う。
だから、武器にあった戦闘技術をセットにして武術と称している。
これらの武術は、思金でデータ収集・分析・解析して、教導隊監修で再編されたものだ。
だから安心して良いぞ」
と言った。
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