第73話 年末年始の神城家(1)

 色々とあったけど、28日の15時まで訓練を熟して自宅に帰宅した。

 寮生の皆も明日の朝、自宅や実家に帰省するそうだ。

 学校は、1月10日からだけど、6日から訓練所で訓練を再開する。

 学校が始まるまでは、寮生活に戻る予定だ。


 年末年始の護衛を断っているので、その間は自宅に引き籠もりになる。

 両家の祖父母には、高校受験勉強の為帰省しないと連絡を入れてもらった。

 祖父母は、私が能力の事を知らないので、良い言い訳になった。


 今日29日は、私以外の家族は年末の買い出しに出ている。

 年末の大掃除も大方終了しているので、自室で訓練をして過ごす。


 家の前を何度も行ったり来たりする章と零士の存在は感知出来るが、今は私一人の為特に何もしない。

 家族がいれば、対応出来たんだけど、単独行動は避けたほうが無難なので気付かない振りをする。

 結局、チャイムも押さずに帰っていった。

 何がしたかったんだろう?


 家族が買い出しから戻って来た時に、その話をしたら母さんと舞が呆れていた。

 それ以外は、穏やかに過ぎた1日だった。


 翌30日、朝9時に父さんのスマホに電話がかかってきた。

 相手は父方の祖父で、年末年始を私達の所で過ごす為にこちらに来たそうだ。

 想定外の事態に困ったので、私は氷室さんに電話を掛け事情を説明したら、直ぐに動いてくれる事になり、父さんが祖父を迎えに行き、氷室さんと合流して事情説明をしてくれる事になった。

 父さんと舞が迎えに行き、母さんと私で受け入れ準備を始める。


 駅までの往復と説明の時間を入れても2時間あれば十分だと思ったけど、11時30分を過ぎても帰ってこない。

 母さんとお昼どうしようかと相談していると帰ってきた。

 私は、一旦部屋に避難して母さんが対応してもらう。

 想定外に、父さん、舞、氷室さん以外に6人も居るんだもの。


 チャイムが鳴り、母さんが玄関を開けるとゾロゾロと室内に入ってくる。

 自室で待機していると、氷室さんが扉をノックしたので入ってもらう。


 状況を教えてもらったら、父さん母さんの両家の人が集まっているとの。

 父方からは、神城家の祖父母と従兄弟の島本しまもと のぞみちゃん。

 母方からは、九条家の祖父母と従兄弟の九条くじょう 香織かおりちゃん。

 なんでそんな状態になったかと言うと、神城家の方は、父さんのお兄さん一家も今年は行けないと昨日連絡が来たので、前から一度私達の家に来たいと思っていた祖父母は、押し掛けること事にしたそうだ。その時、希ちゃんも付いてきた。


 一方九条家の方は、叔父さんが怪我で入院しているので、冬休みに入ると祖父母の家に香織ちゃんだけ預けられた。

 私達が行かないと連絡したため、このまま寂しい思いをさせるより、旅行感覚で家に行こうという事で来たそうだ。

 しかも、父さん達が迎えに行った時は、神城家しか居なかったのだが、氷室さんを待っていると九条家もやって来て合流する事になったと。


 氷室さんが両家に説明した内容は、私が対魔庁の保護下に在ることと、守秘義務が生じるので私の事は親族でも他言無用を伝えた上で、契約書を交わした位だそうだ。

 私が、氷室さんから説明を聞き終わったのに合わせる様に父さんが訪れた。

 そろそろ、祖父母達に会って欲しいというものだった。

 私は、了承して父さんに、「祖父母達爺ちゃんちゃん婆ちゃん達が叫ばない様に事前に注意して欲しい。」とお願いをしたので先にリビングに戻っていった。

 氷室さんと一緒にリビングの前の扉前まで移動して待機する。

 中から父さんの声で、「優がこれから入ってくるから、優を見ても驚いて叫ばないで欲しい。」とお願いしているが、軽い感じで「分かった。分かった。」という返事が返ってきているので、「これは確実に叫ぶ」と思うと頭が痛くなった。


 氷室さんに「リビングに入る前に、部屋を覆うように防音結界を張ります。」と宣言してから、防音結界でリビングを覆うように展開する。

 防音結界は、物理結界の結界派生結界だ。

 本来の物理結界の使い方では無いこの方法は、結界サイズを大きくしようと試行錯誤中に出来たもので、結界を張った際に外の音が聞こえなくなったので、研究所で調べて貰った結果、結界強度は無く、人や物は素通り出来き、結界の境界面で大気中の振動が極端に減衰する事が判明した。

 あと、強度はそこそこあるがゴムの様に柔らかい結界なんて物も出来たが、これを見た三上さんに爆笑されてしまった。


 放出系、具現化系の風でも似たことが出来るが、放出系は能力の使用者を起点に発動するため、発動範囲内全ての音の伝搬を止めてしまうし、使用中は魔力を常に放出し続けるため魔力の消費量が多い。

 具現化系は、具現化した領域内の音の伝搬を止めてしまうため、2重カプセル状に展開する必要があり、内外のカプセル間だけの音を止めなければならない為、制御が難しい。

 なので、私的には使い勝手の良い防音方法なのだ。

 リビングの声が聞こえない状態になったのを確認してから、氷室さんに合図を送ると、氷室さんがリビングの扉を開けて中に入る。

 私もそれに続いて入ると、戸惑った声が聞こえてくる。

 祖父母達にとって、知らない子供が入ってきたのだから当然だな。

 氷室さんが、私を前にだして「これが、今の優さんです。」と紹介すると沈黙が支配した。

 どうやら、状況が呑み込めていないようだ。


 希「ちょっと待ったー。

 優兄ちゃんは、男であってこんな小さくて可愛い女の子じゃないー。」


 神城祖父「そうじゃ、優は男だったろうが。」


 九条祖父「しょう君、これはどういうことだ。」


 希ちゃんの絶叫から我に返った爺ちゃん達が騒ぎ出し父さんに詰め寄った。

 婆ちゃん達は、母さんの方に詰め寄り問いただし始めた。


 一気に騒々しくなった室内に氷室さんが「落ち着いて座って下さい。」と何度言っても収まらないので、ついに殺気と威圧を飛ばしなら「大人しく座りなさい。」の一言で室内は静かになり、皆大人しく座った。


 氷室「改めて、紹介します。

 この子が貴方方あなたがたのお孫さんの神城 優さん本人です。

 優さんは、10月に非常に珍しい能力が発露しました。

 その能力は、性転換です。

 その能力の力で、この少女の姿に変わってしまったのです。

 優さんの性転換事例は、世界で8例目という非常に珍しい現象です。


 対魔庁では、非常に希少な事例である優さんを保護下に置いています。

 それ故、貴方方に親族でも他言無用である事を強要しました。

 ご理解いただけましたか?」

 氷室さんの静かな迫力に圧されたのか皆肯いている。

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