第205話 訓練と言う名の地獄(7)
神城准尉の評価は、これで終わりだった。
その後は、再びタブレットに向かって個人評価を入力していた。
暫くすると、衛生部隊の代表の人が篠本君に愛知方面隊の状況を報告が来た。
命に別状なく、魔力枯渇と心身共に受けた負荷よる失神と判断され、魔力がある程度回復すれば、意識が戻るとの事だった。
篠本君は
「グランドで寝っ転がられても邪魔だ。屋内訓練場に転がしておけ」
と指示を出した。
言い方はアレだが、死屍累々状態で転がっているのは……邪魔だな。
衛生部隊の代表が、「了解」と言って戻っていく。
その横で山奈教導官と黒崎教導官が、神城准尉に何やら話し掛けている。
どうやら、ゴーレムの指揮権を渡す様に言っている様だ。
改めてグランドを見ると、ロボット型と狼型のゴーレムがまだ残っていた。
彼女達の会話から、グランドに転がっている隊員達を運ぶために残していたようだ。
神城准尉は、ロボットの頭の着いた水晶の短い六角柱の短い杖と、
…ちょっと待て、そんな物今の今まで持っていなかっただろう?
自分が混乱している内に神城准尉は、黒崎教導官から再びロボット頭の短杖を受け取ると色が赤くなった。
そして、青いロボット頭の短杖と共に2本を黒崎教導官が受け取り、黒崎教導官は、青いロボット頭の短杖を山奈教導官に渡した。
・
・・
・・・
増えた。
訳が分からん。
何となくロボット型ゴーレムを見ると、ゴーレムの肩の部分の色が赤の物と青の物の2種類に変わっていた。
黒崎教導官が赤のロボット頭の短杖を持って指揮をすると、肩の部分が赤くなったロボット型ゴーレムがその指揮に従って動き出す。
山奈教導官が青のロボット頭の短杖を持って指揮をすると、肩の部分が青くなったロボット型ゴーレムがその指揮に従って動き出す。
「そうか、指揮権を2つに分けたのか。と言う事は、今その場で創ったのか」
と理解した事を無意識の内に呟いていた。
自分の言葉を拾った清水1尉が
「その様です。
神城准尉が、
ただでさえ希少な
と力強く返してきた。
自分も同意する。
神城准尉が会議室に来る前に受けた説明では、ランクB7の後方支援型の
また、対魔庁に入庁しているとは言え訓練校を卒業していない為、扱いは準隊員であり、準隊員の最高位である准尉である事も説明された。
また、訓練校卒業後は、1尉か3佐の階級になるとも言われた。
今日の戦闘でも、疲れた様子どころか汗の一つもかいていない。
格の違いをコレでもかと言うほど見せつけてくれたのだが、それを少しでも理解出来たのだろかと、ロボット型ゴーレムに運ばれる隊員達を見て思ってしまった。
そして、愛知方面隊の隊員が全員運び出された後、戦術課の隊員達がグランドの整備を始めた。
特に地面へのダメージが大きい所は、具現化系の土の
グランドの整備が、そろそろ終わりそうだと言う時に、太和教導官の
「お、神城。データ入力は終わったのか?」
と言う声が聞こえたので、振り返った。
神城准尉は、タブレットを霜月教導官に返し
「はい。終わりました」
と答えると
「よし、俺と1戦やるぞ。腕は鈍っていないだろうな」
と言ってニヤリと笑った。
神城准尉は
「どうでしょう? 最近、戦闘訓練を行えていないのでわかりません」
と返すと
「よし、やるぞ」
と言って太和教導官は、神城准尉から5m程離れた位置に立った。
その間に周りに居た人間(自分も含めて)が、退避した所で戦闘が始まった。
両者互角の激闘だ。
自分の目で追うのが精一杯の戦闘を繰り広げられた。
太和教導官と神城准尉の対戦は、10分程続けれた。
それが終わると今度は、霜月教導官、戸神教導官と連続して対戦が行われた。
どの戦闘でも互角の激戦を繰り広げ、合計30分も戦ったにも関わらず、神城准尉は汗一つかいていないし、魔力を消耗した様子を見れない。
あまりにも不可解な為、その事を聞くと
「この位の魔力使用量ならすぐ回復します」
と言う返答が返って来て、驚くと同時にどれ程鍛えられているのかと呆れた。
遠近どちらの戦闘にも対応し、数が必要ならゴーレムを使う。
探知も治癒も使え、豊富な魔力量と回復力を備える。
まさしく、
格の違いを痛感した。
お昼を挟み午後の神城准尉は、15時まで他の教導官達と一緒に戦術課隊員達相手に教導を取り、15時過ぎに訓練校に戻って行った。
愛知方面隊の隊員が意識を取り戻し始めたのは、17時を過ぎてからだった。
彼らに状況を説明し、手も足も出ず完敗の事実を突きつける。
まあ、彼らは現実を受け入れられていなかったがな。
それでも彼らに落ち込む暇も
何故なら、彼らに課せられた72時間の懲罰的訓練は、まだ41分20秒しか経っていない。
残り71時間19分40秒の戦闘訓練が、今から課せられるのだ。
既に待機している教導官と戦術課隊員達が、彼らをグランドに追い立てる。
このまま、残りの時間を消化していく事になるのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます