第206話 中間試験最終日の結果(1)

 訓練校に帰る車の中で、今日の愛知方面隊との訓練を振り返ってみる。


 愛知方面隊隊員の態度は、正直腹が立った。

 まあ、外見から中学生と間違われても仕方が無いとは言え、あの態度は無いと思う。

 今思い出しても腹が立つ。


 だから、舞に見せられたマンガの煽りをマネて可能な限り煽ってみた。

 正直、物凄く恥ずかしかったが、面白い様に乗ってきた。

 舞の演技指導が、こんな所で役に立つなんて思いもよらなかった。


 まあでも、ほんのちょっぴり本気を出したら5秒も保たなかった。


 コレには、相当がっかりさせられた。

 あれだけ尊大な態度を取ったのだから、実力以上の戦果を期待したのに、実際は想定より遥か下だった。


 あと、簡単に脱落されたら困るから強制回復をさせて、直接手を出すと即リタイアが決定するので、ゴーレムで相手をしたけど弱すぎた。

 手加減をするのに腐心するはめになるとは思わなかった。

 その結果、ゾンビアタック戦法を強要する事になったのは自業自得だ。


 他の地域の隊員の実力を知らないので、比較出来ないからなんとも言えないが、今日相手した愛知方面隊隊員は弱いと断言出来るだろう。

 1年後の田中さん達4人が相手なら、互角の勝負が出来そうだな。

 そんな感想しか湧かない相手だった。


 あと、訓練で使ったロボット型と狼型のゴーレムは、そのまま駐屯地に残してきた。

 訓練終了後に消そうとしたのだけど、この後の愛知方面隊隊員の訓練にも使いたいと言われたので、土曜日の訓練後に消すと言う話しをしたら、思金おもいかねの研究者達が、消すなら欲しいと言い始めた。

 なので、使用後は思金おもいかねに引き取って貰う事になった。


 後は、太和さん、霜月さん戸神さんと連続して戦闘訓練をして、普段通り駐屯地の隊員相手に訓練をした位だ。


 太和さん達との戦闘訓練は、久々に能力制限の上限で戦う事が出来た。

 訓練校に入校してから、教導を取るばかりで戦闘訓練を行えなかったから、思った以上に動けていなかったな。

 もう少し基礎運動と体幹トレーニングを増やそうかな。

 そんな事を思いながら、車窓を眺めていた。


 訓練校の宿泊棟に着いたのは、16時20分位だった。

 田中さん達は、高圧縮学習装置を使用中だった。

 残った隊員に様子を聞くと、田中さんも自力で魔力調律状態になれる様なったそうだ。

 あと、都竹さんがちょっと元気が無いそうだ。

 それ以外は、相変わらず周囲を探る訓練生がいる様だ。

 しかも今回は、男子訓練生も混ざっていたそうだ。


 考えた結果、宿泊棟の警戒レベルを上げる事にした。

 宿泊棟周辺の警戒レベルは、10段階の設定の内、下から3番目に設定しているが、今回の件を受け2段階上げる事にした。

 これで、幻惑結界の強度と枚数が増えるのと、一定範囲以内に未登録者が入れば警報が鳴る。

 今の私の権限で行える範囲内では、最も高い警戒レベルだ。

 これ以上は、副司令以上の人の承認が必要となる。

 後は、思金おもいかねに依頼している防衛網の強化の実施が、今月末から来月頭に行われるので、その強化に期待するしかない。


 早速、設定を変更して1階の大広間に戻ると、田中さん達も圧縮学習装置の学習を終えて休憩していた。

 田中さんに、自力で魔力調律状態に成れた事を褒めると、照れていた。

 一方、都竹さんは、自分だけが自力で調律状態になれず落ち込んでいる。


 正直言って、4人の中で最も早く自力で魔力調律状態に成れると思っていたのは、都竹さんだ。

 都竹さんは、2週目半ばには自力で魔力調律状態になれる兆候を示していた。

 だが、後一歩が届かず今に至る。

 それに田中さん達4人は、いつ発露してもおかしくない能力アビリティが幾つかある。

 その中でも特に数が多いのが、都竹さんだ。

 そして、発露が一番難しいと思われていたのが田中さんだったりする。


 それは、何故か田中さんが発露しかけている能力アビリティは、上位の物や発露者が少ないレアな物をばかりだ。

 一方、都竹さんは、高位の物やレアな物では無いが、実用性に富んだ物ばかりだ。

 土田さんと鳥栖さんも同様だ。


 だから、鑑定の能力アビリティで見た魔力塊マナ・コア状態からの予測は難しいし、説明した所で慰めにもならないだろう。

 だから、「焦らなくても必ず出来る様になる」と言い聞かせる位しか無い。


 話を変え、田中さん達を尾行する人が増えた事を伝えると、4人は顔を見合わせ、ため息をついた。

 田中さん達から話を聞くと、どうやら今日の能力訓練の試験で相当注目された様だ。

 その為に、接触図ろうとする者がえているのかも知れないとの事だ。


 では、彼女達は試験で何をしたかと言うと、単に魔力纏身まりょくてんしんをしていただけだ。


 それだけを聞くと不思議に思えるかも知れないが、今回の試験内容は、魔力の最大出力の80%以上をどの位維持出来るかを見るものだ。


 試験は、各クラス1人ずつ試験官の前に出て行いうというものだ。

 でも今回の試験では、クラス別に行われる試験と並行して、魔力制御訓練棟を使用出来る6人が前に出て一斉に行う事になったそうだ。


 なので、試験開始直前の全員がグランドで整列している時に、1人ずつ呼び出されて前に出されて、整列した訓練生の方を向いて横一列に並んだ状態試験を受ける事になったそうだ。


 試験は、2回の試技が行われる。

 1回目の試技では

 鳥栖さんが、1時間12分

 土田さんが、1時間10分

 田中さんが、1時間07分

 都竹さんが、1時間05分

 山田君が、25分

 伊吹さんが、23分

 と言う結果を残した。


 2回目の試技では

 鳥栖さんが、1時間31分

 土田さんが、1時間29分

 田中さんが、1時間26分

 都竹さんが、1時間25分

 山田君が、27分

 伊吹さんが26分

 と言う結果だった。


 では、一般的な1年目の訓練生の1学期中間テストでの維持時間と言うのは、1分保てば上出来、5分を超えれば優秀と言われるのが普通である。

 そんな中でこの成績である。

 注目されても仕方が無い。

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