第207話 中間試験最終日の結果(2)

 最大出力で最低10分間維持出来ないと次の訓練に進めないが、2ヶ月で1割、3ヶ月で5割の人が次に進めるし、遅い人でも6ヶ月程で次に進めると聞いている。


 そして、次の訓練は、魔力纏身まりょくてんしんを行うことだ。

 合格点は、出力80%以上で10分間維持しつつ、放出魔力量を30%未満に抑える事だ。


 その次の訓練が、魔力をまとった状態での運動になる。

 まず最初に、魔力をまとった状態で走る事から始まり、様々な運動や格闘技を行える基礎訓練になる。

 要は、技能スキル身体強化を学ぶのだ。


 それで次の訓練、魔力纏身まりょくてんしんに進んだのが、山田君と伊吹さんの2人。

 田中さん達4人は、更に先の技能スキル身体強化に進む事になった。


 山田君と伊吹さんは、1学期後半から夏季集中訓練まで進んだ事になる。

 そして、田中さん達4人は、2学期まで進んだ事になる。


 まあ、これでは、自称天才勢が嫉妬しない訳が無い。

 だから、彼女達の秘密を探そうとしている訳だ。


 私としては、そんな秘密は無いと堂々と言える。

 単に彼女達は、訓練校が課した課題以上の訓練をしているだけだ。

 たった1ヶ月だけど、その成果がこの差だと言えた。

 だから、そんな無駄な暇があるなら自主訓練を行えと言いたい。


 何故こんな事を思っているかと言うと、今食堂でいつもの様に全員で食事を取っているのだが、周りが五月蝿い。


 流石に隊員達も居るので、面と向かって何かを言ってくる強者つわものは居ないが、わざと聞こえるレベルで有りもしない詮索をしたり、中傷するのは腹が立つ。


 腹が立っていたのは私だけでなく、隊員達も苛立っている。

 ついに限界に達したらしく、隊員の1人が立ち上がり魔力で威嚇しながら

「貴方達、いい加減にしなさい。

 試験の結果で、日頃の訓練量の差を見せつけられたからと言って、無駄な詮索と誹謗中傷をするな。

 そんな暇があるならば、自己鍛錬を行いなさい。


 貴方達が、授業以外では碌な訓練を行っていない事は知っている。

 それに対して、この子達の時間外訓練は、訓練校の訓練時間の3倍以上だ。

 それで、同じ結果になる訳が無いだろ。


 この子達が、ひたむきな努力をしているから、我々も手を差し伸べただけだ。

 当然、我々は、お前らの様な凡人を相手するつもりはない。

 認められたいなら、それ相応の努力と才能を示せ。


 他人の足を引っ張る事しか出来ないクズは、大人しくすみっコにでイジケてろ」

 と怒鳴り散らした。

 この隊員が怒鳴っている間、残り3人も魔力で威圧していた。

 そして、そのまま席に着いて食事を再開を始めたが、食堂はお通夜の様に静まり返ったままだった。


 彼らには彼らなりの言い分もあるだろうが、実力主義の戦術課隊員の言葉ダメ出しに反抗するだけの力はなかった様だ。


 我々が食堂を出ていくまで静かだった。



 お風呂の後の技能スキル訓練もいつも通り行う。

 ただし内容は、記憶力の技能スキル以外に高速思考の技能スキルの訓練も追加する。

 高速思考は、高位のランクを目指すなら必須の技能スキルだ。

 何故ならランクD位までの戦闘なら無くても、身体強化で脳の高速化や経験でなんとかなるだろうが、それ以上の戦闘では状況判断も追いつかなくなるから、必須と言える技能スキルであり能力アビリティだ。

 だから、出来るだけ早い習得と訓練が必要なのだ。


 それだけ必須の能力なのに、訓練校ではあまり重要視されていない。

 だから、3年生になってから習得訓練を行うが、習得出来ずに入庁する隊員も多い。

 そして、戦術課に移動出来ると、持っていない隊員は非常に苦労する事になる。


 ちなみに、今日訓練を行った愛知方面隊の隊員達は、誰一人として高速思考を使っていなかった。

 高速思考を使える者が1人でも居れば違う結果にはならないだろうが、もう少し粘れただろう。


 そういう理由で、訓練項目の追加を行った。

 夜はこの2つの技能スキルの習得を目指そう。


 1時間の技能スキル訓練時間を終えて、田中さん達は自分の部屋に帰って行った。


 ちなみに、田中さん達の部屋の占拠はもう行われていない。

 一方、共有スペースの占拠は続いている。

 そして、談話室の一角は、以前と変わらない面子が集まって愚痴を言っている。

 自分達に有利に成る様に風評を流して、逆にそんな事をするのはクズとはっきりと言われたのだから、次の嫌がらせや揚げ足を取る方法を考えているのかも知れない。

 私的には、そんな事する暇があれば、魔力制御訓練の一つでもすれば良いのにとしか思わないので、警戒をしつつも放置する。



 翌日、金曜日。

 朝教室に入ると注目された。

 正確には、私にではなく田中さん達4人にだ。

 周囲が嫉妬まみれの睨みつける様な視線の中、普段通りなのが栗下さん達ギャルグループだ。

 こちらとは、普段通り挨拶をして席に着く。


 授業時間になれば、そんな視線も消える。

 そして、授業で試験結果が返ってきて、クラスの中では一喜一憂して騒がしい。

 中間試験なので、上位に入っても優等生に成れる訳では無いが、今の自分の位置を知るにはちょうど良いからだろう。


 なので、来週月曜日には、各学年の総合成績上位10名と1位と10位になった人の合計得点だけが公表される。


 田中さん達も、思った以上に点数が取れていたと喜んでいる。

 私?

 私は、田中さん達より上の点数だったとだけ言っておきます。

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