第185話 ゴールデンウィーク(13)

 南雲さんが

「コレは、土の能力アビリティで作ったゴーレムだよな」

 と冷静に分析をして聞いてきた。

「ええ、その通りですよ。

 分類的には、操作式ゴーレムです」

 と答えると

「私が過去に見たどのゴーレムよりもスムーズに動くな。

 とても即席インスタントゴーレムとは思えない」

 と興味深げに模型を見ながら言った。


 それを聞いた都竹さんが

「このロボットって、ゴーレムなんですか?」

 と聞いて来た。


「分類上は、ゴーレムです」

 と私が答えると

「センサー、知能・制御系、駆動系の3つの要素技術を有する、知能化した機械システムを有するものの内、能力アビリティで作成・動作する物をゴーレムという。

 一方、工学的に作られた物をロボットという。

 作成方法と動作方法の違いで、定義しているだけだ」

 と南雲さんが補足する。

 全員の視線が南雲さんに集中する中

「一般的には、動作方法で区別している事が多い。

 だから、工学的に作った物でも、能力アビリティで動かす物をゴーレムと言うし、逆に、能力アビリティで作って工学的に動かす物は、ロボットと言う。


 まあ、境界線は意外と曖昧なんだよ」

 と周りに説明をした。

 周りは、「へぇー、そうなんだ」と言った反応をしている。


 私の方に向き直り

「私が、以前見た思金おもいかね製のゴーレムと比べ物にならない程スムーズに動いているのだが、一般的なゴーレムと何が違うのかな?」

 と聞いて来た。


「構造的には、プラモデルの構造で構築しています。

 制御核コントロール・コアにも対応しています。

 この水晶クリスタル制御核コントロール・コアです」

 と言って、左手に長さ10cm幅3cm位の6角柱状の水晶を作って見せた。


「ゴーレムの制御核コントロール・コアも作ったのか。

 その水晶に魔力制御回路を書き込んでいるんだろ。

 すごいな」

 と言って、大笑いをしている。


 周りは何が凄いのか理解出来ていないので、キョトンとしている。

 それを確認した南雲さんは

「ゴーレムの場合、大きく2種類の分類が有って、事前準備型と即席インスタント型がある。

 一般的に事前準備型は、事前にゴーレムを作成するから高性能な物が多くて、費用も高額な物も多い。

 即席インスタント型は、能力者の能力アビリティだけで作るから、即時に作成出来る反面、単純な行動しか出来ない事が多い。


 そして、制御核コントロール・コアの作成は、通常膨大な時間が掛かる物だから、事前準備型以外では作る事は無い。


 なのに、目の前に常識を覆した事が起こっているんだ。

 何がどうなっているか、教えてくれないか?」

 と血走った目で私に迫りながら、聞いてきた。


 自身の知識と矛盾した現象を目の前にして、研究者としての本能が刺激されたのかも知れない。


 私は、土田さんの方を見て

「土田さん。

 よく見て下さい。

 これが、思金おもいかねに沢山居る研究者と同じ姿です」

 と言って南雲さんを指差す。


 何を言われたのか理解したのか、身体を乗出し私に迫っていた南雲さんは、姿勢を正し椅子に座り直した。


 ちょっと、土田さんが引いているが気にしないで、机の上に置いた制御核コントロール・コアを指差し

「この制御核コントロール・コアは、複製コピーです。

 原本オリジナルは、寮の部屋に置いてあります。


 原本オリジナルは、宇佐田さんが作った基本動作回路を元に、各種動作の最適化を目指して調整しています。


 原本オリジナルの機能に動作指示モーションコントロールがあるので、誰でも動かせることが出来ます。


 私は、制御核コントロール・コアが無くても操作可能です」

 と説明すると

「私でも動かせる?」

 と土田さんが聞いてきた。


 制御核コントロール・コアを渡し

制御核コントロール・コアを握って、魔力を流しながら制御核コントロール・コアを前に倒すと前進、後ろに倒すと後進、右に倒すと右に回る、左に倒すと左に回る。

 右に振ってから、上下左右に動かすと右手が動きます。

 左に振ってから、上下左右に動かすと左手が動きます。


 他にも登録してありますから、実際に制御核コントロール・コアを上下左右に振って確かめて下さい」

 と言うと

「分かった」

 と言って操作しはじめた。

 土田さんの操作によるゴーレムの動きを見て、一喜一憂している。


動作指示モーションコントロールの操作のみか?」

 と言う南雲さんの質問に

「いえ、魔力による直接操作も可能です。

 ただ、制御核コントロール・コアへの直接制御は難しそうなので、動作指示モーションコントロールを教えました」

 と答えると

「随分と多機能な制御核コントロール・コアだな」

 と返されたので

「訓練というか、勉強の為に作った物ですから、無駄な機能まで搭載しています。

 それに、制御核コントロール・コアを直接魔力で操作した方が細かい動きが出来るので、動作指示モーションコントロールは簡単な動作検証しかしていません」

 と答えると

「アレ程の機能なら、膨大な魔力回路と化しているだろう。

 複雑化している以上、容量も足りないのではないか?」

 と質問されたので

「魔力回路も機能毎に分けたモジュールで構成していますから、従来の制御核コントロール・コアよりも必要容量も少なくなっています。

 なので、まだ容量に余裕がありますよ」

 と答えると

「それは素晴らしいな。

 コレを非能力者でも動かせる様になれば、ロボットとゴーレムのハイブリッドシステムの開発が進みそうだな」

 と言われたので

「宇佐田さんの許可を取って、東海支局思金おもいかねにデータを送っています。

 そのうち、何か作ると思います」

 と答えると

「それは、楽しみだ。

 今の医療ロボットだと、サイズが大きすぎるし、フィードバック感覚がワンテンポ遅いのに、反応だけは早いからな。

 それが改善されれば、医療ロボットの発展も加速するだろう」

 と言って、ゴーレムを眺めていた。

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