第186話 ゴールデンウィーク(14)

 土田さんから鳥栖さん、都竹さん、田中さんと一通り回った所で、操作を中断させてお昼の続きを食べる。


 食後、隊員達4人も触りたがったので、色違いのゴーレムを3体増やした。

 各人がある程度操作に慣れた所で、対決をしている。


 お互いに直接戦闘させたり、競争させたり、上手く踊れるか等を行っている。

 女性でもこいう物でも遊ぶのかと、ちょっとびっくりしていた。


 ちなみに南雲さんも操作してみたら、他の人程機敏に動かなかったが、動かす事が出来た。

 南雲さんは、

思金おもいかね製のゴーレムだと動かなかった」

 と言っていたから、このゴーレムが小さい事と制御核コントロール・コアを起動するのに必要な魔力量の下限が、思金おもいかね製より低かったから動かせたと思う。

 ゴーレムと制御核コントロール・コアを最適化出来れば、もっと少ない魔力量でもっと大きなゴーレムも動かせそうだな。


 食事の後片付けを終えて、ゴーレムで遊ぶ彼女達を眺めてお昼休みを過ごした。


 午後、交代要員の4人が来たので、遊びを止めて午後の訓練を行う。

 ゴーレムを解除しようと思ったのだが、土田さんから残して欲しいとお願いがあったので、宿泊棟から持ち出さない事を条件に残す事にした。


 午後は、最初の1時間で魔力調律訓練を行いながら、平田さんの訓練も行う。

 次の1時間は、戦術課隊員による田中さん達への格闘技の訓練を行ってもらう。


 私だと体格差もあるが、魔力による強化を行わなかった場合、見た目通りの力しかないから相手出来ないし、魔力による強化を行った場合は、手加減しても実力差が圧倒的になってしまうから相手に向かない。


 それに、午前中に掴んだ訓練方法を実践してみたいと思っていたので、彼女達にお願いした。

 それに、これが上手く行けば、素の非力さを改善出来るはずだ。

 ということで、午前中と同じ様に訓練用のロングソードを使って型をなぞる様にゆっくりと素振りを行う。

 魔力を通していない身体では、訓練用のロングソードの重さに身体が流される。

 全身の筋肉を使って、無理矢理体勢を維持する。

 その為、全身の筋肉が悲鳴を上げているのが分かる。

 この状態で、回復の能力アビリティだけが働く様に制御しつつ、素振りを続ける。

 田中さん達の格闘技の訓練が終わる15時までの1時間、この訓練を行った。

 訓練終了後、筋肉自体の修復は終わっているが、全身を筋肉痛が襲っている。

 痛み自体は、数時間もすれば治まると思う。


 ただ、結果が出るまで週1回以上、この訓練を繰り返さないといけないと考えると、ちょっと憂鬱ゆううつになる。


 10分程休憩してから、田中さん達は再び高圧縮学習装置を使う。

 午前中との違いは、各人の最大値で行う事だ。

 大変だろうが頑張って欲しい。


 そして、昨日から来ている護衛役の4人が駐屯地に帰り、今日来た4人を相手に魔力調律の訓練を始める。


 16時30分で訓練を終了し、平田さんと護衛役の4人と一緒に夕飯の準備を始める。

 今日来た4人は、食材を持ち込んでいたので、一緒に料理をする事になったのだが、宿泊棟の台所に6人が一度に料理するには狭い。

 なので、交代で料理を作る事になった。


 出来た料理を大広間に持って行くと、田中さん以外が休んでいた。

 慌てて手伝おうとするが、ふらついているので休んでもらう。


 各人の限界で高圧縮学習装置を使用した時の負荷は、午前中の使用時より数段重かった様だ。

 料理をテーブルに置いて、台所に戻る為扉に向き直った所で田中さんが部屋に入ってきた。

 田中さんも手伝おうとするが、顔色が悪いしふらついているので、休んで貰うついでに診断をする。

 ただの疲労だけで、身体に問題は無かった。

 けれど違和感を感じたので能力鑑定を行うと、新しい能力アビリティ発露はつろしていた。


 田中さんには

「取り敢えず、身体に問題はありません。

 しばらく休めば良くなると思います」

 と告げて、念のため他の3人も鑑定するが、新しい能力アビリティ発露はつろしていなかった。


 しかし、また珍しい能力アビリティ発露はつろしたものだと思いながら台所に戻り、夕飯の準備に戻る。


 夕食の準備が終わり、全員が席に着いた所で

「夕飯を食べる前に、一つ発表があります」

 と宣言すると、全員の視線が集まった。


 私は田中さんの方に顔を向け

「田中さん。

 貴方に新しい能力アビリティ発露はつろしました」

 と言うと、皆から「おめでとう」と祝福した。


 田中さんは、「ありがとうございます」と嬉しそうに何度も言っている。


「ところで、何の能力アビリティ発露はつろしたのかな?」

 と南雲さんが聞いてきた。

 それに伴って、騒いでいた全員が静まり返った。


「田中さんが発露はつろした能力アビリティは、『魔力耐性』です」

 と言うと全員が首を捻った。


「魔力耐性って、知ってる?」

「魔力耐性って聞いたこと無い」

「魔力耐性って言う位だから、魔力に関する事だよね」

 等々、疑問を口にしている。


「魔力耐性って、どんな能力アビリティなんですか?」

 と田中さんが聞いてきた。


 なので

「何だと思う?」

 と逆に聞くと

「魔力耐性は、魔力に対する抵抗力を上げるのかな?」

 という答えだった。

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