第77話 年末年始の神城家(5)

 舞達が、部屋に戻った後、父さん達も寝る準備を始めて直ぐに全員が寝た。

 今、この家で起きているのは私だけだ。

 洗濯物が溜まっていたから洗濯を回して、洗い物を済ませてから自室に戻る。


 ここ2日、訓練が出来ていなかったので、この時間に訓練を行う。

 魔力制御訓練を1時間やってから、洗濯物をベランダに干しに行く。

 ベランダの洗濯竿の位置は高いので、空中に足場を作って干す。


 その後、自室に戻り訓練の続きを行う。

 重力・影を1時間、物理・魔力結界を1時間で、午前中が終わった。

 訓練所の施設なら、もっと体を動かしたり、派手な能力アビリティの訓練が出来るけど、自宅で静かに訓練をしないといけないのでちょっと欲求不満ぎみ。


 お昼は、お餅とお節料理で簡単に済ませた。

 まだ、誰も起きてこない。

 

 数学の問題集を解く事にする。

 数学の問題集を解くことで、高速思考と演算が鍛えられる。


 14時頃になって、大人組が起きてきた。

 お茶を出した後、お餅を焼いて磯辺焼きときなこ餅を作る。

 焼き餅で作るきなこ餅は、煮餅と違って外側がちょっと硬くて中が柔らかい触感で美味しい。

 匂いに釣られて、舞達も起きてきた。

 舞は、起きてくるなり、私も食べたいだった。

 追加で磯辺焼きときなこ餅を作る。


 お腹も膨れて落ち着くと、舞と母さんはスマホを取り出して 何かを調べだした。

 明日の初売りセール情報を確認していると思われる。

 私は、席を立ち、静かに部屋に戻る。


 少し体を動かしたいので、ストレッチをしてから体幹トレーニングを行っていると、舞が扉を開けた。


 舞「お姉ちゃん、何をやっているの?」


「体幹トレーニング。」

 舞に疑問に答えてから、次の運動に移る。


 舞「何でやっているの?」


「家に帰ってきてから、運動不足だから体を動かしている。

 舞もやったら?

 体が締まるそうだよ。」


 舞「うん、そうだね。考えておく。」

 と言うと、そっと扉を閉めた。


 何だったんだろう。

 終わりにもう一度ストレッチをして終了。

 約1時間程の軽い運動をしてから、踏み台を使って洗濯物を取り込み、台所で夕食用のお雑煮の準備を始める。

 朝は、神城家のお雑煮だったので、夜は九条家のお雑煮になる。

 九条のお婆ちゃんと一緒にお雑煮を作って食卓に出す。

 夕食は、お雑煮とおせち料理だが、既に舞達3人の顔に飽きたと書いてある。


 お風呂から上がった後、自室に戻ってプログラミングの課題をする。

 美羽みうさんから渡された本を見ながら、本に書かれたプログラムを実際に打ち込んで見る。

 実行すると、エラーが出るので、エラー文と本を見返しながら修正を行って、実行する。

 本を見て、打っているだけど、見間違いや誤打ちがあるから、1度で正常に動くことは少ない。

 プログラムがエラーを出さずに動くと嬉しくなる。

 後は、本の課題に沿ってプログラムを修正して動作確認をしていく。

 そんな事をやっていたら、21時を過ぎたので寝る準備を始める。


 洗面所で歯を磨いたら、トイレから出てきた香織ちゃんに

 香織「もう、寝るのですか?」


「歯を磨いたら、軽くストレッチをしてから寝るよ。」


 香織「昼間も体幹トレーニングをしていませんでしたか?」


「したよ。でも、寝る前のストレッチは習慣だから。」


 香織「そうなんだ。」


「うん、じゃあ、おやすみなさい。」

 そう言って、自室に戻った。


 香織「おやすみなさい。

 ・・・本当に、元男?

 私達より、圧倒的に女子力高いんですけど・・・」

 その呟きは、優に届かなかった。




 翌朝、普段通りに起きて朝のルーティンを熟してから台所に立つ。

 まだ、1日しか経ってないのに舞達は、既にお餅もおせち料理にも飽きている様だったので、ちょっと変わった朝食にする。

 材料の確認をする。

 食パン、バター、卵、牛乳、砂糖、メープルシロップ、ハム、塩漬けの豚肉、キャベツ、玉ねぎ

 塩漬けの豚肉は、年末の買い出しの時に豚のバラブロックを買ってきて貰い、塩コショウを擦り込んでキッチンペーパで包んで冷蔵庫で熟成させた物だ。

 少し切って、焼いてみたら美味しかった。

 塩抜きをしなくても良さそうだ。


 卵、牛乳、砂糖で、少し甘めの卵液を作って食パンを浸す。

 玉ねぎを薄くスライスして、水に晒す。


 フライパンにバターを一欠片溶かして、卵液に漬けた食パンに軽く焦げ目がつく位に焼く。

 もう一つのフライパンに、薄く切った塩漬けの豚肉とハムを焼く。

 玉ねぎの水を切って、キャベツの千切りと合わせてサラダを作る。

 出来上がった物から、お皿に盛り付けて、焼いた豚肉とハムにメープルシロップを少し掛ける。


 半分出来た所で、母さん達が起きてきた。

 母「おはよう、いい匂いね。

 これ、フレンチトーストのプレート?」


「うん、そうだよ。

 舞達が、おせち料理に飽きている様だったから、ちょっと変わった物を用意してみた。

 お婆ちゃん達は、ご飯の方がよかった?」


 九条祖母「良いんじゃない。

 海外旅行とか行ったら、こういう朝食出てくるからね。」


 神城祖母「私は、朝から甘い物とか考えた事なかったよ。

 折角優が作ったんだから、食べるよ。」


 母さん達的には、有りという事で残りも作っていく。

 母さん達は、食卓の準備とまだ寝てる人を起こしに行った。


 起きてきた舞達は、朝食をポカーンと見ていたが、慌てて部屋に戻るとスマホを持ってきて写真を撮っていた。

 それを見ていた父さん達は、苦笑いをしていた。


 朝食を食べた感想は、女性陣からは好評で、男性陣もまあ有りかなって反応だった。

 甘い物と塩っぱい物を一緒に食べたからかな?

 私も初めて食べた時は、その組合せに驚いたし、食べてみると意外と美味しい事にも驚いた。


 食後、私は洗濯機を回して、洗い物をしていた。

 家族は、外出の準備をしている。


 早々に準備を終えた舞達が、リビングで寛いている。


 舞「お姉ちゃん。」


「私は、行かないからね。」


 舞「それは分かっているよ。

 ただ、お姉ちゃんは、になるなーと思っただけ。」


 え、何を言っているの?

 自分でも何で動揺しているのか、何で頬が熱くなっているのか分からない。


 父「ダメだー。優を嫁やらんぞー。」

震える大きな怒声が響いた。


え、父さん何を言っているの?

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