第78話 年末年始の神城家(6)

 父さんの両肩を、爺ちゃん達が手を置いて話しかけた。

 神城祖父「しょう、落ち着きなさい。」


 九条祖父「気持ちはよく分かるから、落ち着きなさい。」


 父「お父さん達」


 神城祖父「こんな小さくて可愛い娘を、嫁にやりたく気持ちは良く分かる。」


 九条祖父「気立てが良く、料理上手で、親孝行な娘なら尚更の事。」


 父さんと爺ちゃんは、お互いに顔を見合わせて、うなずき合っている。


 えーと、どうして私がお嫁に行く話しになっているの??



 母「はいはい、それはまだ先の話でしょう。」


 神城祖母「全く、父馬鹿に爺馬鹿やっているじゃあないよ。」


 九条祖母「そんなんじゃあ、優が行き遅れてしまうでしょうが、程々にしなさい。

 優を見なさい、いきなりの展開で着いてこれてないでしょうが。」


 確かに、話の展開について行けず混乱している。


 神城祖母「優、男共が、父馬鹿と爺馬鹿をやっているだけだから、気にしなくて良いからね。」


「え、あ、うん」

 それ位しか、答えようがなかった。

 母さんと婆ちゃん達は、呆れを含んだ深い溜め息をついているし、舞達も状況に着いてこれていない。


 暫くの間、父さん爺ちゃん連合と母さん婆ちゃん連合の闘論が行われた。

 私は、見なかった事にして洗い物の続きをする。


 闘論終了後は、私を除いた全員が外出した。

 恐らくショッピングモールを巡るのだろう。

 私も一緒に行きたいという思いよりも、大勢の人の目に晒される事の方が嫌だった。

 唯でさえ人目を引く外見な上、人の視線に敏感になった。

 大勢の人の視線に晒されるのが怖い。

 その様な状況を想像するだけでも、言いようの知れない不安に襲われる。

 若桜さんに相談したら、身体変化に伴う思考変異による社交不安症だと思われるそうで、薬による治療も可能だけど、今は精神的に不安定だから起こっている可能性が高いので、徐々に慣らしていく事で症状が改善するだろうという事で、治療と称して、ショッピングモール等の人が多い所に度々連れ出された。

 あまり行きたくないだけで、人が多い所に行けない訳ではない。


 そうしている内に、洗濯機が止まったので洗濯物を干してから能力の訓練を一通り行うとお昼になっていた。

 お昼は、お餅と残りのおせち料理で済ませた。

 今年は人が多いので、これでおせち料理も終わった。


 午後は、何をしようかな。

 家族は夕方まで帰ってこないだろうし、章と零士は、親族の所に新年の挨拶に行っているだろうだから、一人だ。

 家は、例年なら自宅で年越しをして、2日目に初売りセール巡り、3日目から爺ちゃん達の所に新年の挨拶に行く。

 奇数年は、神城家→九条家、偶数年は、九条家→神城家の順に回って、それぞれの家で1泊してから帰ってきていた。


 今年は、訓練所に戻るまで、このまま引き籠もりだけどね。

 引き籠もってみて分かった事は、能力アビリティが使えない事に対する不満だった。

 私は、無意識の内に能力アビリティに頼っていた事が良く分かった。

 訓練所の施設や寮の建屋や家具は、非常に頑丈に作られているが、一般住宅はそうで無い。

 私が無意識使う身体強化だけでも、一般住宅だと簡単に破壊してしまう。

 だから、能力アビリティを使わない様に気をつけて生活をするのにストレスを感じてしまっている。

 こればかりは、慣れるしか無い。


 ウジウジ考えても仕方ながないので、体幹トレーニングをする事にする。

 暫く運動をしていると、事件が起こった。


 運動中にプチっと弾ける音がしたと思ったら、ブラジャーがズレ落ちたのだ。

 確認すると、フックが壊れていた。

 ひょっとして、太った?

 慌てて洗面室に置いてある体重計に載る。

 以前より、増えてる。

 どうする?

 やっぱりダイエット?

 でも、無理なダイエットはダメだって若桜さんに言われてる。


 まず、食事量を少し減らして、運動量を増やそう。

 そして、訓練所に戻ってから若桜さん達に相談だ。


 しっかりと運動をして汗をかいたので、シャワーで汗を流し、洗濯物を取りんでから台所に立った。

 お米を洗い、炊飯器をセットする。

 食材を出して、晩御飯の支度を始める。

 今日は、カレーを作る。

 流石に、スパイスを調合とかは出来ないので、市販品のルーを使うよ。


 カレーが出来上がる頃に、戦利品を抱えた家族が帰ってきた。

 ホクホク顔の女性陣と、疲れ切った男性陣だった。

 戦利品の発表会が開かれる前に、夕食にする。


 夕食後は、戦利品の確認と品評会をやっている女性陣とリビングで伸びている男性陣、そして洗い物をしている私に分かれている。

 最初、戦利品の確認と品評会に誘われたが、洗い物をするからと断って逃げた。

 洗い物を済ませて、明日の朝食用のご飯を炊飯器にセットして、お風呂に入って、そのまま自室に逃げ込んだ。

 だって、何となく嫌な予感がするから、リビングには戻れない。


 昨日の続きで、プログラミングの課題をやっていると、舞達3人がやって来た。

 3人は、洋服を手に持ってにじり寄ってくる。


 舞「さあ、お姉ちゃん、この洋服を着て。」


 希「さあ、さあ、お着替えしましょう。」


 香織「優お姉ちゃんの可愛い姿を見たいのでお願いします。」


 3人の圧に負けて、3人の前で着替えることに・・・。


 着替え中の私の肌を見た二人は、「真っ白で、綺麗」と言って、舞を含めた3人して触ってくる。

 舞「小さくて可愛いだけでなくて、すべすべプニプニお肌。」


 希「真っ白で、綺麗で、きめ細やか」


 香織「手に吸い付くようで、ずーと触っていたいです。」

 敏感に反応する私を見て、喜ぶなーー。


 香織「優お姉ちゃん、ブラキツそう。」


 希「サイズ合ってないね。」


 舞「大きくなってる。」


 香織「サイズは、いくつなんでしょう?」


 舞「初めてブラを買った時は、Aカップだったよ。」


 希「明らかに、カップから溢れているから、Bカップはあるんじゃない?」


 なんとか逃れて、服を着て3人を見ると、まだ触り足りないと言わんばかりに、手をワキワキと動かしている。


「ちょっと、その目と手が怖いんですけど。」


 舞「怖くないー」


 希「そうだよー、怖くないよー」


 香織「ごめんなさい」


 そう言う3人に捕まって、家族の前に引き出された。

 母「うん、よく似合っているわね。」


 九条祖母「じゃあ、次はコレを着てみて。」


 次の服を渡されてしまった。

 部屋に戻り、次の服に着替えて家族にお披露目する。

 結局、外出着が3着に室内着が2着の合計5着を、お披露目することになった。


 開放された時には、もう寝る時間だったので、夜のルーティンを熟してから寝るのでした。

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