第181話 ゴールデンウィーク(9)

 再び、マイクロバスに乗り込んだ。

 恵ちゃんは、相変わらず寝ているので平田さんが面倒を見ている。

 他の人達もお腹が一杯な為か静かだ。


 マイクロバスは、訓練校に戻る途中でショッピングモールに寄った。

 これは、途中で食材の買い出しをしたいので、何処か買い物が出来る所に寄ってもらう様にお願いしていたからだ。


 ショッピングモール内のスーパーマーケットで、今日の夕食と2日分の食料を選ぶ。

 今日の夕食は、お腹が一杯だからサンドイッチかおにぎりにしておこう。

 明日、明後日の6食分の食材も選んで行く。


 高月さんは、自身と平田さんと南雲さんの分の夕食の弁当を選ぶ為、護衛役の4人も自分の夕食の弁当を選ぶ為、売り場に直行した。


 その平田さんは、恵ちゃんを抱っこしている。

 ショッピングモールに着いたので、恵ちゃんを起こしたのだがぐずって、お母さんである由寿さんが抱っこしても治まらず、平田さんが抱っこしたら落ち着いたので平田さんが抱っこしている。


 その由寿さんも、買い物をしている。


 そして、田中さん達4人は、何故か平田さんに買う食材を聞いている。

 なので

「何故、平田さんに買う食材を聞いているのですか?」

 と聞くと、4人とも視線を反らして

「それは、平田さんに作って貰うからです」

 と観念した様に田中さんが答えた。


「どういう事です?」

 と問うと、頭を掻きながら

「いやー、自分達で自炊するのが難しくて」

 と回答が返ってきた。


「私達、調理道具をほとんど持っていませんし、私達4人はそれ程料理が得意ではありません。

 なので、寮の簡易調理室での自炊は無理でした」

 と都竹さんが自白した。


 土田さんは

「平田さんは、本当に料理も上手なんです。

 せめて材料費位は自分達で出そうと思って」

 と答えた。


 鳥栖さんは、落ち込んだ感じで

「正直、自分で作ったご飯は、美味しくなかった」

 と答えた。


 調理実習が行われた時の様子を思い出した。

 都竹さんと田中さんは、普通に料理が出来た。

 鳥栖さんと土田さんは、正直、かなり怪しかった。


「それでも、自分でやらないと上達しませんよ」

 と目を合わせようとしない4人に、忠告する位しか出来なかった。


「なんなら、神城さんの分も作ろうか?

 今更1人増えても手間は変わらないから」

 と平田さんが提案してきた。


 意地を張っても仕方ないので

「それじゃあ、お言葉に甘えて昼と夜はお願いします。

 朝は、自分で用意します。

 あと、料理の手伝いはしますよ」

 と伝え、2日分の朝食以外の不要な食品を戻しに行く。


 食品を戻してから皆の元に戻ると、田中さん達はお菓子を選んでした。

 あれだけケーキを食べたのに、まだお菓子を選ぶ余裕があるんだ。

 私なんて、当分甘い物は良いかなと思っているのにな。


 弁当やお惣菜売り場で商品を見るが、ちょっと食べ切れそうになかったので、一口サンドイッチが複数個入っている物にした。

 これなら残しても、翌朝食べられる。


 田中さん達は、普通にお弁当を選んでいた。

 まだ、そんなに食べられるんだ。

 私が男だった頃よりも、田中さん達の方が食べている気がする。


 会計を済ましてマイクロバスに戻ろうとすると

「折角だから、他のお店も見てみない?」

 と高月さんが提案し、田中さん達4人も賛成した。


 買い物をする前に提案して欲しかったと思っていると、久喜さんが

「荷物は、俺がマイクロバスに持っていくよ。

 マイクロバスで待っているから、お店を見てくると良い」

 と言って荷物を預かってくれた。

 とは言っても、1人で持つには量が多すぎる。

 すると、石破さんも先にマイクロバスで待つと言うのでお願いした。


 久喜さんと石破さんと別れ、ショッピングモール内のお店を見て回る。

 ファッション系のお店が多数在るが、店頭からお店を見るだけで通過する。

 それよりも、スイーツ系のお店の前だと度々足が止まって見入っているし、購入もしている。

 訓練校の購買にもお菓子は売っているが、あまり種類が無いから、色取り取りのスイーツを前にして、財布の紐が緩んだと思いたい。


 呆れている私に

「大丈夫。これは1日で食べる訳では無いから」

「みんなでシェアしながら食べるから大丈夫」

「賞味期限も長めの物を選択したから、大丈夫」

「たぶんこれで、2週間位はおやつに困らない」

 と力説する4人なんだけど、お菓子の量より体の方が大丈夫なのかなと思っていると、石原さんが私の肩を叩き

「大丈夫、心配しなくても平気よ。

 まだ若いからなんとてもなるわよ」

 と力強く言われた。


 結局、田中さん達4人は、両手にお菓子が入った袋を下げている。

 まあ、私も大きな紙袋を下げているので人の事は言えない。

 この紙袋の中身は、ホビーショップで購入したプラモデルが入っている。

 今回買った物は、人間の可動範囲に近い動きができる物を山下さんに教えて貰っていたので、その中の物を2つ購入した。


 4人の反応は

「うーん、想定外」

「ちょっと、以外」

「趣味は人それぞれだからね」

「神城さん。詳しいの?」

 と言う感じで、私がプラモデルを買った事に驚いていた。


 あれ?土田さんだけ、反応が違った。

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