第182話 ゴールデンウィーク(10)

「あまり詳しくありません」

 と答えると

「そうなんだ」

 とちょっと沈んだ感じで回答が返ってきた。


「土田さんは、詳しいのですか?」

 と尋ねると

「弟が好きで、一緒に見ている内にね」

 と返ってきた。


「そうなんですね。

 私も小さい時は見ていたのですが、最近のはさっぱりわかりません」

 と言うと意外そうな声で

「え、神城さんも兄弟の影響?」

 と聞いてきた。


「違います。

 幼馴染の影響です。

 けど、妹は居ます」

 と答えた。


 今は分からないけど小学生の頃は、章は戦隊モノや〇〇ライダーが好きで、零士はロボットモノが好きだった。

 その影響で見ていた。


 何処か嬉しそうな感じで

「へぇー、そうなんだ」

 と返答が返ってきた。


「神城さんの幼馴染って、どんな人なんだろう?」

 興味津々で鳥栖さんが聞いてきた。

 他の3名も、興味津々と言った顔をしている。


「入校してからは会っていませんけど、訓練校の同学年に居ますよ」

 と言うと、4人とも驚いた顔をしていた。


「会っていないってどういう事?」


「言葉通りです。

 入校しているのは知っていますが、会っていません。

 彼らとはクラスも違いますし、私の周りには護衛役の人も居ますから、安易に接触出来ないのでしょう。

 だから、気にしても仕方が無い事です」

 と諦め気味に答えた。


 都竹さんが

「神城さんから会おうとはしていないの?」

 と言う質問をした。


「あの二人も私との付合い方に悩んでいるみたいだし、私には彼ら程自由な時間はありません。

 それに、やりたい事もやらなければならない事も沢山ありますから、積極的に関係修復を働き掛けるつもりもありません」

 と答えると

「それって辛くない?」

 と都竹さんが聞いてきた。


「もう、終わった事です」

 と答えると、悲しそうな顔をしていた。


 私としては、その言葉に嘘は無い。

 過去は過去と割り切っただけなのだ。

 幼馴染として常に一緒に居る日常が終わり、私自身が自立して前に進む段階にいるだけだ。


 高月さんが都竹さんの肩に手をおいて

「望む望まないに係わらず、人の繋がりは変わっていくもの。

 過去に囚われすぎると先に進めなくなるわ。

 だから、敢えて過去を振り返らない事も重要よ。


 それに、神城さんの様に望外な力を手に入れると、否応無しに関係性を変えざる得ない事もある。

 だから、本人が気にしていないなら、貴方が気にする必要は無いのよ」

 と言った。


 都竹さんは、何処か納得出来ない感じだったが

「わかりました」

 と返答していた。


「それじゃあ、お会計に行ってきますね」

 と言って、選んだプラモデルを持って皆の元から離れた。

 後ろから小声で

「強いな」

 と言う都竹さんの声が聞こえた。


 暫く落ち込んでいたが、スイーツ店を見て回っている間に機嫌も治っていた。


 買い物も終わり、マイクロバスに戻った。

 その後は素直に訓練校への帰路に着いた。


 訓練校の校門には、18時30分過ぎに到着した。

 久喜さん一家と高月さんとここで別れる。


 その前に、1つ疑問に思っていた事が有ったので聞くことにする。

「一つ疑問に思っていたのですが、今日の様な平田さんが参加するイベントに山本さんが居ないのは何故ですか?

 彼の性格なら、意地でも着いてきそうな気がしたのですが?」

 と問うと、久喜さんが

「今日は、平田の情操教育の日だから参加させない。

 それにアイツが居ると、子供の教育にも良くないから参加させない」

 と真剣に返された。


 護衛役の4人も私の質問に対して

「山本3尉が居れば、戦闘が楽だった」

「でも、居たら居たらで、平田さんにまとわりついてウザいと思うわよ」

「その通りね。いくら本人が全く気にしていなくても、周りは気にするわよ」

一途いちずなのは良いのだけど、あれだけしつこいと問題案件だよ」

 と言う反応で、久喜さんの回答には非常に納得している。


 高月さんからは

「副隊長の一途いちずさは、皆一応評価しているんだけど、ほら、南に対しては暖簾のれんに腕押し状態でしょ。

 だからと言って、南相手に恋の駆け引きとかも出来ないから、押しの一手しかないのよね。

 だから、南へのアプローチもどんどん過激になっていってね。

 その度に、由寿さんに叩き延ばされていたからね。


 今では、あわれ5割、あきれ3割、応援2割位の感じになってしまっているわね。


 でも、南と子供の教育に良く無いのも事実だから仕方ないよね」

 と補足が入った。


「それは、仕方ありませんね」

 と答える時に、自然とため息が漏れた。


「あのー、何故そんな評価なのですか?」

 と田中さんが疑問を呈した。

 まあ、彼女は宿泊棟の清掃の時に会っただけだから、知らなくて当然だ。


「それはね。

 南ちゃんに配属された日に一目惚れしてから、会う度に口説いているからよ。


 もう、5年になるわね」

 と由寿さんが答えると

「え、5年も報われていないのですか」

「ここまで一途だと、むしろストーカー?」

「愛情よりも執念を感じる」

「自分が対象だったら、絶対耐えられない」

 田中さん達4人もドン引きしている。


「まあ、南はよく理解出来ていないし、最初の頃はポカーンとしていたからね。

 今では、多少は受け答え出来る様になったから、その反応が嬉しいみたいよ」

 と高月さんは、ウンザリとした感じで補足すると、田中さん達4人も更にウンザリした表情になった。

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